給付金制度を巡る生活弱者の奮闘を描いた映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」を鑑賞しました。
今回はネタバレ無し記事です。
予告編(トレイラー)
作品情報
公開年 | 2016年 |
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原題 | I, Daniel Blake |
上映時間 | 100分 |
製作国 | イギリス・フランス・ベルギー合作 |
監督 | ケン・ローチ |
脚本 | ポール・ラヴァーティ |
ジャンル | 社会派,ドラマ |
主要キャスト |
デイブ・ジョーンズ(ダニエル・ブレイク) ヘイリー・スクワイアーズ(ケイティ) ディラン・フィリップ・マキアナン(ディラン) ブリアナ・シャン(デイジー) ケイト・ラッター(アン) |
配信サイト・媒体 |
市販DVD Netflix…他 ※記事公開時の情報です |
あらすじ・みどころ
イギリスの複雑な制度に振り回され、貧困という現実に直面しながらも助け合って生きる人びとの姿が描かれる。イギリス北東部ニューカッスルで大工として働くダニエル・ブレイク。心臓に病を患ったダニエルは、医者から仕事を止められ、国からの援助を受けようとしたが、複雑な制度のため満足な援助を受けることができないでいた。シングルマザーのケイティと2人の子どもの家族を助けたことから、ケイティの家族と絆を深めていくダニエル。しかし、そんなダニエルとケイティたちは、厳しい現実によって追い詰められていく。
魅力
①弱者を救おうとしないお役所の対応が生々しい
②「弱者」特有の苦しみ、ドラマが丁寧に描かれている
③いざという時、役所は助けてくれないと再確認できた
【ネタバレ無し】感想
心臓病により働けなくなった「ダニエル・ブレイク(デイブ・ジョーンズ)」が、給付金を受け取るために役所をたらい回しにされるところから始まります。
本作では何度も役所とやり取りをするシーンが登場しますが、そこがリアルで、生々しくて、見ていてめちゃくちゃイライラします。
イギリスを舞台にした作品ですが、支援制度やそれを取り囲むお役所たちの対応は日本のソレと同じで、その辺りの感情移入度も相まってイライラ度が上がりました。
そしてそのイライラは最後の「大逆転」で回収されるわけでもなく、地味に、そしてリアルに終わります。
言ってしまえば「胸糞」に部類される映画です。
本作はそんな「お役所あるある」を詰め込んだ作品であり、社会保障、失業保険、生活保護等の手続きのややこしさを全力で演出しています。
監督の「ケン・ローチ」は社会派ドラマ作品を得意としており、一度は引退しています。
しかしこの作品を撮る為に復帰したそうなので、ケン・ローチ本人が実感した強力な問題提起が含まれていると強く感じます。
役所に務める公務員こそ見るべき映画
働いたら、
・年金
・住民税
・所得税
・県民税
・国民保険(社会保険)
などあらゆるお金がお役所に取られますが、その反面「生活保護」という弱者への配慮も存在します。
この生活保護というのは、「働かなかったらボーナス」と言われることもあり、最近は「不正受給」などで生活保護者自体が咎められることもあります。
確かに一部の贅沢している生活保護自給者は羨く見え、そのせいで腹が立つこともあります。
するともちろん我々は「なんでそんな奴に生活保護を与えてるんだ」とお役所を叩きます。
お役所だって「必要としている人のみに支援金を渡したい」と思っているはずなので、本物の弱者を選定するために「難しい手続き」を用意したのでしょう。
「本物の弱者を選定する方法を作ったら手続きが複雑になった」なのか
「本物の弱者を選定する為に手続きを複雑にした」なのか分かりませんが、実際にこの手続きは「茶番」と化している部分もあります。
作中でダニエルは、「給付金を受け取るために就職活動を行う」必要がありました。
しかしダニエルは心臓病を患っており、医者から働くことを止められています。
だからダニエルは「形だけの就職活動」を行い、見事「君を雇いたい」と言ってくれた会社に向け「実は給付金を受け取る為だけに履歴書を渡したんだ。だから働けない。」と伝えます。
もちろん相手企業からは罵倒を浴びせられ、ダニエルは自分の尊厳が収縮していくのを感じました。
しかし「役所の茶番」に合わせるために、その無駄な手続きをしないといけないのです。
色々な事情がありシステムが複雑になったのだと思いますが、そのせいで「演出(無駄な手続き)した者勝ち」となってしまい、それが結局「生活保護の不正受給者」を増やしているようにも見えます。
実際に公務員が公務員目線で考えたら、「複雑過ぎる手続き」について正当化できる理由があるのかもしれませんが、「演出」の必要性ついては本当に疑問です。
評価・まとめ
おすすめ度:中
娯楽作品では無いのでお勧めし辛いですが、「問題」として直視すべき内容だとも思います。