段々度を超えて行く贈り物・・・。最後には・・・。
不気味な贈り物が届くサスペンス・スリラー「ザ・ギフト」を鑑賞しました。
いつも通りネタバレ無し情報を書いた後にネタバレしていきます。
まだ未鑑賞で、「とりあえず面白いかどうかだけ知りたい」という方は、「※ここからネタバレを含みます。」という文章の直前までを目安にご覧ください。
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目次
予告編(トレイラー)
作品情報
公開年 | 2015年 |
---|---|
原題 | The Gift |
上映時間 | 108分 |
製作国 | アメリカ |
監督 | ジョエル・エドガートン |
脚本 | ジョエル・エドガートン |
ジャンル | サスペンス,スリラー |
主要キャスト |
ジェイソン・ベイトマン(サイモン) レベッカ・ホール(ロビン) ジョエル・エドガートン(ゴード) |
配信サイト・媒体 |
市販DVD Netflix…他 ※記事公開時の情報です |
あらすじ・みどころ
新たな転居先で幸せな生活を送る夫婦の前に、夫の同級生と名乗る男・ゴードが現れた。再会を喜んだゴードから、2人に1本のワインが「ギフト」として贈られる。しかし、徐々にゴードからのギフトはエスカレートしていき、度を越していく贈り物に2人が違和感を覚えはじめた頃、夫婦のまわりに異変が起き始める。
魅力
①「ゴード」のミステリアスな顔立ちが良い。怖いような、逆に親しみやすいような。
②本筋だけを追ったシンプルなストーリー
気になる点
・物語が二転三転せず、本筋のクライママックスに向けたイベントしか発生しない。そこが少し物足りなかった。でもこれは筆者が「ホラー」を期待しながら観たせいでもある。ちゃんと「地味風スリラー」という事を理解した状態で観たら面白い。
・スリリングさ、惹きつけられる展開が無かった
【ネタバレ無し】感想
旧友からの贈り物が、段々度を越してヤバくなってくるという内容。
鑑賞前は、段々贈り物が狂気じみてきて、主人公たちが「もう辞めてくれよー!!!!」と泣き叫ぶも、最後のその瞬間までギフトが止まらない・・・みたいな内容を想像していました。
ですがそれは見当違いで、本作はドラマ性が強いサスペンス・スリラーです。
絶叫シーンなどほとんど無く、終始淡々と話が進みます。
ホラー映画的な「対決」シーンもありません。
各キャラクターの心理状態、状況、ミステリアスさを楽しむ作品っぽいですね。
一応「ヴィラン(敵)」という立ち位置の「ゴード」という人物がおり、彼を本作の監督でもある「ジョエル・エドガートン」が務めています。
「ジョエル・エドガートン」の事はあまり良く知りませんが、「ゴード」にピッタリハマってます。
始めてゴードがフレームに入った瞬間から、「なんかヤバイ人だな」という雰囲気がヒシヒシと感じられました。
なんかすごく不安になる目つきをしています。
ドラマ版「シャーロック」や「Dr.ストレンジ」でおなじみの「ベネディクト・カンバーバッチ」にちょっと似てて、彼のサイコ度を増したような顔つき。
全体的にダークで盛り上がりも少ないですが、あまり退屈せずエンドロールを迎えることが出来ました。
※ここからネタバレを含みます。
【ネタバレ有り】感想
ワイン → コイ → ベビーカー → 赤ちゃん
と、どんどんエスカレートしていくゴードのギフト。
「コイ」の段階で、「勝手に家に上がって池にコイを放たれた」という自然な不気味さを発揮しています。
中盤にサイモンがゴードに暴力をふるったことで、二人の関係は壊滅的な状態になります。
それと同時期に、サイモンが本当はクソ野郎であることも判明。
鑑賞者目線で見ても、どちらが正義か分からない状況。
嘘ばかり付いていたサイモン
高校時代、「車の中で性的暴行を受けていたゴードを、サイモンが助けてあげた。」という噂が広まっていましたが、実はそれはサイモンの嘘でした。
サイモンは、面白半分で「ゴードが車で男とヤってた」と、ガセ情報を学校中にバラ撒いたのです。
そのせいでゴードは虐められ、親からも暴力を受け、実際に大変な人生を送るハメになったようです。
そしてサイモンは大人になった後も、出世競争を勝ち抜くために、ライバルが情報操作をしている事をリークし、蹴落とします。
しかしそれも嘘で、その件は後にバレます。
そして逆にサイモンが咎められます。
サイモンの嘘は、妻である「ロビン(レベッカ・ホール)」をも苦しめていました。
ロビンは精神安定剤の常用者で、「私が病んでるのは、あなたの嘘が原因かもしれない」と言っていました。
実際にサイモンが今までどんな嘘を吐いてきたのかは不明ですが、ロビンはサイモンに対し、直感的に不信感を抱いていたようです。
クライマックス:ゴードの復讐
不妊症で悩んでいたロビン。
しかし晴れて妊娠・出産しました。
しかしサイモンは、ロビンから「あなたと家に帰りたくない」と冷たくあしらわれ、しぶしぶ1人で家に帰ります。
すると玄関に「ベビーカー」のギフトが。
ベビーカーの中には「鍵」「CD」「DVD」も同梱されていました。
まず、「鍵」はサイモン宅のモノでした。
つまりゴードからの「いつでも家に侵入出来る状態だったよ」というメッセージです。
不気味です。
そして次に「CD」には、ある盗聴記録が残っていました。
偽のゴード宅に伺った際の、サイモン夫妻のふざけた会話の記録です。
最後、「DVD」には、ロビンが気絶した後、それを舐めまわすように撮影するゴード(仮面をかぶっている)が映っていました。
映像を見る限り「飲み物に薬を混ぜ、ロビンが気を失った後に強姦した」という風に取れますが、性的なシーンは一切撮影されていなかった為、そこだけは謎です。
その映像を見ながら涙を流すサイモン。
その後サイモンとゴードンは電話越しに対峙します。
「俺に“何もしてない”と言ってほしいんだろ。でもそれは言わない。子供の目をよく見れば分かるさ。」
終話後、分娩室で赤ん坊を抱きかかえるロビンを見て、なんとも言えない表情をして座り込むサイモン。
それを覗き見るゴード・・・。
凄く気持ちの悪いクライマックスです。
考察
考察①ロビンの子は「ゴード」の子なのか?
他ブログ様の記事では、「あれはゴードの子では無い可能性が高い」と書かれていました。
根拠は、「一度の行為で妊娠する確率の低さ」です。
確かに納得できます。
それに加え、「ロビンに対するゴードの優しさ」の描写が濃かったことから、そもそもロビンに乱暴な事をしなさそう、という見方も出来ます。
「ロビンに対しての優しさ」は、ゴードが復讐計画を勧めやすくするための演技だったかもしれませんが、個人的には「心の底から湧き上がる親切心」のように見えました。
だから、失神したロビンに対し、ゴードがその一線を超えたようには思えません・・・。
だがしかし、ゴードは情緒不安定な一面があるようです。
サイモンに「君が成功してくれて良かった」と言っておきながら、「犬を隠す」などの嫌がらせもします。(実際にただ行方不明だっただけかもしれないが)
また、自分の家と称し、人の家にサイモン夫妻を招きます。
常人では中々取れない行動です。
そう考えると、ロビンに乱暴を加えたとしてもおかしくありません。
ただしこの復讐劇の一番気持ち悪いところは、「ゴードがロビンを強姦したかもしれないのに、その事をロビンに言えない」という点。
映画的に考えると、サイモンはこの事を1人で抱え込むしかありません。
まず、「ゴードがロビンを襲った(かもしれない)」という点で気持ち悪い。
実際に襲ってないかもしれないのに、ロビンの体を見る度に、サイモンは、あの忌まわしいゴードの顔が浮かぶことでしょう。
それに子供のDNA確認をして事態をハッキリさせたくとも、ロビンが「暴行を受けた記憶が無い」以上、サイモンとしては、できれば今回の一件はロビンには隠しておきたいはずです。
「自分のせいでロビンを巻き込んだ」という罪悪感もあるでしょうし。
というように、実際にゴードがロビンを襲わなくとも、サイモンに精神的大ダメージを与えることができます。
そう考えると、あの子供は純粋にサイモンの子供のような気がします。
考察②ゴードは最初から復讐を計画していたのか?
この手の作品を見る時、僕は毎回「この発想は最初からあったのだろうか?」という点が気になります。
例えば「驚異的な機転の連続により達成された復讐劇」などの場合、「最初から計画されてた」よりも、「その場の思いつきで達成できた」という展開の方が個人的に好き。
その方が熱い。
さて、本作に登場するゴードは、この復讐劇を最初から実行するつもりだったのでしょうか。
個人的には、「サイモンに蹴り飛ばされた後に実行を決意した」という程度であり、最初から計画されていたわけではない、と思っています。
正直なところどちらにも取れるのですが、「最初から計画していた」と判断できる材料が少なすぎます。
たぶん一つもありません。
それに、ゴードが最初にサイモンに声をかけた時や、サイモン亭での食事シーンなど、やっぱりゴードが良い奴に見えます。
ゴード自身が立ち直る為に、加害者であるサイモンを肯定しているのかもしれません。
そしてゴードは、サイモン宅にあるメッセージボードに描かれた「ブキミなゴード」という落書きを見て、たぶん気が変わったんだと思います。
確かゴードがサイモン夫妻を偽家に招いたのがその直後で、偽家には盗聴器を仕掛けていました。
この時点で、もう復讐の準備段階に入ってます。
というわけで、僕が思うにゴードは「最初はサイモンを赦そうしていたけど、“不気味なゴード”の落書きを見て、やっぱり許せなくなって復讐を始めた」んだと予想してます。
そして実行を固く決意したのがあの「駐車場での暴行」だったのでしょう。
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60点