未知のウイルスにより崩壊した世界で、安息地を目指す4人の男女。
パンデミック系ホラーロードムービー「フェーズ6」を鑑賞しました。
いつも通りネタバレ無し情報を書いた後にネタバレしていきます。
まだ未鑑賞で、「とりあえず面白いかどうかだけ知りたい」という方は、「※ここからネタバレを含みます。」という
文章の直前までを目安にご覧ください。
目次
予告編(トレイラー)
作品情報
公開年 | 2009年 |
---|---|
原題 | Carriers |
上映時間 | 85分 |
製作国 | アメリカ |
監督 | アレックス・パストー、デビッド・パストー |
脚本 | アレックス・パストー |
ジャンル | ホラー,パンデミック,ロードムービー |
主要キャスト |
ルー・テイラー・プッチ(ダニー・グリーン) クリス・パイン(ブライアン・グリーン) パイパー・ペラーボ(ボビー) エミリー・バンキャンプ(ケイト) |
配信サイト・媒体 |
市販DVD Netflix…他 ※記事公開時の情報です |
あらすじ・みどころ
治療薬のない致死率100%のウィルスが世界中に蔓延し、ごく僅かに生き残った人間はゴーストタウンと化した街に暮らしていた。お調子者の兄ブライアンと真面目な弟ダニーは、感染を免れている可能性のある海岸を目指し、ブライアンの彼女ボビーとダニーの友人ケイトを連れ、車で旅に出る。
魅力
①展開ひとつひとつがユニークで丁寧
②サイドストーリーも一々魅力的
③兄弟の愛情、亀裂の描き方が良い
気になる点
・兄弟のキャラ付けがしつこい(兄はバカ。弟は賢い。という設定を意識したセリフが何度も登場する)
・装備や行動、細かい所作から危機感が全く感じられない
【ネタバレ無し】感想
「空気感染の可能性がある」ということでキャストはほぼ全員マスクをしていますが、そのマスクが本当に簡易的なもので、また、ほとんど首からぶら下げてるだけなのでそれが凄く気になります。
他にも「ウイルスに対する危機感の無さ」が感じられる行動が多々あり、中々緊迫感が感じられません。
しかし仲間同士や、遭遇する人物たちとの摩擦などは自然で見ごたえがあり、心理描写・人間模様に重きを置いている筆者にはかなりグッと来るものがありました。
「世界崩壊後あるある」というか、時折解放感のあるシーンも混ぜ込んでいるので、緊張と緩和があり和みます。
出会う人々が魅力的なのも良いですね。
こういう移動要素があるロードムービーは、個所箇所で出会う敵・味方ともに魅力があれば、それだけで評価が上がります。
※ここからネタバレを含みます。
主要登場人物(キャスト)
※()内が役者名
●ダニー・グリーン(ルー・テイラー・プッチ)
主人公兄弟の弟。
頭が良いという設定。
●ブライアン・グリーン(クリス・パイン)
主人公兄弟の兄。
弟に比べ頭が悪いが、腕っぷしはある。
●ボビー(パイパー・ペラーボ)
ダニーの彼女。
子供好きで自分の子供を欲しがっている。
途中で感染してしまうが、仲間に隠してしまう。
●ケイト(エミリー・バンキャンプ)
ダニーの友達。
あまり気分が乗らないアクションをことあるごとにダニーに押し付けるので、結構性格が悪く見える。
【ネタバレ有り】感想
ある親子との遭遇
そこに居たのは一組の父娘。
ブライアン達は彼らの元を通り過ぎようとしますが、父がレンチで窓に殴り掛かり、また停車してる車を避けるために舗装されてない道路を走ったことから、しばらくして車が故障します。
仕方なく徒歩で引き返す4人。
ここから、利害が一致した4人と父娘のドライブが始まります。
目的地はとある小学校。
そこではウイルスの研究が進んでおり、新薬が開発されたという噂が。
4人は父娘をそこまで連れていくという約束をします。
物語の導入イベントでしたが、すごく丁寧に作りこまれており、本作の世界観が一気に分かりました。
また、こういう崩壊した世界じゃないと遭遇しなかったであろう「若者」と「親子」の不協和音も気持ちが良い。
凄くワクワクする導入部分でした。
弟「ダニー」を頭脳派に仕立てあげようとしてる感がダサイ
父娘が持ってる車が欲しい。
彼らは「自分たちも載せてくれるなら車をやる」と言っている。
でも彼らと同行すると感染のリスクを伴う。
という状況下で4人が迷っていると、ダニーが「良い考えがある」と言い、直後に場面転換が入ります。
ダニーは冒頭で「頭が良い」と言われてたキャラなので、彼の「アイディアがある」発言後の場面転換は多少ユニークであるべきです。
しかし、彼らが取った行動は「ビニールとダクトテープで後部座席を隔離する」というもの。
斬新でもなんでもなく、誰でも思いつきそうなもの。
一応ダニーはこの後もしゃしゃり出るシーンがありますが、結構アホっぽいというか、頭脳において凡人離れはしてない感じです。
小学校に着いた一行を待っていたものとは・・・
その風景を見て期待するお父さん。
しかし医者は新薬の開発に失敗したことを告げ、今からカリウム入りドリンクで集団自殺を行うことを告げる。
それを聞き絶望するパパ。
一方車の中で待機していた「ボビー」と「娘」は楽しそうに談笑。
しかし娘が苦しそうにもがきだしたので、ボビーはついビニールを外し、そのまま近づいてしまう。
その瞬間娘がせき込み、ボビーは被血してしまう。
ここでボビーは感染を確信するも、ブライアン達が戻ってくる前に状況を戻し、何事もなかったような素振りをする。
そして4人は、親子がトイレに行ってる隙にこっそり車を走らせる。
親子との一件はここで解決し、世界がどれだけ絶望的な状況なのかもここで理解しました。
新薬など無いのです。
また、ブライアンにあれだけ釘を刺されたにも関わらず娘に近づいたボビーは、案の定感染。
そしてそれを隠すという過ちを犯します。
一見すると「ふざけるな」と言いたくなる展開ですが、ボビーの気持ちも分からんでもない・・・。
しかもブライアンが終盤で「ボビーは子供を欲しがっていた」と語るシーンがあるので、娘を助けたがる心理も分かりました。
本作はこのあたりの心理描写に抜かりがないので、見ていて凄く気持ちよかった。
敵対派閥の登場
そこでゴルフを楽しみ、そして夜を過ごします。
しかしそこへ完全武装した集団が―。
彼らに拉致られるブライアン達。
どうやら彼らもただの生き残りらしく、全身を防護スーツで守ることで感染を防いでいた様子。
彼らはブライアン達に退くよう促すが、女だけは置いていけと命令。
倫理的に賛否両論な発言により、彼らの中での仲間割れがありつつ、感染確認のため、女性メンバーに服を脱がせます。
するとボビーの体にアザが―。やはり感染していました。
全員パニックになり、敵対組織はブライアン達を全員返します。
ブライアンはボビーの様子にショックを受けながらも、また車を走らせます。
ここで登場した敵対組織は、ユニークでちゃんと惹きつけられました。
でも、特に思想みたいなものは無かったようですね。
例えば「28日後(2003)」に登場した軍隊は、「男だけで生き残っても未来は無い」という理由で女性を狙います。
しかし本作の敵対組織は欲望のままに女性を狙います。
かと言って「無法者」という程荒れていないので、凄く丁度良いバランスの組織だったと思います。
この手の作品では逆に新しい気もする。
葛藤と愛情。終盤は精神を揺さぶる展開の連続
・ボビーを置き去りにする
・ボビーを通して感染したブライアンを殺害
筆者は、終盤でやっと「ブライアンは優れたリーダーだった」と気付きました。
つらい決断、汚れ仕事は弟のダニーにはさせず、すべて自分で受け持つ。
例えばボビーを置き去りにした時も、全て自分で行動し、ダニーは車に座っていただけ。
父娘を置き去りにした時も、決断したのはブライアン。
「頭が良い」という設定ながらもどこかで甘いダニーと、しっかり現実的に物事を考えるブライアンの対比。
そして感染中期にも関わらず「俺も連れていけ」と悲願し、ダニーに撃たれるブライアン。
二人の心理描写には泣かされました。
この兄弟の関係性の描き方は凄くよかった。(特に二人が感情の赴くままに取っ組み合いになった後、ブライアンがふらついて、それをダニーが優しくサポートするシーン)
考察
考察①:ブライアンはダニーにわざと自分を撃たせた?
「考察」と題して書くことでもないですが、ブライアンはわざとダニーに歯向かい、そして引き金を引かせました。
ダニーは「僕に殺させないでくれ」と言ってましたが、ブライアンは苦しみを味わいながら生きたくないようです。
だからダニーを挑発したのでしょう。
そしてここでブライアンが「俺を殺してくれ」と言わなかったのが凄く泣ける・・・。
ブライアンは最後までブライアンでした。
泣きながら「俺を撃ってくれ」という展開でも良かったかもしれませんが、それだとダニーに罪悪感が残ります。
だから歯向かう形でダニーに引き金を引かせたのではと推測します・・・。
とは言え、ダニーもすべて理解していたでしょう。
ただ、なんとも熱いシーンだっただけに、直前で「さぁ。お前が解決しろ」と言わんばかりにダニーに銃を渡す「ケイト」に激しい違和感を感じました。
人任せ感が半端じゃなかったけど、「兄弟で解決させた方が良い」という配慮だったのかも。
【感想】「フェーズ6」の魅力3個。パンデミック後の世界でサバイバル:評価・まとめ
75点
パンデミックものの中では凄く好きな作品です。
なぜか繰り返し見たくなる。