全人類にトラウマを与えた映画「ミスト」のラストについて考察します。
※当記事は、ミストについて完全にネタバレしています。
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目次
作品情報
公開年 | 2007年 |
---|---|
原題 | The Mist |
上映時間 | 125分 |
製作国 | アメリカ |
監督 | フランク・ダラボン |
脚本 | フランク・ダラボン(原作:スティーブンキング) |
ジャンル | ホラー、サスペンス |
主要キャスト |
トーマス・ジェーン(デヴィッド・ドレイトン) マーシャ・ゲイ・ハーデン(ミセス・カーモディ) ローリー・ホールデン(アマンダ・ダンフリー) アンドレ・ブラウアー(ブレント・ノートン) トビー・ジョーンズ(オリー・ウィークス) |
配信サイト・媒体 |
市販DVD Netflix…他 ※記事公開時の情報です |
映画版「ミストのラスト」をおさらい
不協和音織りなす「スーパー」から脱出したデヴィッド(主人公)、ビリー(デヴィッドの息子)、アマンダ(女教師)、ダン(老人)、アイリーン(老婦人)の5人。
彼らに目的地など無く、「ガソリンの続く限り車を走らせ、霧を抜けられたらラッキー」という程度の目標でした。
しかし残念なことに、霧を抜けるよりも先にガス欠してしまいました。
しかも道中で様々なクリーチャーと遭遇したし、ガス欠直後、クリーチャーの鳴き声が四方八方から聞こえてくるという状況。
ポケットには「4発の弾丸」があります。
更に、中盤にて息子ビリーと「パパ、僕を絶対にモンスターに殺させないで」という約束をしています。
この息子との約束と、4人の大人たちのあきらめた表情を観て、我々鑑賞者は察します。
直後、カメラは驚いたビリーの表情を映します。
そして引きの画面になり、4発の銃声が聞こえ、銃声の度に車の中の人影が一人ずつうなだれていきます。
5人に対し銃声は4発。
この絶望的な状況で自殺できなかったのは、主人公のデヴィッドです。
彼は情けない雄叫びをあげます。
そしてハンドルに感情をぶつけたり、弾切れのリボルバーの銃口を自分の口へ入れ込み、引き金を引きます。
しばらくしてデヴィッドは車から降り、「さぁ来い!」とクリーチャーを挑発します。
すると遠くから轟音が—。
めちゃくちゃ巨大なクリーチャーが来そうな気配でしたが、そこに現れたのは戦車でした。
そして戦車に続くように、生存者を載せたジープが続きます。
その中には「最序盤で決裂した女性」も乗車しており、ここで「主人公が手を貸さなかった人」が生存していたという事も明らかとなりました。
そして状況を飲み込み、その場で泣きながら跪く(ひざまずく)デヴィッド。
そこに警戒しながら近付く兵士。
そのままエンドロールに突入。
エンドロールに突入後、しばらく音楽が流れた後、ヘリや戦車の音が続いていました。
この人工的な音がなお一層、悲壮感を漂わせていました。
「何が絶望的だったのか?」をおさらい
分かり切っていることですが、あえておさらいします。
まず、主要登場人物が最後の最後で自殺するという点が最悪です。
しかし、誰が見ても「どうしょうもない」というあの状況では、「自殺するしかないか」と思えるので、デヴィッド達の行動は納得できます。
鑑賞者(とデヴィッドたち)に「どうしょうも無い」と思わせるため、今までに未登場だった恐竜級サイズのモンスターや、バスの中で干からびた大量の死体等もしっかり描かれています。
だから最後、デヴィッドがリボルバーの残弾数を数えだした時、僕は「仕方がない」と心から思えました。
しかし、ここはまだ絶望的ではありません。
自分以外を「任意他殺」できたデヴィッド。
後は自分がクリーチャーに襲われて死ぬだけという状況で、目の前に現れたのはなんと「救出部隊」です。
デヴィッドたちは、寄りによって救助隊の数キロ先を走り続けていたのです。
なんでしょうか。
この気持ちはなんと形容すればいいのでしょうか。
「絶望」という言葉すら軽い。
そんな状況です。
軍隊がもう少し早くここへ来てくれれば。
自分たちが脱出行動を取らなければ。
自殺を後5分思い留めていれば。
どれか一つでも別の行動をしていれば、最悪の最悪は避けられていました。
こんな絶望の中、デヴィッドは死ねずにいます。
このラストは、「後味が悪い」とか「絶望的」とか「衝撃的」とか、そういう言葉では言い表せません。
「後味が悪い」という言葉すら軽いです。
今のところ、ミストのラストに当てはある言葉が見つからないのですが、もし無理に当てるとしたら、それは「地獄」では無いでしょうか。
そして、もしデヴィッドのその後を想像するとしたら、きっと彼は自殺するでしょう。
もし生きるとしても、なんらかの精神病を患うことが予想できます。
一般的な「トラウマ系ラスト」と何が違うのか
ミストのラストはかなり衝撃的で、個人的には「あらゆる映画の中で最高」だと思っています。
少なくとも「トラウマ系ラスト」と呼ばれる映画の中では群を抜いて1位です。
なぜミストのラストはこんなにもクオリティーが高いのでしょうか?
今まで僕が見てきた「トラウマ系ラスト」は、せいぜい人為的なものです。
例えば、
・あの時に食べた肉は、実は敵が仕込んだ”実の妹の肉”だった
・やっと犯人を追い詰めたのに、犯人が指定する箱を開いたらそこには妻の死体(頭部)が入っていた
などです。
これらは確かに精神的にきつい描写ではありますが、「誰かが仕込んだこと」であるため、誰かから見れば目的を達成したことになります。
しかしミストの場合は、全てがナチュラルに流れ、そのうえで究極の理不尽を強いられました。
デヴィッド達がスーパーを抜け出したのは、ごく自然なことでした。
カーモディが支配したスーパーは危険で、誰が見ても「早くここを抜け出すべきだ」と思えます。
そして道中にて、いろんなクリーチャー、死体と出会い、「霧から抜け出さないと命は無い」と思えました。
よって、ガス欠してしまった以上、「自殺」という選択肢を取るのは仕方がないと、本気で思えました。
ある意味ではこの時点で「トラウマ系ラスト」です。
しかしミストはまだ続きがあり、最後に現れたのは「救助隊」で、「ラストに救助隊が登場する」というのは、むしろ「ハッピーエンド」的展開です。
なのにミストはその理不尽さのせいで、映画史上類を見ない程の「究極のバッドエンド」となりました。
誰が見ても「最善」と思える行動を取り続けたデヴィッド。
ここに、トラウマ系サスペンスにありがちな「黒幕の狙い」等は存在しません。
この「人為的な操作の無さ」が、ミストのラストを、より完璧なものにしていると僕は考えています。
そもそも本筋が面白いのが良かった
ミストは、まず「主人公たちに感情移入できる」という最低限の条件をクリアしています。
デヴィッドは男らしくてかっこいいし、行動も正義感溢れていました。
そして最後に構成される「疑似家族」も魅力的で、「彼らには生き残ってほしい」と思わせられました。
更に、本筋の「スーパーでの人間模様」もとても面白いものでした。
そんなわけで、本筋のクオリティーが高く、そして主人公グループが魅力的だった事も「ラストの衝撃」に繋がったと思ってます。
映画「ミスト」のラストが衝撃的で最高な理由:まとめ
ミストは、僕にとって「繰り返し見たくなる作品」のひとつです。
DVD版で何度も観たし、Netflixで配信が開始されてからもまた観ました。
ミストはラストの評判ばかりが独り歩きしていますが、実は「人間模様」の描き方も最高に面白いです。
特に脇役たちの「哲学の変化」がそこかしこに散りばめられているので、その辺りを考察するのもまた一興です。
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