人類移住コロニーへの航路中「コロニーまで残り90年」という状況で目覚めてしまった男女を描いた「パッセンジャー」を鑑賞しました。
いつも通りネタバレ無し情報を書いた後にネタバレしていきます。
まだ未鑑賞で、「とりあえず面白いかどうかだけ知りたい」という方は、「※ここからネタバレを含みます。」という文章の直前までを目安にご覧ください。
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予告編(トレイラー)
作品情報
公開年 | 2016年 |
---|---|
原題 | Passengers |
上映時間 | 116分 |
製作国 | アメリカ |
監督 | モルテン・ティルドゥム |
脚本 | ジョン・スパイツ |
ジャンル | SF,ヒューマンドラマ,ロマンス |
主要キャスト |
ジェニファー・ローレンス(オーロラ・レーン) クリス・プラット(ジム・プレストン) マイケル・シーン(アーサー) ローレンス・フィッシュバーン(ガス・マンキューゾ) アンディ・ガルシア(ノリス船長) |
配信サイト・媒体 |
市販DVD Netflix…他 ※記事公開時の情報です |
あらすじ・みどころ
20XX年、乗客5000人を乗せた豪華宇宙船アヴァロン号が、新たなる居住地を目指して地球を旅立ち、目的地の惑星に到着するまでの120年の間、乗客たちは冬眠装置で眠り続けていた。しかし、エンジニアのジムと作家のオーロラだけが予定よりも90年近く早く目覚めてしまう。
魅力
①壮大な宇宙や洗練された船体の映像美と、快適さがうかがえる生活空間等のセットが素晴らしい
②全く隙もツッコミどころも無い心理描写と行動
③ユニークな登場人物たち
④トラブルまでの繋ぎに無駄がなく、丁寧に話が繋がる
⑤セリフ回しがユニークでロマンティックなので飽きない
⑥重厚感のあるBGM
【ネタバレ無し】感想
本作を見終えた後に予告編を見ると、予告編はあらゆるネタバレを回避した素晴らしい状態のものだと痛感しました。
それくらい本編には、様々なイベントと真実が隠されています。
プロットは「あらすじ」で紹介した通り。
宇宙事故により冬眠ポッドから目覚めた二人の男女。
彼らは残り90年という膨大な時間を宇宙船アヴァロン号で過ごすという絶望的な状況に置かれます。
【ネタバレ有り】感想
※ここからネタバレを含みます。
ラストまでのザックリストーリー
星間移住を目的とした宇宙船「アヴァロン号」は、小惑星帯を通過する際、かなりの大きさの小惑星と衝突してしまい、5000以上ある冬眠ポッドの中から、機械エンジニアの「ジム・プレストン(クリス・プラット)」だけを起こしてしまう。
最初は戸惑うジムだったが、しばらくして状況を把握し絶望する。
アヴァロン内で唯一会話ができるのは、アンドロイドバーテンダーの「アーサー(マイケル・シーン)」だけ。
そのアーサーのアドバイスにより、ジムは船内でのレクリエーションを貸し切りで思う存分楽しむ。
時間が経過するにつれ娯楽にも飽きたジム。
目的が無い孤独な生活に再び苦しくなったところでジムは、「宇宙遊泳エリア」の存在に気付く。
そこでジムは宇宙服を装着し一人で船外へ。
一粒の涙を流すジム。
宇宙遊泳を終え船内で宇宙服を脱ぐジム。
すると何かを決心した様子で、今度は宇宙服を脱いだ状態で再度ハッチへ。
そして自殺を意味する「ハッチ開口スイッチ」を押そうとするが、迷ったあげく押すのを辞める。
感情的になり大量のポッドが収容されているエリアを駆け抜けていると、以前自分が投げた空き瓶を踏んで転んでしまう。
そして起き上がると、冬眠ポッドに入っていた「オーロラ・レーン(ジェニファー・ローレンス)」という若い女性を見つける。
ジムは機械技師なので、マニュアルを見ながら冬眠解除を試みることは出来る。
ジムは孤独から解放される為にオーロラを起こしたいと考えていたが、それは自分がオーロラの人生を奪ってしまうに等しい。
しばらく迷っていジムだったが、最終的にオーロラを覚醒させることを決意し実行に移す。
オーロラが目覚めた直後、ジムは動揺しすぐにその場を離れてしまう。
目が覚めたオーロラは1年前のジムと同様パニックに陥る。
ジムは「君は冬眠ポッドの故障で目が覚めた」とウソをつき、ひとしきり二人で「冬眠状態に戻る方法」を模索したあと、しばらく二人は船内のレクリエーションを楽しむ。
ジムのさり気ないアプローチもあり、二人はすぐに親密な関係へ。
ジムはアーサーにだけ真実を打ち明けており、アーサーは「誰にも言わない」という約束をジムと交わしていた。
しかし二人の関係は、オーロラの誕生日に破綻する。
オーロラとジムは食事を済ませ、ラブラブな状態でアーサーの元に訪れる。
そこでオーロラは「二人(ジム)の間に秘密は無いわね」と何気なくジムに語り掛け、それに対しアーサーが「秘密は無い?」と聞き返す。
「彼女がそう言ってるだろ」とさり気なく流し席を外すジム。
ジムは実は結婚指輪を忍ばせおり、それを渡す心構えをしていた。
その頃アーサーはオーロラに、遂に「ジムはあなたを起こす前、ひどく葛藤していました」と真実を告げる。
アーサーは「二人の間に秘密は無い」という会話を、「ジムが遂に打ち明けた」と解釈したのだ。
それ以降二人は絶縁に近い状態となる。
ジムが何度謝ってもオーロラは取り合ってくれない。
「水曜日は僕の“アーサーデー”だ」
というやり取りが発生するくらい二人は距離を置いていた。
しばらくすると、何故かクルーの一人「ガス(ローレンス・フィッシュバーン)」が目覚める。
到着まであと88年を残していた。
ガスは甲板長で、船の最高権限に近いものを持っており、ガスのIDを使えばジムではアクセスできないところまで入れる。
おかげで船に重大な損傷があることに気付く3人。
しかしガスは冬眠ポッドのエラーにより身体に深刻な影響を受けていた。
その為あまり長く生きられない。
ガスは冬眠ポッドの状態を調べていると、「ジムはエラーで目覚めたが、オーロラはジムに起こされた」と知る。
そしてジムに対し「気持ちは分かるが絶対にやってはいけないことだ」と伝える。
ガスはオーロラにも「私のポッドを調べたなら、何があったか分かるでしょ」と詰め寄る。
ガスは「ジムがした事は殺人かもしれないが、ジムは溺れていた。溺れている者は周りにしがみ付くものだ」とオーロラをなんとか諭そうとする。
ガスは宇宙航海に長けているだけあり、どうやらその辺りの苦労も経験済みのようだった。
そしてガスは数日と持たずに死んでしまう。
死の直前、自分のアクセス権限があるリストバンドと同時に船の修理をジム達に託す。
船の状態は刻一刻と悪くなる。
船内を調べ続け、ジム達は遂に異常の原因を見つけた。
なんと隕石が船内を貫通していたのだ。
ジムはなんとか応急手当を施すも、その隕石の影響で発生したリアクターコアの不具合はすぐには直せない様子。
ジムはリアクターの再起動を試みるも失敗する。
どうやら再起動失敗はリアクターの排出口が開かないことが原因。
本来は熱放射の際に排出口も開くはずだが不具合で開かない。
そこでジムは船外に出て、手動で排出口を開くことに。
排出口に到着したジムは、工具を使ってなんとか扉を開放する。
しかしその扉は、ジムが抑えたままにしておかないとすぐに閉じてしまう。
このままではジムがそこに残った状態で熱放射が行われてしまう為、リアクターの再起動を行うとジムが死んでしまう。
ジムは船内にいるオーロラに対し再起動レバーを引くように促す。
しばらく躊躇していたオーロラだったが、遂に意を決しレバーを引く。
高温の放射熱を受けながらも耐えるジム。
ジムのおかげでリアクター再起動は完了したが、最後の最後にジムは吹き飛ばされてしまう。
宇宙服には穴が開き、そこから酸素が漏れている。
命綱も切れ、宇宙空間をさまようジム。
ジムは死を悟り、通信でオーロラに謝罪する。
しかしオーロラはあきらめなかった。
オーロラは宇宙服を装着し船外へ。
浮遊するジムに近付くオーロラ。
しかし自分に繋がっているワイヤーが限界に達し、ジムまであと少しというところで届かない。
しかしオーロラは、ジムに繋がっていた命綱(ワイヤー)の切れ端がこちらになびいた瞬間を逃さず、ワイヤーを掴む。
そのままジムを手繰り寄せ、船内に戻す。
オーロラはジムをすぐに医療ポッドまで運んだが、そこで「死亡している」という事実を突きつけられる。
それでもあきらめないオーロラは、ガスの権限を使い「蘇生措置」を行う。
おかげで蘇ったジム。
船の異常も取り払われ、再度平和が訪れた。
ある日、ジムはオーロラを医療区画に呼び出す。
そしてこの医療ポッドを使えば、再度冬眠状態に戻れる事を伝える。
しかし医療ポッドは1つしかない為、使うとしても1人しか冬眠できない。
・・・
そして88年後。
予定通り目覚めたパッセンジャー(乗客)たちは、船内に残されたオーロラの音声メッセージと、まるでジャングルのように変わり果てた船内を見て驚愕する。
ジムもオーロラも、医療ポッドには入らなかったのだ。
良い点:心理描写と行動に隙が無い
しばらく見ていると、「二人は惹かれあって、そして真実を知り仲違いし、そして最後はまた惹かれあう」という展開になることは想像できます。
しかしもしその流れに無理やりさが感じられると、感情移入度が下がり退屈な映画となっていました。
ありがたいことに、本作はその辺りの描き方が凄く丁寧でした。
まずオーロラを起こすまでのジムの葛藤も非常に濃く描かれており、いかに重大な決断だったかが理解できました。
そしてオーロラが真実を知る際の「アクシデント」も凄く自然で、ある意味「AIの盲点」を利用した良展開でした。
今度は「二人がどのように仲直りするのか」が気になりますが、ここも徹底的に時間をかけ、一切不自然さが無い丁寧な運び方でした。
ただこれは僕が男であり「ジム目線」で物語を追っていた為、「二人にまた仲直りしてほしい」と思いながらの鑑賞だったからかもしれません。
女性からすると、自分の人生を奪ったジムという男が許せずに低評価になってしまうような気もします。
逆に、完全オーロラ目線で本作のリメイクを見たい気もします。
事故で二人目が覚めたはずだったが、最後のドンデン返しで「実はジムが自分を起こしたと知る」みたいな映画。
それはそれで面白い気もします。
良い点:ユニークな登場人物たち
ジムとオーロラはもちろんのこと、「アーサー」と「ガス」のキャラクターと役割が本当に良かった。
特にアーサーというキャラクターは最高です。
本作における癒しとスパイスどちらも担当していました。
もしアーサーがいなければ、本作は終始絶望的でユーモアも希望もない作品だったことでしょう。
そして終盤に登場した「ガス」も包容力があり、まるで「父親」的な立ち位置だったのも良かった。
ジムに対してそこまで責めず、ものごとに対し飽くまで冷静に対処する。
ガスのキャラクターもそうですが、登場の仕方、タイミング全てが完璧でした。
良い点:セリフ回しが一々面白い
〇喧嘩した後のジムとオーロラ
ジム「水曜日は僕のアーサーデイだ」
オーロラ「今日は火曜よ」
〇ガスの絶命シーン
ガス「これ(自分のID)を二人に託す。船を修理してくれ・・・。」
ガス「(今の)キマっていたか・・・」
オーロラ「えぇ。カッコ良かったわ・・・」
ガス「良かった。制服姿の男はモテる・・・。」ガク
オーロラがジムに対し唐突に「動機は?」と聞くシーンも熱かった。
ジムは目をまん丸くして、「(オーロラを起こしたこと)なんで知ってるの?!」みたいな表情をしますが、オーロラは「地球を離れる理由」を聞きたかっただけでした。
ジムを演じる「クリス・プラット」の顔芸が面白過ぎて、ユーモアシーンが最高の出来に仕上がってます。
評価・まとめ
95点
久しぶりにここまでハマりこめる神作を見ました。
ちゃんとした理系出身者が観たらそこそこのツッコミどころもあるようですが、僕のような凡人が観ても特に気にならず、少なくとも「鑑賞中は気にならない」というレベルだったので、本当に食い入っての鑑賞となりました。
神作です。
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