当記事は途中からネタバレを含みます。
本映画はネタバレ無しで観た方が絶対に面白いので、未見の方は「ここからネタバレします。」
という表記の後は閲覧されないようお気を付けください。
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目次
作品情報
公開年 | 2016年 |
---|---|
原題 | The Good Neighbor |
上映時間 | 98分 |
製作国 | アメリカ |
監督 | カスラ・ファラハニ |
脚本 | ジェフ・リチャード、マーク・ビアンカリ |
ジャンル | サスペンス |
主要キャスト |
ジェームズ・カーン ローガン・ミラー キーア・ギルクリスト ローラ・イネス |
配信サイト・媒体 |
市販DVD Netflix…他 ※記事公開時の情報です |
あらすじ
「心霊現象に遭遇した場合の人の行動の観察」
という名目で、隣人の家に隠しカメラや盗聴器を仕掛ける二人の少年。
約6週間彼にドッキリを仕掛けつつ観察するが、隣人の異常とも思える行動に、二人の少年も徐々にエスカレートしていく。
【ネタバレ無し】簡単な感想
まず、観ても損はしないタイプの作品です。
いかにもB級なテーマですが、ゴミホラー映画特有の「登場人物のアホ行動」とか、「ツッコミどころ」等は無く、その辺りの構成に拒否反応を起こす人でも安心して鑑賞できます。
だからまず、「サスペンス(ホラー)としての及第点」は超えています。
安心してご覧ください。
また、主人公の少年二人、「イーサン」と「ショーン」ですが、「ショーン」がIT系の秀才という設定で、小気味良い理系・工学的知識が随所に挟まれるので、そういう理系ネタが好きな人にもおすすめです。
「乾電池から取れるアルカリ溶剤を使ってガラスを割る」
「アルバート坊やの実験」
など。
やっぱり映画というのは、そういう「日常では使わないギミック・アイディア」が盛り込まれることで評価点が上がりますね。
【ネタバレなし】評価
75点
主人公二人の演技力がとても良いと感じました。
10代の少年らしい馬鹿っぷりはもちろんですが、シリアスな表情、目配せなども本当に上手く、「この二人は最低な奴らだけど、生き残って欲しい」と心から思える絶妙な表情でした。
それを裏切るようなラストもポイント高いですね。
脚本もしっかり計算されているので、最後まで飽きずに安心して鑑賞できます。
では、次からネタバレします。
グッドネイバーの感想:演出
一応「POV」的な演出が多数ありますが、最初から最後まで全てPOVではなく、回想シーンや法廷シーンなど、ところどころ普通のカットもあり飽きさせません。
法廷シーンでの画質が地味に良いのも嬉しいですね。
グッドネイバーの感想:構成
グッドネイバーは脚本が素晴らしいです。
本作はイーサン達が撮影した記録映像と、最新の時間軸である法廷が入り混じって構成されています。
法廷シーンは結構序盤から出てきますが、「血が飛び散った床の写真」や、その他証拠品などが先に公表されることで、「この実験は終盤で何かある」と思わせることに成功しています。
おかげで鑑賞者は序盤から不安になれます。(良い意味で)
また、法廷シーンで語られる「イーサンの心理描写」や、「母親のタンスの中身」なども地味に伏線となっている為、ラストに向けてどんどんカタルシスが増していきます。
法廷シーンで登場しない人物については、「その人が生存してるかどうかが分からない」という演出も伴っています。
製作陣は明らかにそれを意識しています。
その為、イーサンとショーンは最後の最後まで法廷シーンで登場しませんでした。
先にショーンが登場しましたが、その時には少し衝撃を受けました。
「あ、ショーンは死なないんだ!」という安心感と共に、「イーサンがまだ出てこない」という不安に駆られました。
しかも実験映像では、イーサンはグレイニーの家に侵入するというクライマックスモード・・・。
もはやイーサンは殺されてしまうのでは・・・
という憶測を鑑賞者に立たせました。
このように、本作は鑑賞者に想像する幅を与えつつ、見事にそれらを裏切ります。
完璧な構成だと思います。
グッドネイバーの感想:演技
グッドネイバーの登場人物は主に3人です。
イーサン:
まだ子供の頃、父親がDVを振るい母親がグレイニーの家へ逃げ込む。
そしてグレイニーの証言により父親が留置所へ送られたという過去があり、それでグレイニーを恨んでいる。
Youtuberとして売れたがっている。
ショーン:
IT系に強く頭が良い。
父親が本実験の資金を提供してくれた。
グレイニー:
イーサン家の隣に住む孤独な老人。
今回の実験対象。
この3人を軸に物語が進みますが、3人とも演技が良い。
少年二人の演技力は既に語りましたが、グレイニーの演技力も素晴らしいです。
貫禄があり、特に終盤の「本当は良い人だ」というネタ晴らし時の表情は本当に目頭が熱くなります。
グッドネイバーの感想:現実世界へのメッセージ
「Youtuberよ。ハメを外し過ぎてショーンのようになるな。」
というメッセージがラストに込められています。
それだけでなく、「近所の老人を見捨てるな。」というメッセージもあるように感じます。
どこの地域にもいると思います。
「いつも一人で近所の住民から煙たがられている老人」
彼らは最初からただ単に気難しい人間だったのでしょうか。
もしかしたら本当は素晴らしい人格者なのかもしれません。
作中でこういうセリフがありました。
「グレイニーには12年間孤独な期間があった」
妻の死後、グレイニーを孤独から解放するために施設に送ってあげようとした知人がいますが、「妻がいたこの家に居続ける」というグレイニーの意志は固いものでした。
グレイニーの家に何か封筒を持ってきたおばちゃんがいましたが、グレイニーは非常に冷たくあしらいました。
「俺は施設なんかに行かない」という意思表示です。
庭に踏み込んだ犬の散歩中の住民に冷たかった理由は分かりませんが、ただ人付き合いをしたくなかったのかもしれません。
しかし、警官には優しく対応していました。
警官が来るとグレイニーは、
「寝ていたところでした」
など、少し面倒そうにあしらいますが、それでも対応自体は良識のある大人という感じでした。
今にして思えばこれは、「グレイニーは悪い人ではない」ということを伝えていたのかもしれません。
ネタバレ考察
グッドネイバーはいわゆる「ドンデン返し」系の作品です。
それもエンディングで一度ドンデン返しがあるだけで、そこ以外は特にストーリーに起伏はありません。
序盤から終盤にかけて、鑑賞者に「ミスリード」を誘うイベントが盛り込まれているので、そこを考察していきます。
考察①:ドアの開閉
イーサンとショーンは、ポルターガイストを演出するためにドアに仕掛けを打ちました。
スイッチで勝手口のドアが勝手に開閉する仕掛けです。
それもただの開閉ではなく、かなり力のある動きをします。
イーサン達は何度かそれを繰り返しグレイニーの動向を観察していました。
するとグレイニーは、そのドアを斧で破壊しだしたのです。
この寄行にはイーサン達も唖然。
「グレイニーは絶対にヤバイ」とたじろぎます。
グレイニーが何故ドアを破壊したのか分かりませんが、実はそれは「病死した妻」との思い出があるドアでした。
まだ妻が健康だった頃の回想で、「勝手口のドアが壊れているわ。閉まらないの。グレイニー修理しておいて」というやり取りがありました。
しかしその時のグレイニーは廃人のようになっていました。
恐らくですが、「妻の検査結果が陽性で、本人はまだしっかり理解しておらず、グレイニーだけが絶望に打ちひしがれていた」という状況だったと思います。
その後もちょくちょく回想シーンを挟みますが、修理されたドアを確認して妻が喜ぶシーンがあります。
グレイニーはドアを修理したようです。
今回のポルターガイストを通してグレイニーは、「妻が何かメッセージを伝えたがっている」と感じたのでしょう。
もしかしたらそれを考えるのが嫌で、一時的に感情的になってしまいドアを壊してしまったのかもしれません。
この行動についてイーサンは「シャイニングみたいだった」と言っていましたが、正にその通りで、鑑賞者に”これはホラー映画だ”と思わせる絶妙なミスリードとなっていました。
考察②「地下室から女性の悲鳴が聞こえた」
イーサンのいたずら通報により警官がグレイニーの家に駆け付けます。
「お宅の地下室から女性の悲鳴が聞こえたと通報がありました。拝見しても?」
グレイニーは渋々了承し、警官が地下室を調べ、何もないことが分かりました。
実際には医療器具や夫婦写真、思い出の品などが保管されており、警官がそれを確認する描写はありましたから、警官はそこで”地下室に何があるか”は理解していたと予想できます。
だからこそ警官はあんなに神妙な面持ちだったのでしょう。
そして警官が異常無しを確認し地下室から退出すると、グレイニーはこう言います。
「本当に”女性の声”だったのか?」
これは伏線です。
初見時は、「グレイニーはいたずら通報の可能性を確認している」と思いましたが、ラストまで鑑賞した後に考えると、”病死した妻の声”とグレイニーは考えた事が解ります。
考察③自殺の引き金となった「ベル」
夜中にイーサンがグレイニーの家に侵入後、たまたま鍵が開いていたので地下室に入りました。
そこには医療器具や写真、ベルがあったのみで他に何もありません。
そしてイーサンがその中からよりによって「ベル」を手にします。
慌てて金属部分を手で覆い音を抑えたのですが、一瞬鳴ってしまったせいでグレイニーが目を覚まします。
イーサンはベルを持ったまま地上へ上がり、ベルを元々とは違うテーブルに置き、そして隠れました。
(説明しておくと、実験の最終段階で”家の物を別の場所に移動する”というフェーズがあったらしく、イーサンはついでにそれもこなそうとしたのでしょう)
銃を持ったグレイニーは、ベルの存在に気付きました。
地下にあるはずのベルが何故かリビングのテーブルの上に置いてあります。
グレイニーはしばらくそのベルを見つめ、決心した後、銃を自分のこめかみに向け発砲。
自殺を図りました。
若干のミスリードですが、グレイニーが銃を持って登場したのは、
「侵入者の気配がして警戒しているから」だと鑑賞者に思わせました。
また、終盤で銃を持ち出すことで「この映画がクライマックスに向かっている」と理解できます。
イーサンも銃を持ち出していた為、”なんらかのイベントが起きる”と鑑賞者にドキドキを与えました。
しかしイーサンとグレイニーの摩擦は起きず、グレイニーは自殺しました。
「ドアのドタバタ」
「地下室からの妻の声」
「ベルが分かりやすいところに移動している」
これらの違和感を「妻が自分を呼んでいる」と仮定するとつじつまが合いますから、それでグレイニーは自殺したのでしょう。
考察④有名になれたことで満足そうなイーサン
この映画はバッドエンドです。
本当は良い人である隣人を悪人に仕立て上げ、実験と称したドッキリで命を奪ったイーサンとショーンには、極刑を与えられてもおかしくありません。
しかし、未成年ということ、初犯であることを考慮し、裁判官は二人に軽罪を与えました。
裁判中の二人はとても参っている表情でした。
そして退廷後、彼らは取材陣が押し寄せる空間を通り抜ける必要がありました。
シリアスな曲が流れ、スローなカメラワークで重厚感のある演出があり、ショーンは明らかに暗い顔で取材陣を掻き分けます。
この映画のラストカットは「イーサンの顔」でした。
イーサンも法廷のシーンから常に暗いシリアスな表情でしたが、最後の最後、取材陣から大量のカメラを向けられインタビューを求められているその瞬間、本当に僅かながら口角を上げます。
そしてエンドロールへ・・・。
イーサンは何故最後に笑ったのでしょうか。
イーサンは「動画再生数アップ」へのこだわりがありました。
「動画再生数が100万回を超えたら他に何もいらない」という発言もありました。
どの動画サイトなのかは描写がなく分かりませんが、「Youtube」であることは間違いないでしょう。
そしてイーサンは再生回数アップに囚われるあまり、犯罪者という形で有名になってしまっても嬉しかったのです。
これは製作陣からの、現代社会、特にYoutuberへの一つのメッセージでしょう。
Youtuberは時折ハメを外して世間に迷惑をかけています。
今回は一人の善良な隣人を自殺に追い込みました。
もちろんイーサン達はわざとではありません。
実際に犯罪を犯すYoutuber達も、最初はわざとでは無いケースがほとんどでしょう。
しかし再生回数に固執するあまり、段々エスカレートしてしまうのです。
そして問題を起こして初めて「馬鹿なことをしていた」と気付くのです。
今にして思えば、10代の頃の悪さなんてそんな感じです。
最初は本当に些細なことだけれど、それが徐々にエスカレートしてしまい、最終的に問題になるまで僕たちはそれを辞めません。
本作は、そういう踏み外す10代、その中でも「Youtuber」に向けた注意喚起も含んでいます。
※Good neighbor:直訳すると良い隣人。タイトルも伏線です。





