核弾頭級の”何か”により破滅したNYで、ギリギリ生き延びた男女の共同生活を描いた「ディヴァイド」を鑑賞しました。
いつも通りネタバレ無し情報を書いた後にネタバレしていきます。
まだ未鑑賞で、「とりあえず面白いかどうかだけ知りたい」という方は、「※ここからネタバレを含みます。」という文章の直前までを目安にご覧ください。
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予告編(トレイラー)
作品情報
公開年 | 2011年 |
---|---|
原題 | The Divide(訳:分割) |
上映時間 | 112分 |
製作国 | アメリカ・カナダ・ドイツ合作 |
監督 | ザビエ・ジャン |
脚本 | エロン・シーン、カール・ミューラー |
ジャンル | 終末モノ、サスペンス、シチュエーションスリラー |
主要キャスト |
ローレン・ジャーマン マイケル・ビーン マイロ・ビンティミリア コートニー・B・バンス アシュトン・ホームズ ロザンナ・アークエット イバン・ゴンザレス マイケル・エクランド アビー・シックソン |
配信サイト・媒体 |
市販DVD Netflix…他 ※記事公開時の情報です |
あらすじ・みどころ
壊滅したニューヨークの地下シェルターに取り残された男女9人が、恐怖や絶望にかられていく姿を描くシチュエーションスリラー。
魅力
①密室空間での人間模様、展開が熱い
②エグイ描写もしっかり描き切っている
③カメラワーク、演出がかっこいい
【ネタバレ無し】感想
意外にもめちゃくちゃ好きな作品でした。
僕は終末モノというだけでヨダレが出そうなくらい好きです。
でも本作は、
・一般評価が低い
・性的暴力等のシーンがある
という理由で中々鑑賞せずにいました。
暴力シーンは中々キツイですが、シリアスなシーンではちゃんとそういう落とし方をするので、中途半端さが無くしっかりハマり込みながら鑑賞できました。
似たような作品で最近鑑賞した「すべての終わり(2018)」というネトフリ独占映画がありますが、それは非常に駄作で、その作品のように「終末モノはハズレが多い」場合が多いです。
もちろん、終末モノの中にも「ザ・ウォーカー(2010)」のような神作もありますが、世の中には「終末というシチュエーションに魅了されて作ってみたんだろうけど、イマイチ盛り上がらない作品」が吐いて捨てるほどあります。
本作のトレイラーはかなりB級テイストだったのでちょっと身構えてしまいましたが、意外にも序盤からしっかり引き込まれました。
本作は「心理描写」の描き方が上手いです。
上手いというか「外してない」と言う感じですね。
つまらない作品では、脇役の一人を無理やり半狂乱にさせ主人公グループを窮地に追い詰めたりしますが、本作はそこの流れがかなり自然であるため、置いてけぼりを食らうことなくしっかりとハマり込めました。
また、「半狂乱になった人物」の中にもちゃんと葛藤があるようで、そういうシリアス部分の描き方が熱く、そしてカッコ良くて凄く面白かった。
「ラストが頂けない」という他の方のレビューには凄く共感しますが、それでもとても面白い作品でした。
【ネタバレ有り】感想
※ここからネタバレを含みます。
良い点:キャラ設定が明確で良かった
本作の登場人物は一人残らず魅力的です。
ローレン・ジャーマン演じる「エヴァ」は特に癖の無い いかにもな主人公ですが、残りの8人はそれぞれ結構な癖があります。
特に、このシェルターが併設されているアパートの管理人「ミッキー」が凄く良かった。
この手の密室サスペンスものに登場する「癖のあるダメ親父」が好き過ぎて、そして彼が映画にハマり過ぎて、おかげで作品としてめっちゃ面白く感じました。
ミッキーは中盤までは割と嫌われ役ですが、終盤ではヒーローっぽく描かれます。
そして、本格的に狂人となる人物が二人おり、それが「ジョシュ」と「ボビー」です。
最初はボビーの方が脅威っぽかったですが、最終的に支配度が高いのがジョシュという流れも良かった。
また、ボビーの画像からも若干分かるように、ボビーは狂い行く自分を見て「こんな風になりたくない」というような表情をしています。
ここまでの流れが凄く自然なのと、ボビーの演技力も相まって、彼らの感情も理解できる素晴らしい展開でした。
エヴァの恋人「サム」が意外と役に立たない事や、「ジョシュ」の弟「エイドリアン」は主人公側のグループだったりと、ユニークな事前設定の時点でちょっと面白かった。
良い点:演出、カメラワークがかっこいい
最後、ミッキー vs ジョシュという最終決戦が描かれます。
お互いズタボロの状態での戦いとなり、ここではゴテゴテで濃いめの演出が使われています。
この時カメラがわざと斜めに向いたり、流れるように動くなどして、フォーカスした人物の状態をカメラワークでも伝えていました。
僕は純粋にこの手のカメラワークが好きなので、それがフィットする展開の時にちゃんとそういう手法を取ってくれた事に好感が持てます。
ラストの「崩壊後の地上」のシーンも悪くなかった。
良い点:終盤の演出が「28日後」っぽい
28日後のラストでは、絶望的なメインテーマ曲が大音量で流れ、ストーリー的にもエグめのクライマックスが発生します。
この手法は後世に多大な影響を与えたようで、終末モノやゾンビ系作品なんかでも同じような演出(展開)を良く見かけるようになりました。
去年鑑賞した「デイライツ・エンド(2016)」という作品でも取り入れられてました。
本作のラストでは、主人公のエヴァが何故か他の生き残りを置き去りにし一人で地上へと出向く際、ミドルテンポでハードロックな感じの音楽が流れます。
ベースの輪郭がハッキリとした感じで、良い感じに絶望感が漂ってます。
こういうシーンで聴くベースは何故こんなにも絶望感が強いのでしょうか。
「重いクライマックス × ベース」の組み合わせは、マジで最高だと思います。
考察
考察①:弁護士の「サム」は、何故「エイドリアン」を撃ったのか
ミッキーが隠していた銃を、なんとかサムが確保します。
そして、敵であるジョシュとボビーに銃を向け、状況はどちらかと言えば主人公グループの方が優位でした。
ジョシュとボビーは、「俺を撃ってみろ」とサムを挑発し続けます。
サムはそれに動揺し、銃をジョシュとボビーに交互に向けます。
エヴァは、「ボビーに向けて!」と、何の意図なのか分かりませんがアドバイスします。
そしてエヴァは、「銃をエイドリアンに渡して!」と叫びます。
ここでサムは、若干「え?」という表情をします。
続けて、エイドリアンも何故か「銃を渡して」と言います。
ここでサムはカッとなり、本来同じ派閥であるはずのエイドリアンに向けて発砲します。
他のレビュー記事にて、「ここでよりによってサムがエイドリアンに誤射するから、展開が無理やりに感じた」と書かれていましたが、流れを見る限り、サムは明らかに意図的にエイドリアンを撃ってるように思います。
実際、エヴァはエイドリアンと恋愛的にくっ付きそうだったし、それに対してエヴァの恋人だったサムが嫉妬する場面もちゃんとありました。だからサムにとってエイドリアンはある程度憎かったはずです。
そしてサムが発砲する瞬間のこの表情。
明らかに意図的に狙って撃ってます。
サムの立場で考えると、エヴァとエイドリアンの言動は明らかな逆撫でです。
「こりゃエイドリアン撃たれるな」というフラグがビンビンに立っていたので、個人的には凄く納得できました。
考察②:最後、エヴァは何故一人で脱出したのか
本作の一般評価が低いのはとにかくこのラストのせいでしょう。
ラスト、焼身自殺したジョシュのせいでシェルターは火の海となります。
そこでエヴァは一人だけ防護服を着て、残ったミッキーとサムを閉じ込め脱出します。
何故エヴァはミッキーとサムを見殺しにしたのでしょうか。
サムの見殺しはまだ分かります。
直前でエイドリアンを殺したし、段々様子がおかしくなっていったので人間的に信頼できなくなったのでしょう。
しかしミッキーは、中盤まで様子がおかしかったものの、終盤ではちゃんとエヴァを助けてくれました。
「銃を隠している」「他に脱出できるところがある」という真実の情報を、まだ拘束されている段階でエヴァに教えました。
中盤ミッキーは、「食料を独り占めしていた」という事実により確かに他の全員と対立しますが、それも「信頼できる奴を見極めてその後に配給したかった」と言っており、これも真実っぽい気がします。
というわけで、ミッキーは明らかに良い奴です。
そんなミッキーを見殺しにしたという点で、エヴァはかなり罪な女です。
ここで作品に対して一気に距離が生まれるので、低評価に繋がるのも納得できます。
「エヴァが一人で脱出した理由」について、今の僕には「エヴァは唯一の防護服を独り占めしたかった」という結論しか出せません。
シェルターには防護服が一つしかなく、そして「外の世界が汚染されている」という推測により、脱出時に防護服の取り合いになる事が考えられます。
だから最後の最後に、若干ヒステリックな感じになったエヴァは「一人だけ抜け出す」という行動に出たのでしょう。
あと、肥溜めみたいなところに飛び込むのだから、一応防護服が欲しいという考えも地味にあった気がします。
評価・まとめ
80点
凄く好みの映画でした。
これ系の作品って、演出だけでも見る価値があるので意外と繰り返し見たくなったりするんですよね。
どうでもいいですが、僕にとってその筆頭がSAWシリーズです。
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