アメリカ、日本でもスマッシュヒットしたシチュエーションスリラー「ドントブリーズ」を鑑賞しました。
いつも通りネタバレ無し情報を書いた後にネタバレしていきます。
まだ未鑑賞で、「とりあえず面白いかどうかだけ知りたい」という方は、「※次項からネタバレを含みます。」という文章の直前までを目安にご覧ください。
本作は「Amazonプライムビデオ(199円)」で鑑賞しました↓
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目次
予告編(トレイラー)
作品情報
公開年 | 2016年 |
---|---|
原題 | Don’t Breathe(訳:呼吸をするな) |
上映時間 | 88分 |
製作国 | アメリカ |
監督 | フェデ・アルバレス |
脚本 | フェデ・アルバレス、Rodo Sayagues |
ジャンル | ホラー、シチュエーションスリラー |
主要キャスト |
ジェーン・レビ(ロッキー) ディラン・ミネット(アレックス) ダニエル・ゾバット(マニー) スティーブン・ラング(盲目の退役軍人) |
配信サイト・媒体 |
市販DVD Amazonプライムビデオ U-NEXT…他 ※記事公開時の情報です |
あらすじ
強盗を企てた若者3人が、裕福な盲目の退役軍人の家に押し入ったことから、思いがけない恐怖に陥る様を描く。
日夜強盗を働く3人の若者たち。
その中の一人「アレックス」は「セキュリティ会社社員の息子」で、そのセキュリティ会社と契約している者の家をターゲットにしていました。
そしてチームの一人「マニー」が、情報屋から「示談金で大金を隠し持ってる老人」の情報を仕入れます。
しかもその老人も、アレックス父が務めるセキュリティ会社と契約しているため、アレックスが家の解除コードを持っています。
というわけで3人は、その老人の家へ強盗へ入ることを決めたのでした。
登場人物紹介
劣悪な家庭環境で育っており、まだ幼い妹と一緒に家を出たがっている。
その為大金が欲しく、それが盲目老人宅への強盗の動機。
彼がいなければ強盗は成立しない。
というのも、毎回ターゲットにしているのは、アレックス父のセキュリティ会社の顧客。
アレックスは、父親のデスクから「セキュリティコード解除装置」を持ち出して、顧客宅のロックを解除して進入している。
ことあるごとに癇癪(かんしゃく)を起こす短気なヤツ。
ロッキーと付き合っている。
イラクの戦争にて、手りゅう弾の破片のせいで失明した元軍人。
どうやら名前の描写は無かった。
【ネタバレ無し】感想
いやマジでもうめちゃくちゃ面白かった。
本作はホラー映画として、脚本と演出がとても優れていました。
脚本は全てが自然で、盛り上がる展開を可能な限り盛り込み、それでいてぶっ飛び設定の無い超自然的な流れを保っていました。
いわゆる「突っ込みどころが無い」作品です。
この手のホラー映画は、殺人鬼にとって有利な状況を運ぶために「登場人物にわざと転ばせる」とか「意味不明でアホな行動を取る」とかそういう展開が多いですが、本作はそういうのが一切無い。
だから、イラつくことなく最後まで怯えながら鑑賞できます。
また、「登場人物のIQが高い」というところも好印象でした。
やっぱりこの手のホラー映画は、ただ単にバッサバッサと人が死ぬのではなく、「その場にあるギミックを駆使して相手と戦う」というせめぎ合いが楽しいところです。
本作は「天才軍人 vs 少し手練れた強盗」という構図で、軍人は地の利を生かし強盗を圧倒していきますが、3人の若者達も必死で生き延びようとします。
基本的には「軍人有利」でありそこが恐怖のポイントですが、彼らの戦いっぷりは本当に素晴らしいものでした。
※次項からネタバレを含みます。
【ネタバレ有り】感想
良い点:目が見えないことを活かし切っていた
以前、「サイレンス(2016)」という、「主人公が聴覚障碍者」のホラー映画を観ました。
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※関連記事は最後にまとめて紹介しますサイレンスはドントブリーズとは違い「主人公が障害を持っている」という設定なので、最初から最後までかなり不利な状況でしたが、聴覚障害という特性をフルに生かした良作でした。
対して「ドントブリーズ」は、敵が視覚障碍者です。
一見、主人公側が圧倒的に有利ではありますが、「盲目特有の恐怖」を余すことなく存分に活かし切っています。
特に「消灯後の地下室の攻防」は本当に恐ろしく、こちらも息苦しくなる程でした。
良い点:キャラ設定が良い
まず、敵である「退役軍人」の設定ですが、ただの軍人ではなく、中々のサイコパス設定です。
失明し、更に交通事故で娘を失ったという可哀そうな老人ですが、実は娘をひき殺した犯人を地下室で監禁、しかも妊娠させていました。
彼の目的は「自分の娘をもう一度作る」ということです。
当然ですが、退役軍人にこのサイコ設定が与えられたおかげで、我々はロッキー達をより一層応援したくなります。
またロッキーも単なる強盗ではなく、複雑な家庭環境を事前に描写しておくことで、我々は彼女に対し「なんとか大金を手に入れてほしい」と心のどこかで応援したくなります。
もちろん犯罪に手を染める人は皆、大抵そういう事情があるのでしょうが、こういうバックボーンまでしっかりと描いているところに好感が持てます。
良い点:演出が親切で分かりやすい。引きこまれる
序盤、軍人宅への進入に成功したロッキー達は、まず家の中を物色します。
その際、「健常者の家には無いであろうギミック」を映していくのですが、ここで滑らかなカメラ回しが発動します。
カメラワークの話なので文章では説明しにくいですが、一見ノーカットで回しているような演出は、個人的には凄く引きこまれました。
まず、本作が「室内戦」に発展することは容易に想像できます。
だから、「その家の作りやギミック」を事前にウザイくらい観客に伝えておくことで、「どんな戦いを繰り広げられるのか」をある程度予測できます。
例えば「どこからともなくハサミを持ち出して急にそれで応戦する」という演出よりも、「事前に机の上にハサミがあることを鑑賞者に知らせておく」という伏線を張っていた方が、伏線回収のカタルシスが加えられ、より面白く感じます。
演出に関しては、「消灯した地下室」のシーンもめちゃくちゃ良かった。
老人が消灯した後、しばらくは「暗視スコープ」的な映像が続きます。
そして、我々が慣れ親しんでいる「暗視カメラ映像」と言えば、やはり「ホラードキュメンタリー」では無いでしょうか。
そう。消灯後のシーンは、いかにも「ドキュメンタリー」なんです。
だから、ドキュメンタリー特有の臨場感、緊迫感を感じられました。
(ドキュメンタリー風ホラーの「パラノーマルアクティビティ」や、POVの金字塔「RECシリーズ」っぽかった)
そしてそこから明かりの灯った地上に上がった時の安堵感も非常に心地良かったですね。
良い点:そこそこ爽快なラスト
長いこと陰湿な室内戦が繰り広げられたので、ラストの屋外シーンが非常に新鮮に感じられました。
ここに関しては「矯正施設からの脱出モノ」に近い爽快感がありましたね。
プリズンブレイクとか、ショーシャンクの空にとか、それに近い開放感です。
しかし、脱出ものの定番「脱出したと思ったら出来てなかった」というお約束みたいな展開もあり、そこでは思う存分絶望を味わえます。(ただし最後の最後はまぁまぁ気持ちよく終わる)
良い点:キャストとキャストの演技が良い
個人的に、まずアレックス役「ディラン・ミネット」が好きです。
彼はかなり有名なので至る映画で目にするのですが、僕が彼に興味を持ったのは「13の理由」というネトフリ独占ドラマからです。
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ディランは、シリアスで緊迫した演技が凄くハマる役者で、いかにもな「主役顔」です。
そしてロッキー役「ジェーン・レビ」が可愛い。
可愛いのに、しっかりと顔をくちゃくちゃにして怯えてくれるのが良いです。
邦画では、若い世代のこういう美人の顔をここまで崩すなんて、事務所が許しません。
しかもこんな美人に対し、冷凍保存していたアレをスポイトで注入しようとするのですから、この作品が邦画で実現できるはずが無いと分かります。
最後に、退役軍人役の「スティーブン・ラング」の恐ろしさがヤバい。
彼のキレッキレの動きから、サイコパスがにじみ出ています。
盲目の人をそこまで凝視したことが無いので、「盲目の人の演技」については良く分かりませんが、少なくとも彼は「モンスター」として最高の仕事をしていました。
考察
考察①「反転した娘の写真」の意味
この写真は、言わずもがな「軍人が盲目であること」を表していますが、他にも読み取れることがあります。
・写真が逆さまであることを指摘する人がいない。つまり、老人は一人きりで生活している
・写真自体は見えないけれど、娘が映っているものを飾っておきたいという「娘愛」
考察②老人に睡眠ガスが効かなかった理由は?
マニーがペットボトルを使ってガス(恐らく睡眠ガス)を生成していましたね。
そしてそれを老人が居た寝室に置いてきたので、老人はしばらくは眠り続けていると強盗達は思ったはずです。
しかし、マニーが地下室への鍵を開けた直後には、老人はもう彼らの前に立っていました。
「老人に睡眠ガスが効かなかった理由」については、まずマニーたちがガスの扱いに慣れてなかったことが推測できます。
睡眠ガスは素人には扱えるものでは無いので、彼らも「実験的に使ってみた」という程度だったのでは無いでしょうか。
もしくは「老人が特殊な訓練を受けていた可能性」も否めません。
老人は嗅覚が優れている設定なので、睡眠ガスの微量な匂いを嗅ぎ、その時点で危険を察知し呼吸を浅くしていたのかもしれません。
後は「銃声で目が覚めた」というシンプルな理由も考えられますね。
考察③老人は最初「監禁してる女がバレた」と思った
映画を終盤まで観た人は分かると思いますが、老人は一人の女性を監禁していました。
ロッキー達はそんな事は知らず、大金目当てで老人の家に忍び込みました。
そしてロッキー達は「大金は地下にある」と踏んで地下室のカギを壊しました。
しかし実際に地下に大金は無く、地下室の先には「監禁された少女」が居ます。
マニーが地下室のカギを壊した直後、老人は裸足で「壊れた鍵」を踏みます。
ここで老人は「監禁女の居場所がバレた」もしくは「バレる」と考え、荒行時に出たのかもしれません。
評価・まとめ
85点
傑作です。
結構な序盤から、見るのが嫌になるくらいの恐怖を感じました。
やっぱり僕は、こういうガチリアルホラーに最高の恐怖を感じます。
改めてドント・ブリーズは、脚本、演技、演出、音楽、どれを取っても高水準で、非常に満足度の高い作品でした。
本作は「Amazonプライムビデオ(199円)」で鑑賞しました↓
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