ISS(国際宇宙ステーション)を舞台とした、密室SFホラー作品「LIFE」を鑑賞しました。
いつも通りネタバレ無し情報を書いた後にネタバレしていきます。
まだ未鑑賞で、「とりあえず面白いかどうかだけ知りたい」という方は、「※次項からネタバレを含みます。」という文章の直前までを目安にご覧ください。
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予告編(トレイラー)
作品情報
公開年 | 2017年 |
---|---|
原題 | Life |
上映時間 | 104分 |
製作国 | アメリカ |
監督 | ダニエル・エスピノーサ |
脚本 | レット・リーズ、ポール・ワーニック |
ジャンル | 宇宙SF、スリラー |
主要キャスト |
ジェイク・ギレンホール(デビッド・ジョーダン) レベッカ・ファーガソン(ミランダ・ノース) ライアン・レイノルズ(ローリー・アダムス) 真田広之(ショウ・ムラカミ) アリヨン・バカレ(ヒュー・デリー) オルガ・ディホヴィチナヤ(エカテリーナ・“キャット”・ゴロフキナ) |
配信サイト・媒体 |
市販DVD Amazonプライムビデオ…他 ※記事公開時の情報です |
あらすじ
火星で未知の生命体の細胞が採取され、世界各国から集められた6人の宇宙飛行士が国際宇宙ステーションで極秘調査を開始した。しかし、生命体は次第に進化・成長して宇宙飛行士たちを襲いはじめる。
初期は細胞サイズだったカルビン(エイリアン)と6人の宇宙飛行士との闘い、サバイバルホラーです。
【ネタバレ無し】感想

宇宙SF好きの僕としては大満足の作品でした。
宇宙の静けさ、宇宙船内の無機質な美しさ、ギミックの活かし方など、あらゆる点で素晴らしかった。
別に本作に限るわけでは無いのですが、2010年代~の作品は、高精細で本当に美しいですね。
特にこういう宇宙モノでは、船内の無機質な感じなどで、高精細さが際立って感じられます。
ただ、思ってた以上に平凡な作品でした。
「微妙」とか「面白くない」というわけでは無いのですが、「当たりでは無い」と言った感じです。
似たような状況下での作品として、「サンシャイン2057」がありまして、こちらと比べると「重さ」がだいぶ違います。
サンシャインはちょっと哲学的な面もあったので、鑑賞後に深く刺さるものがありましたが、こちらは純粋な「ホラー」作品です。
「めちゃくちゃ怖い!」というわけでは無いですが、「科学者とエイリアンの死闘」は存分に楽しめました。
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※関連記事は最後にまとめて紹介します※次項からネタバレを含みます。
犠牲者
1人目:ローリー・アダムス


トレイラーにて「カルビンがヒューの手を折るシーン」を事前に観ていました。
しかしそれはほんの負傷シーンで、指を折られた「ヒュー・デリー」は、気を失うだけでここでは死にません。
気を失ったヒューを助けるためにラボに入ったローリーは、ヒューを助けた直後、カルビンに足に巻き付かれます。
そのせいで今度はローリーがラボに隔離されるハメに。
ローリーは「酸素キャンドル(後述)」でカルビンを焼こうとしますが、特にダメージは入りません。
続いてショウのアイディアで、焼却機を使い火炎放射しますが、これもほぼノーダメのようでした。
そうこうしていると、カルビンはローリーの体内へ入り込み、内側から殺しました。
2人目:キャット


船体機能の修理の為に船外活動に出向いたキャット。
すると、案の定カルビンに捕まります。
カルビンに巻き付かれたまま逃げようとしますが、宇宙服の冷却機能用の”冷却水タンク”が破壊されてしまいました。
その結果、宇宙服の中に冷却水が充満。
次第に溺死していく中、司令官のキャットはパニックに陥ります。
そしていよいよハッチに到着。
ハッチは内側と外側でそれぞれレバーを操作する必要があり、パニックに陥っているキャットに対し、デビッドは「レバーを時計回りに回せ」と指示します。
しかし、キャットは反時計回りにレバーを回します。
デビットは「落ち着け!そっちから見て時計回りだ!」と指示しますが、キャットは反時計回りに回し続けます。
キャットは、カルビンを中に入れないよう、自分の命を犠牲にしたのです。
しかし、その甲斐空しくカルビンはまた船内に戻ってきました。
3人目:ヒュー


キャットが死に、残り4人となり、彼らは「1か所に籠る」という行動に出ました。
カルビンは酸素が無いと生きていけないと分かっているため、自分たちのいる区画以外を封鎖し酸欠状態にし、殺す作戦です。
それぞれ手分けして密封作業に当たっていたのですが、どうやらその際に、カルビンはヒューの足に巻き付いていたようです。
ヒューは、地上では車いす生活だったという設定です。
なので、足に感覚が無かったのでしょう。
カルビンにより足を食べられ、そのせいで失血死か何かで死亡しました。
この死に方は、「足が動かない」という設定と「無重力」を活かした素晴らしいアイディアだと思います。
余談ですが、ここで残りの3人が「ビクッ!」となる演技も凄く良かった。
4人目:ショウ・ムラカミ


事態が「フェーズ3」に達したということで、ISS(国際宇宙ステーション)は追放されることが決まりました。
しかしこの事はミランダが極秘で依頼したことであり、他の乗組員は知らない事実です。
ミランダがこの話を打ち明けた時、ここにショウは居ませんでした。
だから、「ISSを地球から遠ざける為にやってきた宇宙船」がISSとドッキングを開始した時、ショウは「救助が来た」と勘違いしました。
連結の衝撃を感じたショウは、すぐさま脱出ハッチへ向かいます。
当然カルビンも追いかけます。
結果、追加でやってきた宇宙船の乗組員たちがまずカルビンに殺されました。
そしてその後、ミランダ達はショウを助けようとしましたが、ショウは残念ながら奴の餌食となってしまいました。
本編中にカルビンに殺戮されたのはこの4人です。
残りの2人については、後ほどの「考察」でお話します。
【ネタバレ有り】感想
良い点:希望的な序盤から一転し、一気にホラーになるのは良かった

序盤、「火星から入手した生命体」の存在に歓喜し、そいつの名前を公募。
結果として、子供たちから「カルビン」と命名されるなど、序盤は比較的希望に溢れていました。
しかしそのカルビンは、捕食を繰り返し巨大化します。
その造形は決しておぞましいものではなく、むしろ深海生物のような神秘さも兼ね備えていました。
ただ、最終的にはこういう造形になります。

良い点:演技が最高。かなり良かった
サイト側による批評家の見解の要約は「どこかの空間に閉じ込められるというシチュエーションを題材にした映画に新味を吹き込むには至っていない。しかし、『ライフ』はスリリングで、演技の質も高い。それは欠点を補うに足るものだ。」となっている
評論サイトの総評でも、演技についてべた褒めしています。
1人として外してる役者がおらず、表情からしっかりと緊迫感を感じ取ることが出来ました。
それに一人ひとりのキャラ設定も良かったですね。
みんな個性的なキャラクターで、登場人物の整理が容易にできました。
悪い点:リアルさの無いラスト
ミスリードを誘う演出で、最も最悪な状況を実現したラストです。
ラストについては後ほどの「考察」でしっかりまとめますが、「ミスリード」が個人的に不服でした。
映画なので、演出上で鑑賞者を騙すのは全然アリですが、本作の場合は、なんか急に「創作物としての面白さ」を最重要視した展開となり、一気に「創作物感」を感じてしまいました。
(もちろん、どの映画も面白さを最重要視してるのでしょうが)
また、最後、どこかの国の漁師が避難ポッドを開封するのですが、その際、のぞき窓から中の様子を確認していました。
中は、気色悪いエイリアンが張り付いており、その中でデビットが「開けるな!」と必死の形相で届かぬ叫びをしています。
それを見て「助けよう!」と思った漁師たちは、きっとよっぽどの馬鹿です。
ただ、デビッドは「80億の馬鹿がいるところに帰りたくない」と事前に言っており、「地球人は全員馬鹿」だという伏線を残しています。
もちろんこれは皮肉的な解釈ですが、ラストだけ「創作物っぽい」と特に感じられたので、ちょっと残念でした。
考察
考察①「酸素キャンドル」って何?

酸素キャンドルは現実でも実用化されているようです。
過塩素酸カリウム(KClO4)や過塩素酸リチウム(LiClO4)のカートリッジを加熱分解することにより酸素を製造します。これは”キャンドル(ろうそく)”と呼ばれています。
引用:ここにサイト名
現実世界のもので既に、1人の人間が一日呼吸をする程度の酸素量(600リットル)を1カートリッジで確保できるそう。
かなりの優れものですね。
また、化学反応で加熱もされるそうなので、ローリーがキャンドルでカルビンを焼いていたのは、かなり現実的な対策だと言えます。
きっと本作には、ちゃんとした宇宙学者が化学監修に付いているのでしょう。
これは余談ですが、旅客機に搭載されている酸素マスクも同じ原理だそうです。
考察②カルビンがキャットの冷却機能を破壊した理由
船外活動中のキャットは、カルビンに巻き付かれ、最終的には冷却水で溺死しました。
初見では、「カルビンに圧迫され、その結果冷却水タンクが破壊された」と思いました。
しかし改めて考えると、その直前、カルビンは船体の「冷却水タンク」から水を飲んでいました。
つまりカルビンは、宇宙服に冷却水があることを知り、自分の渇きを潤すために意図的に冷却水タンクを破壊したのだと思います。
考察③「カルビン」の名前の由来
作中、火星で採取した地球外生命体の名前は一般公募されたようで、地球の子供の一人が「私たちの学校と同じ名前にします。カルビン。」と言っていました。
つまり、カルビンは学校の名前です。
しかし、映画の中の出来事である以上、「カルビン」という名前には製作陣のなんらかの意図があるはずです。
調べてみましたが、恐らく、以下のどちらかが由来ではないかと思っています。
①人名
(1911~1997)アメリカの生化学者。光合成における暗反応の機構を解明。生命の起源の化学的過程(化学進化)についても論じる。
②炭素化学種
カルビン (carbyne) は、下記に述べる炭素化学種の呼称である。炭素の線状ポリマーと 1配位型炭素ラジカルの共通の呼称として用いられる。
どちらも超理系的な話であり、素人の僕には詳しく理解できませんが、それぞれのリンク先を読んでいると、なんとなーーーーく「ライフ」に通づる何かを感じます。
特に「炭素化学種」の解説において”詳しい性質はわかっていない。”という一文もあり、そのミステリアスなところ等も作中のカルビンと似ています。
考察④乗組員が装着してる「マーカー」とは?

終盤、「ヒューの足に付いていたマーカー」を食べてしまったことで、船内であればカルビンの居場所を特定できるようになりました。
そのマーカーについて、デビットが装着してたシーンが序盤にあったことを思い出しました。
マーカーは、ボタンのように服に装着してましたね。
マーカー自体にどんなシステムがあるのか不明ですが、少なくとも簡易的なGPS機能は搭載されていたようです。
考察⑤ラストは何故あーなったのか?
最後、ミランダは救命艇Aに、デビッドは救命艇Bに乗りました。
救命艇Bは、手動操作で地球帰還システムから外れ、カルビン諸共、わざと宇宙の彼方へ向かう目的があります。
そして救命艇Aは、地球帰還システムに従い、生きて地球へ帰るためのものです。
最後、それぞれの救命艇に乗った二人は、それぞれの方向へ向かいます。
ミランダは地球へ。デビッドとカルビンは宇宙の彼方へ・・・。
そして一方の救命艇が大気圏内に突入し、もう一方は予定通り地球への起動から外れ、乱れながらも宇宙の彼方へ飛んでいきました。
乱れたのは、我々から見ると、船内で手動操縦していたデビットを、カルビンが妨害してたからのように見えました。
そして救命艇は海の上へ不時着しました。
中にはなんとカルビンとデビッドが・・・。
一方その頃、ミランダは悲鳴を上げながら宇宙の彼方へと消えていきました。
まずデビッドですが、デビッドはカルビンの力に抗えず、もはや「カルビンの操縦」で地球へと向かわされました。
対してミランダは、「散乱した宇宙ゴミ(事故で破壊したISSの破片)」等に軌道を妨害され、進路を外れました。
といわけで、お互いに「それぞれの理由」で本来の目的とは違う方向へ進みました。
筋は通っているのですが、なんかちょっと腑に落ちないラストです。
評価・まとめ
80点
宇宙SF好きなら間違いなく楽しめる作品です。
美術部門のクオリティーも高かったし、視覚的な刺激も存分にありました。
サンシャイン2057に登場した「イカロス2号」の船長「カネダ」を務めた「真田広之」が、ISSにも乗っているので、「真田さん忙しいな」と思いました。
ちなみに「カネダ」は船長だったので、その優秀さゆえに火星探査のミッションにも抜擢されたんでしょうね。
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