「目を開けて“それ”を見たら死ぬ」という強敵を相手にサバイブするNetflixオリジナル作品「バード・ボックス」を鑑賞しました。
いつも通りネタバレ無し情報を書いた後にネタバレしていきます。
まだ未鑑賞で、「とりあえず面白いかどうかだけ知りたい」という方は、「※ここからネタバレを含みます。」という文章の直前までを目安にご覧ください。
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※関連記事は最後にまとめて紹介します目次
予告編(トレイラー)
作品情報
公開年 | 2018年 |
---|---|
原題 | Bird box |
上映時間 | 124分 |
製作国 | アメリカ |
監督 | スサンネ・ビア |
脚本 | エリック・ハイセラー(原作者:ジョシュ・マラーマン) |
ジャンル | パニック,ホラー,SF |
主要キャスト |
サンドラ・ブロック(マロリー) トレヴァンテ・ローズ(トム) ジョン・マルコヴィッチ(ダグラス) サラ・ポールソン(ジェシカ) B・D・ウォン ジャッキー・ウィーヴァー(シェリル) ローサ・サラザール(ルーシー) ダニエル・マクドナルド(オリンピア) |
配信サイト・媒体 |
Netflix独占 ※記事公開時の情報です |
あらすじ・みどころ
謎の闇に突き動かされた者たちが次々と命を絶ち、人口が激減して5年。ここまで生き延びてきた母親が2人の子供を連れて、安住の地を目指す危険な旅に出る。
引用:Netflix
魅力
①序盤のアウトブレイクシーンの出来が良い
②正体不明の敵に対し必死にサバイブする様子が楽しい
気になる点
・敵の定義があいまい。存在も最後まで明かされず。
・あまり爽快感が無いラスト
・登場人物・人間模様に関する魅力が少ない
【ネタバレ無し】感想
ネトフリ内ですごく宣伝されており、アウトブレイク物が大好きな僕は迷わず速攻で鑑賞しました。
ネトフリオリジナル作品の中では久しぶりの秀作です。
人類は唐突に「見てはいけない敵」に襲われ、建物の中に籠る生活を余儀なくされます。
「それ」を見たら自殺衝動に駆られてしまう為、外へ出る場合は目隠し必須。
また、外へ出ると「幻聴」も聞こえてしまい、その声は目隠しの取り外しを促してくる為油断なりません。
本作は「現在(世界崩壊から5年後)」と「5年前(崩壊直後)」が交互に描かれる作風です。
良い点:序盤のアウトブレイクシーンの出来が良い
この手の作品で楽しみなのは、やはり序盤の崩壊シーンです。
僕はこの手の「アウトブレイク」や「パンデミック」系の作品を吐いて捨てる程見てきましたが、序盤の混乱シーンが安っぽいものもたくさんありました。
ネトフリ独占のホラーにも実はそういう作品が多いので身構えていましたが、本作の崩壊シーンはちゃんと楽しめました。
安いシーンなど一つも無く、都会の大混乱をそこそこのクオリティーで描いています。
そしてパンデミックが落ち着き始めた後はお決まりの「籠り生活」が始まりますが、ここがちょっと魅力に欠ける感じがしました。
不要なシーンは一つも無かったと思うのですが、トータル2時間4分は少し長かったかと。
悪い点:登場人物・人間模様に関する魅力が少ない
世界崩壊系映画は、「偶然寄せ集まったコミュニティー」での人間模様も見どころです。
しかし本作の人間模様はあまり魅力的ではありませんでした。
人間模様だけで言えば60点くらい。
僕の中で、登場人物の魅力は大抵の場合「イベント」に依存しています。(キャラクターの善悪に関わらず)
だからそもそも「物語の展開」にも関係しているのですが、本作は本筋でのイベントが在り来たりでカタルシスを感じる展開が少なかった。
そしてそれに付随する形で登場人物の輝きが弱くなり、そのせいであまり感情移入できずに終わりました。
人間模様、イベントの雑さがいかにもなB級テイストでしたね。
【ネタバレ有り】感想
※ここからネタバレを含みます。
個人的に理解できなかったポイント
ネタバレ無し感想でも書きましたが、本作にはそこまで魅力的なイベントがありませんでした。
そのうえで意味不明な行動を取るキャラクターも居たので、なんかこの辺りで作品に距離を感じてしまいました。
とりあえずまとめます。
・生き残り達は速攻で「外に出る時は目を開けてはいけない」と理解するが、なぜそう気付いたのか不明。例えば「空気感染」とか「光自体が怪しいから真っ暗な部屋にいないといけないかも」とかそういう迷いはなく、何故か即座にその対策に辿り着く。
・「食料が底をついた」という話になった時、スーパーマーケット店員の「チャーリー」が「僕は食料がある場所を知ってる」と言い、皆が場所を聞くと「スーパーにあるよ」と言う。でもそんな事はチャーリーの職業から推測できるので、僕はなんとなく皆が「そんなの知ってるよ。でもさすがにもう取られてるだろ」という突っ込みを入れるコメディ展開かと思ったが、なんと全員「なんでもっと早く言わないんだ」とスーパーに行くことを即決する。スーパーに限らず「店に食料がある」なんて誰でも思いつくし、あの規模のスーパーなら一度は行ったことがあるだろうし、チャーリーに限らず頭の片隅にはあったはず。
・「ルーシー」と「フェリックス」が速攻で恋に落ち、挙句の果てに共有の車を乗っ取って駆け落ちする。ロマンスに発展するのも突然だったし、脱出をする意味も分からない。「若気の至り」と捉えることも出来るが、それを想起させる小さなイベント等も特に無かった。また、「車を取られた」という事が何かに繋がるわけでも無かった。一体彼らは何だったのか。
見ていて大きく違和感を感じたのは上記の点です。
僕が何かしらのヒントを見逃していた可能性もありますが、気になったのでピックアップしました。
悪い点:敵の定義が曖昧で最後まで正体不明だった
「鑑賞者が敵の存在を知る」という事は、「主人公が死ぬ」に等しいこと。
主人公の「マロリー(サンドラ・ブロック)」はそこそこ魅力的なキャラだったので死亡ラストは避けて欲しいと思いながらも、「敵の正体」はやっぱり気になります。
そして残念なことに、敵の正体は最後まで不明でした。
さっきも書きましたが敵の定義も曖昧です。
空気感染などそういう類のものでは無いようですが、発症スピードもマチマチでイマイチ条件が分かりません。
何故イカれた連中だけは「それ」が美しいものに見えるのかも不明です。
この辺りで納得行く説明があれば、それだけで鑑賞後の満足度は一気に高まったことでしょう。
今書きながらひとつ思い出しましたが、「ダグラス(スキンヘッド)」は「ゲイリー」の目を見て「お前はイカれてたのか」と気付きます。
どうやら「それ」を見ると瞳孔の形が奇形になるようです。
確かに「それ」を見た後、自殺する直前は目がおかしくなる描写はありました。
しかし「瞳孔の形が変わる」と明示されたシーンは無かったはずです。
でもダグラスはゲイリーの異変に気付きました。
あの状況なら雰囲気等で異変に気付くとは思いますが、少なくとも「異常をきたすと瞳孔異変が生じる事をダグラスが知っていた」という伏線的なものが無いと展開に違和感が生じます。
残念ポイントという程では無いですが、一つの些細な違和感でした。
悪い点:爽快感に欠けるラスト
本作のラストは良いものでした。
「盲学校」が最後のロケーションでしたが、本作に相応しい場所だったと思います。
しかし鑑賞中に一度「盲目の人でも出てきたらなんか深みが増しそうだな」と浅はかながら考えてしまった為に、ラストのインパクトが弱まってしまいました。
これに関しては僕の責任ですが、やはり鑑賞中の興味は「敵の正体」に向きます。
別に敵の正体が判明しないパニック作品は多いので「正体の判明」は絶対条件では無いのですが、それでももう少しヒントが欲しかった。
「良い終わり方」ではありましたが、打開策が編み出されたわけじゃ無くどこか取って付けたようなものであり、「今後も平和が約束された」とは言いがたいと感じます。
評価・まとめ
55点
秀作です。
「意外なものが敵の弱点で、即席武器でなんとか奴らを攻撃できる!」みたいな展開は特に無く、かと言って逃げまどう中にカタルシスがあるわけでも無いのでところどころ退屈を感じますが、トータルで良い映画でした。
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