ソリッドシチュエーションスリラーの生みの親「SAWシリーズ」の最新作「SAWレガシー」を観たので感想を書きます。
いつも通り、ネタバレ無し情報を書いた後、ネタバレしていきます。
ちなみに僕はSAWシリーズのファンで、SAW3Dまでの全作を、各10回ずつは鑑賞しました。
※関連記事は最後にまとめて紹介します「ジグソウ レガシー 評価」
「ジグソウ レガシー 感想」
「ジグソウ レガシー 考察」
「SAW LEGACY 評価」
「SAW LEGACY 感想」
「SAW LEGACY 考察」
などのワードで検索される方におすすめです。
作品情報
公開年 | 2017年 |
---|---|
原題 | Jigsaw |
上映時間 | 92分 |
製作国 | アメリカ |
監督 | スピエリッグ 兄弟(マイケル・スピエリッグ、ピーター・スピエリッグ) |
脚本 | ジョッシュ・ストールバーグ、ピート・ゴールドフィンガー |
ジャンル | ソリッドシチュエーションスリラー、ホラー |
主要キャスト |
マット・パスモア(ローガン) カラム・キース・レニー(ハロラン) クレ・ベネット(キース) ハンナ・エミリー・アンダーソン(エレノア) ローラ・バンダーボート(アナ) |
配信サイト・媒体 |
市販DVD…他 ※記事公開時の情報です |
あらすじ
猟奇的な殺人鬼ジグソウによって密室に閉じ込められた人々が生存をかけたゲームに挑む姿を描き、「世界でもっとも成功したホラーシリーズ」としてギネスブックにも記載された「ソウ」シリーズの7年ぶりとなる第8作。監督は「プリデスティネーション」で知られる双子の兄弟ピーター&マイケル・スピエリッグ、脚本は「ピラニア3D」のピーター・ゴールドフィンガー&ジョシュ・ストールバーグのコンビが担当した。ある密室に男女5人が監禁される。5人は目の部分をくりぬいたバケツを頭にかぶせられ、身体は鎖につながれており、対面する壁には一面に鋭い刃が光っていた。一方、刑事のハロランとキース、検視官のローガンとエレノアは、町中の公園で発見された死体を検証していた。死体の無残な様子から10年前に死んだはずのジグソウの手口が浮かび上がり、死体に埋め込まれていたUSBメモリを確認すると、「ゲームは始まった。4人の罪人が犯した罪が償われるまで終わらない」というジグソウの声が響きわたる。
【ネタバレ無し】感想
SAWシリーズほどネタバレが悪質となる映画は無いと思っているので、全てのネタバレを完璧に伏せた感想をまず書きます。
本作は、あらゆる面でSAWでは無いです。
もちろん面白い作品でしたが、SAW1~SAW3D(実質SAW7)までのクオリティというか、「趣向」を期待して見ると、結構な肩透かしを食らいます。
ネタバレ無し情報は以上ですが、ネタバレ感想は思いっきり重厚に書いてますので、できれば鑑賞後に続きをご覧ください。
※次項からネタバレを含みます。
【ネタバレ有り】感想
面白い作品でした。
これは間違いありません。
でも、SAWブランドを使った割に、全然SAWな感じがしませんでした。
良い点:新しいギミックやトラップが見れるのはやっぱり嬉しい

SAWシリーズの醍醐味はやっぱり「トラップ」です。
強烈な痛みを伴い、ビジュアル的にも最悪なギミックは、鑑賞中に一時停止したくなる程です。
そんな極悪なトラップを求めてSAWを見てしまうのですが、本作も当然ながら様々なギミック、トラップが登場します。
そんな「新規トラップ」が登場すると、「どんな残虐なことが起こるんだろう」と心底不安になり、そして期待してしまいます。
その辺りの面白さは本作にもあったので、SAWファンの僕としてはだいぶ楽しめました。
良い点:ジョン・クレイマーが出てきた
彼の顔を見るとワクワクが止まらなくなるのは、病気でしょうか。性癖でしょうか。
1作目の彼は、「命を無駄にしてる奴らが許せない」という思想でした。
2作目以降では、「犯罪に加担してるとかも命を無駄にしてる」という風に若干定義を広めましたが、まだ納得できました。
5作目の回想シーンにて「私のゲームで再犯率がグッと減る」と、社会正義的な思想を匂わせ、被験者の選定は半ばなんでもありとなってきました。
このように、ジョンは割とぶっ飛んでいます。
行動の定義が定期的にアップデートされ、都度自分の都合の良いように物事を捉えます。
ジョンの説明は以上として、「回想シーンでは無く、生きている状態のクレイマーが出てきた」というのは喜ぶ点でした。
後ほど「考察」として紹介しますが、ジョンが登場したということは、どう考えても「SAW3」以前の出来事ということになりますね。
悪い点:景色が解放的過ぎる
今までのSAWシリーズでは、メインゲームは明らかな密室でした。
本作も密室ではありますが、かなり広々としたロケーションとなっており、SAW特有の「狭い密室での恐怖」が感じられませんでした。
SAW5の時も若干感じたのですが、「こんなに部屋が広ければ、無理して次のステージに行かなくてもよくない?」という安心感が生まれてしまいます。
これは個人的見解ですが、SAWの恐怖は、「次のステージに行きたくない」と思わせつつも「行かなければいけない」という絶望感にあると思います。
「助けが来るかもしれないから、体力のギリギリまでその部屋で待機しておけばいいのに」と思えてしまうと、どうしても感情移入しづらくなります。
本作にて「そこに留まればいいじゃん」と強く思えてしまったのは、「トラップの残忍さが足りない」というのと、「部屋が広すぎるから」だと思います。
トラップの残忍さについては後述しますが、ライアンが窓から眺めた外の景色は、むしろ癒されます。
もっと地下室を想起させるような、ジメジメとしたロケーションが好みでした。
とは言え、本作はどうやら過去シリーズと同等か、それよりも過去の時間軸であるため、「ジョン・クレイマーの趣向が固まってない」という理由で、ロケーションが広々としていたという事で納得できます。
そのせいで恐怖感、不安感、絶望感は薄らいでいますが。
悪い点:トラップの残忍さが足りない
「首に繋がれた鎖が引っ張られ、死ぬ」というのは、SAW5で既にありました。
そして残忍さ、理不尽さもあちらの方が勝っていたため、オープニングゲームとしてはインパクトに欠けています。
他にも、新規トラップがいくつか出てきますが、残忍さが全然足りません。
新規トラップを一応まとめます。
・鎖カッター(オープニングゲーム、首に繋がった鎖が引っ張られ、壁に到達すると丸ノコで刻まれる)
・注射器 or 首吊り(被験者の一人がロシアン注射器を打てば、他の被験者含む全員の鎖巻取りが中断され助かる)
・足切断ワイヤー(ライアンがルールを無視して出口を壊そうとした時に発動したトラップ)
・穀物地獄(アナとミッチが溺れかけたやつ)
・回転バイク(ミッチが死んだ罠)
・バックショットガン(発砲した本人が死ぬ)
・レーザーカッター(ハロランとローガンの対決トラップ)
こんな感じです。
正直どのトラップも、「これアイディアが光ってんな」となりませんでした。
特にガッカリしたのが、穀物地獄です。
ある程度穀物が積まれて身動きが取れなくなったら、今度は刃物が降ってきます。
包丁、スコップ、熊手などが降ってくるので、それがヒットした場合の恐怖というのがありました。
この手の手法はホラー映画で良く見かけるのですが、実際は刃物はあんなに簡単に刺さりません。
本作では、包丁がミッチの肩にヒットしました。
これはまだ分かります。
包丁程度なら柄ではなく刃の方が重そうだし、そちらの方が下向きになって降ってくるでしょう。
そして自重で肩に刺さることも考えられます。
しかし、「釘」が刺さるのはさすがに解せません。
降ってきた釘がアナの腕に刺さった時は、一気に創作物感を感じました。
現実なら、釘が腕に当たって「イテ」ってなって終わりです。。
それに丸ノコとかも、どれだけ鋭利に研いでいようと、ランダムに降ってきた状態のものが脅威になるとは思えません。
そんなわけで、本作は結構なんでもありな”肉質”となっており、そのせいで恐怖感が薄らいでます。
悪い点:トラップ等に「オートマチック感」が無い
本作は、「当たり判定」の審査がどうやら目視です。
まず今までのSAWシリーズをおさらいすると、ほぼ全ての罠の「救出条件」が自動判定でした。
例えば、SAW3での「天使の羽」というトラップでは、目の前のビーカーに入ったカギを取り出し、自分に装着された装置を外せばクリアでした。(ビーカーには酸が入っている)
SAW5のラストトラップも、「被験者が自ら血を流せばクリア」という、本作のオープニングトラップと非常に良く似たものでしたが、「血液が〇リットルに達すれば自動的に扉が開く」というシステムが組み込まれており、これも監視役がいなくても成立するゲームでした。
では本作はどうでしょうか。
まず最初、「回転する丸ノコに自ら近付き、少しでも血を流せばクリア」という状況です。
これはどうやっても目視で判定する必要があります。
「カーリーが注射器を打ったら鎖の巻取りが終わる」という仕組みも、人が目視判定で手動操作する以外に方法がありません。
ハロランとローガンの対決トラップも、結果的にローガンが仕掛け人と言えど「各々の懺悔を誰かが聞いて判定する」という必要があるトラップでした。
「明らかに目視による判定が必要だったゲーム」の登場は、SAW特有の「被験者がまるでレールに乗せられてる」という無機質感が無かったので、ちょっと評価が下がりました。
(もちろん、過去作含め全てのゲームで「ジグソウは最前列で観ている」という前提条件があるのは理解してます)
悪い点:ミッチが死んだ罠の説明が浅い
「回転バイク」と名付けましょうか。
あれはきっと、トルネード状に設置された赤い部分が鋭利になっていたんでしょう。
でもその説明が一切ありませんでした。
個人的には、この説明不足は「もったいない」と思いました。
トラップ自体のユニークさが足りない気が少ししましたが、ここは割愛します。
SAWシリーズのトラップは、事前にそのトラップの危険な部分を超接写映像で見せ、その危険性を鑑賞者、被験者に植え付けます。
だからそのトラップに対する「嫌悪感」を最大限まで高めた状態でゲームが始まります。
しかし、回転バイクの「刃」が鋭利であるということは、「ミッチが実際にプレイしながら肩を切った時」に初めて知りました。
もちろん、ゲーム性からそう察することは出来ましたが、「失敗したらこうなる」というのが不明な状態でのゲーム突入は、恐怖感が激減します。
悪い点:ドンデン返しが弱い
本作を見終えて、「SAW2」を思い出した人は多いと思います。
本作の脚本はSAW2の劣化版で、少しSAW5の要素を足した程度に見えました。
まず、「全く同じ2つのゲームが行われていた」という事実は、少しムカつきます。
本作は「警察パート」と「ゲームパート」に分かれており、ゲームパートが過去で、最新が警察パートとして描かれてるっぽかったです。
ゲームパートで人が一人死ぬと、警察側でその死体が登場していたので、少なくとも「ゲームが行われた直後が警察パート」だと思い込まされました。
しかしながらそれは嘘で、ゲームパートは実は警察パートの10年前の出来事でした。
警察が追っていた事件は、本作では一切語られていない、全く無関係の事件ということでした。
こんなの、誰が納得するんでしょうか。
少しSAW2の話をします。
SAW2では、8人の男女が館に閉じ込められ、そこで生き残る為に様々なゲームにトライします。
そして警察側は、監視カメラの映像を見て、一刻も早く彼らを助けようと奮闘します。
ですが結果、実はその監視映像は録画したものであり、警察はまんまとハメられます。
このシーンの衝撃度は相当なものでした。
SAWがまだ2作目だったというのもありますが、構成が完璧だったからあんなに衝撃を受けられたんだと思います。
たまに見返しても、伏線の連続で、ちゃんとヒントを散りばめていたことにも好感が持てます。
しかし本作は、ドンデン返しが取って付けたようなクオリティーです。
黒幕が誰とかも、クレイマーが生きている時点で正直興味がありません。
そして「今あなた達が見てる”メインゲーム”は10年前のもので、実は全く同じゲームを今もやってたんだよ」というのは半ば馬鹿にされた気すらします。
「そういうことだったのか!!」なんてなりません。
更に付け加えれば「後ろ向きに発砲されるショットガン」もだいぶ弱いです。
ジョンの説明を聞けば、そういうことだと察しが付きます。
悪い点:被験者の罪が弱い
今までのSAWは、各被験者の罪(または罪の意識)が少しユニークだった気がします。
例えばSAW5。
被験者は5人で、それぞれ「放火」やら「隠ぺい」やらの罪を犯していました。
そして彼らは「一つの事件に関わっていた」という大きな共通点がありました。
でも本作は、登場人物一人ひとりの罪が全然繋がってません。
しかも
「バイクのブレーキオイルが壊れた状態で販売した」とか
「喘息の薬が入ってたバッグを盗んでしまい、被害者を窒息死させた」とか、
ありきたりで捻りがありません。
悪い点:ギミックの連動がイマイチ
被験者の一人に注射器を打つ必要があり、それをしなければ全員が首を吊って窒息死。
このトラップになんとなく違和感を感じましたが、どうやら違和感の正体は「連動の無さ」っぽいです。
「一人の被験者が注射器を打つこと」と、「他のプレイヤーが窒息すること」に関連性がありません。
というか、「本人も吊るされてる」というところが意味不明です。
むしろ、自分以外の3人が首を吊るされ続け、その罪悪感に耐えかねて注射器を自分に打つ、という展開で良かったんじゃないでしょうか。
そうすれば、「3.24」と書かれた注射器が、当たりだったのかハズレだったのか明示することもできたのに。
(この数字は注射器の選定のために唯一登場したヒントだったのに、結局答えは出なかった)
考察
考察①時間軸について
本作ではジョンが生きていました。
でもそれは「メインゲームの時間軸」であり、それは、本作で最新の時間軸である「警察パート」から見て10年前です。
だからジョンが生きていたのにも納得は出来ます。
アナがジョンを観た時、「あなた生きていたの?」みたいなことを言いますが、それはジョンの隣人で「ジョンが末期癌である」という事実を知っていたから出てきたのでしょう。
気になるのは「警察パート」の時間軸です。
本作は「エレノア(Hannah Emily Anderson)」という超絶美人が登場します。
そしてエレノアはジグソウの崇拝者で、ジョンが実際に使ったトラップの図面を手に入れ、自主制作していました。
本人はスタジオと呼んでいましたが、エレノアが所持しているアトリエには、我々も見たことがあるいくつかのトラップがありました。
・顔に装着する逆トラばさみ(アマンダ、ホフマン、ジルに使われたトラップ)
・扉ののぞき穴に設置されたリボルバー(SAW2に登場)
・天使の羽(ケリー刑事がアマンダに殺されたトラップ)
他にもいくつかあったと思いましたが忘れました。
でも「天使の羽」が登場したので、少なくともSAW2の時間軸は超えています。
そしてSAW3とSAW4は同時進行なので、SAW4も超えています。
なので警察パートは、SAW4~SAW5の間の出来事では無いでしょうか。
あの頃は確かまだスマホとかも普及してなかったですよね。
本作に登場するケータイ電話はどれもガラケーだったので、その辺りが怪しいかと思います。
でもこれはあまり指標にならないか。
考察②ジョンはエスパーか?
「ひったくった時のバッグに入っていた金額が3ドル24セントだった」
「隣人が赤子を窒息させた」
「オープニングゲームで、ミッチとカーリーとライアンは絶対に死なない」
ジョンはこれらの事を知っていました。
ミッチ、カーリー、ライアンについてはピンポイント指名のゲームを用意していたので、彼らが生き残っている必要がありました。(ライアンについては、ルール違反の脱走を試み罠にかかる前提)
ジョンはSAW2にて、「起こりうる全てのことを考え綿密に計画を立てれば、偶然の入る余地は無くなる」というぶっ飛んだ名言を残しています。
このことから、「ジョンは、ゲームの進行に関することは全て把握している」と、無理やりながら考えることが出来ます。
だからミッチとカーリーの件はひとまず解決。(ローガンの麻酔が効き続けていたというトラブルは予想外だったようだが)
では、カーリーがひったくった時に入っていたバッグの金額という情報は、どこで仕入れたのでしょうか?
→カーリーが誰かに懺悔したのをたまたま聞いた
アナが赤子を窒息させたのを知ってるのは何故?
一応、アナが赤ちゃんを嫌ってるようなセリフを隣人であるジョンが聞いていたという描写はありましたが、窒息させるところを見て無かったはずです。
見ていたならちゃんと告白しないと、今まで「お前が黙っていたせいで〇〇は死んだ」と言って、被験者を選定してきたことに矛盾が生じます。
とりあえず「アナの様子が明らかにおかしかった」とか、そういった推測でアナを犯人だと決めつけたのでしょう。
今までも「ジョンの観察力」がぶっ飛び過ぎてた感はありましたが、本作は特にそこが躊躇だった気がします。
考察③バケツを被る必要性
SAW5のオープニングゲームと本作のオープニングゲームは良く似ていました。
ビジュアル的な明らかな違いは「本作はバケツをかぶっていた」ということのみです。
本作では何故バケツを被っていたのでしょうか?
理由は一つしかありません。
被験者の顔を隠す為です。
被験者の一人、麻酔のせいでずっと眠っていた人は、実はローガンでした。
そしてそのローガンが後継者(レガシー)だったため、ドンデン返しの為に彼の顔を隠す必要がありました。
これは間違いなく「鑑賞者に向けた配慮」でしかなく、SAWとしての品質を落とす設定です。
【60点】違う、SAWじゃない「ジグソウ:ソウ・レガシー」評価と感想:評価・まとめ
60点
SAWシリーズ純正の続編ということもあり期待していましたが、思いの外脚本が穴だらけで、意外な程に洗練されていませんでした。
ファンへのサービス的なイースターエッグも特に無く、関連するキャラクターの登場も無く、とてもガッカリです。
しかし、最後まで飽きずに鑑賞できたのもまた事実。
それなりのクオリティーではありました。
SAWシリーズは、SAW7でビックリするくらいキレイに終わったので、出来ればそのまま終わっていて欲しかったという気持ちも少しあります。
本作にてジョンが謎のギミックを調整していたので、本作が大コケしていなければ、きっと次回作で登場すると思います。
記事中に登場したリンク:





