地球上の12箇所に、突如謎の物体が出現・・・
その形状はどう見ても「ばかうけ」・・・
地球外生命体から謎のメッセージを受け取るSF作品「メッセージ」を鑑賞しました。
いつも通りネタバレ無し情報を書いた後にネタバレしていきます。
まだ未鑑賞で、「とりあえず面白いかどうかだけ知りたい」という方は、「※ここからネタバレを含みます。」という文章の直前までを目安にご覧ください。
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予告編(トレイラー)
作品情報
公開年 | 2017年 |
---|---|
原題 | Arrival(訳:到着) |
上映時間 | 116分 |
製作国 | アメリカ |
監督 | ドゥニ・ビルヌーブ |
脚本 | エリック・ハイセラー(原作小説著者:テッド・チャン) |
ジャンル | SF,ヒューマンドラマ |
主要キャスト |
エイミー・アダムス(ルイーズ・バンクス) ジェレミー・レナー(イアン・ドネリー) フォレスト・ウィテカー(ウェバー大佐) マイケル・スタールバーグ(ハルパーン捜査官) マーク・オブライエン(マークス大尉) |
配信サイト・媒体 |
市販DVD Netflix…他 ※記事公開時の情報です |
あらすじ・みどころ
ある日、突如として地球上に降り立った巨大な球体型宇宙船。言語学者のルイーズは、謎の知的生命体との意思疎通をはかる役目を担うこととなり、“彼ら”が人類に何を伝えようとしているのかを探っていくのだが……。
魅力
①序盤の何が何やら分からない時の不気味さ、神秘さが良い感じ
②音楽が良い。特に未知の物質に触れる時
③伏線は回収され、風呂敷はしっかり畳まれる
【ネタバレ無し】感想
「彼らの目的は何なのか?」から入る作品に簡単に萌える体質な為、ネトフリ独占の「アナイアレイション(2018)」しかり、僕はこの手のミステリアスなSFが大好きです。
「メッセージ」では、まず「ばかうけ(飛行船)」が突如地球に現れ、その「ばかうけ」の目的が何なのかから入ります。
そそりますね・・・。
この手の「地球外生命体との遭遇系SF」における「敵の目的」は、「遊星からの物体X(1982)」という古い映画のセリフで納得できます。
“宇宙人の常識なんて、地球人の俺たちに分かるわけないだろ?”
とりあえず筆者は、これ系のSFを見る際は上記のセリフを念頭に置いているので、「あれだけ引っ張っておいて奴らの目的は明かされないのかい」となっても納得できます。
しかし本作はちゃんと「彼らの目的」は明かされました。
一部、しっかり考察しないと意味不明な部分もありますが、本作は人気タイトルなので考察記事も多め。(当記事でもある程度考察しています)
全体的に淡々とした展開ですが、謎が解明されていく度にミステリアスさが増す、最高のSF作品でした。
【ネタバレ有り】感想
※ここからネタバレを含みます。
ラストまでのザックリストーリー
・世界各地に「ばかうけ」が現れ、アメリカ軍大佐の「ウェバー(フォレスト・ウィテカー)」によって徴収された、言語学者の「ルイーズ・バンクス(エイミー・アダムス)」、物理学者の「イアン・ドネリー(ジェレミー・レナー)」、たちが調査を始める。
・「ばかうけ」内部は異空間?に繋がっており、そこで遭遇するエイリアン2体とコンタクトを取り、彼らの目的を探るのが「ルイーズ」達の任務。エイリアンは後に「ヘプタポッド(ギリシャ語で“7本の足”)」と呼ばれるようになり、彼らの言語を理解する為には、やはり言語学者のルイーズが活躍した。
・機は熟し、ルイーズはいよいよ「何故地球に来たのか?」をヘプタポッドに訪ねる。すると「武器を提供する」的な返答がー。ルイーズたちはまだヘプタポッドとコミュニケーションを取りたがっていたが、中国政府はこの返答に危機を感じ、すぐに戦闘態勢に入ってしまう。そしてそれを筆頭に各国で通信が遮断され、各国でも戦闘準備が始まる。
・今までルイーズがたまに観ていた「過去の映像(鑑賞者からするとそう見えるというトリック)」は実は「未来の映像」で、どうやらルイーズは、ヘプタポッドとのやり取りを通じ、未来のビジョンが見えるようになったらしい。
・そんなルイーズは未来のパーティーで、中国政府の「シャン上将」と会話するビジョンを見る。そこでシャン上将から、「自分の携帯番号」と「妻が死に際に伝えたこと」を聞く。その情報を持ってシャンに電話をかけると、シャンはルイーズを信用してくれたようで、世界中の「戦争体制」が解除される
・「ヘプタポッド」が言うには、3000年後、人類はなんらかの方法でヘプタポッドを救うそう。その時にちゃんと救ってもらえるように、ヘプタ達は今の時代で「武器(未来を見る力?)」を授けに来た様子。
・ルイーズがその辺を理解したら、ばかうけは静かに消滅した。
・ルイーズが時折見ていた「フラッシュフォワード(未来の映像)」の通り、イアンがルイーズに結婚を申し込む。ルイーズは、二人の間に出来る子供が病気で死ぬこと、そしてイアンと別れることも知っているが、それでも承諾する。
と言う感じで、ある程度納得できる結末だったので、鑑賞後の満足度は割と高いものでした。
しかしやっぱりいくらか分からないこともあったので、理解する為に調べてみました。
※本作は解釈が難しいタイプのSFであり、筆者の解釈が間違ってる可能性もあります。違和感があればコメントでご指摘ください。
考察・疑問
・ルイーズは何故未来が見えるようになったのか?
・改めて、地球外生命体の目的はなんだったのか?
・そもそも「ばかうけ」はなんだったのか?
・というか、地球外生命体のやり方は回りくど過ぎる
ルイーズは何故未来が見えるようになったのか?
ルイーズが未来のビジョンを見るようになったのは、ヘプタポッドの言語を理解したため。
彼らの言語は、人類で言う「左から右」とか「上から下」などの流れはなく、どれも円形で表されていました。
ヘプタポッドは、言語の段階で既に「時間軸」を無視していたのです。
そしてそんな彼らの言語を理解した為に、ルイーズは未来が見えるようになったのです。
ちなみに作中でルイーズが「言語が人格に大きな影響を与える」と言っていましたね。それが答えだと思います。
ルイーズは宇宙人の言語を覚えたことで、無意識のうちに「量子物理学の認識」を覆えしたのです。
改めて、地球外生命体の目的はなんだったのか?
「3000年後、人類はヘプタポッドを救う。だから今の時代で人類を助けに来た」
という事らしいですが、3000年後に具体的に何が起こるのかは不明。(なぜこの時代の人類がヤバイと思われてたかも不明だが、恐らく「世界大戦」的な側面で危惧されていた)
「目的を達成したらすぐ退去する」という点で、ヘプタポッドはなんか自分勝手な性格のようです。
それは良しとして、彼らは人類に「未来を見せる能力」を与えました。
恐らくそれが無いと人類が滅亡すると考えたのかもしれませんが、その辺りの繋がりも良く分かりません。
フラッシュフォワードにて、ルイーズがヘプタポッドの言語をテーマとし、大学で講義をするシーンがありました。
恐らくこれからの人類は、ルイーズを筆頭に、未来を見る能力が備わるのだと思われます。
そもそも「ばかうけ」はなんだったのか?
地球人が自分たちの元へアクセスできるようにするためのワープホール?(しかし移動は出来ず、出来るのはガラス越しの通信のみ)だと捉えています。
「ばかうけ」の形状は、有名な美術作品などからインスピレーションを受けたものと思われます。
(ちなみに監督のヴィルヌーヴはジョークで、日本向けに「ご推察の通り、宇宙船のデザインは『ばかうけ』に影響を受けたものだ」
とコメントした)
wiki等では「宇宙船」と紹介されていましたが、個人的には宇宙船では無く、自分たちの惑星の映像を映すシアターのようなものだと思っています。
ばかうけ内部は気圧や重力が特殊で、そしてそれは人類に最適な状態でした。
ばかうけに関しては、恐らく「ヘプタポッドが人類の為に用意したモノ」という認識で間違いないと思います。
というか、地球外生命体のやり方は回りくど過ぎる
・ばかうけ
・天才言語学者じゃないと解読不能な言語を押し付けてくる
・「武器を提供する」とか、信じられないくらい誤解を生むセリフ
「3000年後に僕たちはピンチになるから、この“未来予知能力”を使って生き延びて、ちゃんと僕たちを助けてね」
シャイなヘプタポッド達はその一言が言えず、人類に難解な言語を押し付けます。
ただしこれは理にかなっていて、人類にも「ヘプタポッド語」を理解してもらう必要があったので、そこだけは押し通したのでしょう。
また、ヘプタポッド達も「人類の言語」が分からなかったので、どの道この回りくどいやり取りは必要だったのでしょう。(ルイーズも“遠回りこそ近道”みたいな事を言ってたし)
ただしそうなると、3000年後、人類とヘプタポッドが遭遇し助け合った時、その際に言語の壁を越えなかったことになります。
ルイーズがヘプタポッド語の講義をしていたにも関わらず、3000年後、人類とヘプタはやり取りを出来ずにいるのです。
人類側は「未来予知能力だけが語り継がれ、ヘプタポッド語の文化は時代と共に忘れ去られてしまった」等で納得できますが、ヘプタ側は何故英語を忘れたのでしょうか。
そもそもルイーズとのやり取りで本当に英語を理解したのでしょうか。
いや、ルイーズが一方的にヘプタ語を理解しただけで、ヘプタ側は学習する気が無かったものと思われます。
恐らくですが、ヘプタポッドは
・時空を超えられる
・人類が死なない環境を作れる(ばかうけの内部)
などの点で人類よりもアドバンテージがあるように見えますが、総合的な知能では人類の方が上回っているようです。
そして最後の「武器を提供する」という誤解を生むセリフ。
自分たち(ヘプタ)は自分の意志で地球と繋がったから良いものの、地球側は「彼らが敵かどうか」すら分からない状態です。
そしてヘプタ達も「今俺たちは怪しまれてる」と知っているはず。
にも拘わらず「武器」という誤解を生むワードを使いました。
しかしまぁこれも納得できますね。
ルイーズは「地球へ来た目的は何?」という質問は、まだ時期尚早だと思っていました。
つまり「語彙力が足りない状態」だったのです。
ヘプタ側は、「このワード(恐らく“未来予知”)はまだ人類に教えてないから、人類は知らない。でも“武器”は会話で使ったから理解できるはずやな」みたいに、「限られたワード」の中で、出来るだけ的確に要点を伝える必要がありました。
だからあんなセリフ回しになったのでしょう。
人類にも当てはまりますね。
「言葉が見つからず、咄嗟に思いついた別の言葉で代用したら割とダメージを与えてしまった」みたいな。
ヘプタ達も発言後に「あ、やべ」となったと思います。
※そもそも「武器=未来予知能力」のつもりで話を進めてましたが、そういえばそう明示されたわけではありませんでした。もしかしたらこの時点で僕が認識間違いを起こしている可能性もあります。
評価・まとめ
80点
ミステリアスな状況の作りだし方が上手く、吸い込まれるように見入れた作品でした。
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