Netflixオリジナル作品「キミとボクの距離」を鑑賞しました。
いつも通りネタバレ無し情報を書いた後にネタバレしていきます。
まだ未鑑賞で、「とりあえず面白いかどうかだけ知りたい」という方は、「※ここからネタバレを含みます。」という文章の直前までを目安にご覧ください。
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※関連記事は最後にまとめて紹介します目次
予告編(トレイラー)
作品情報
公開年 | 2016年 |
---|---|
原題 | The Space Between Us |
上映時間 | 120分 |
製作国 | アメリカ |
監督 | ピーター・チェルソム |
脚本 | アラン・ローブ |
ジャンル | SF,ドラマ,ロードムービー,ロマンス |
主要キャスト |
エイサ・バターフィールド(ガードナー) ブリット・ロバートソン(タルサ) ゲイリー・オールドマン(シェパード) カーラ・グギーノ(ケンドラ) B・D・ウォン |
配信サイト・媒体 |
Netflix独占 ※記事公開時の情報です |
あらすじ・みどころ
火星移住計画が初めて実行に移され、女性宇宙飛行士サラを含む6人が火星へと旅立った。しかし、サラは実は妊娠しており、火星で息子を産み落とした直後に息を引き取ってしまう。ガードナーと名付けられた赤ん坊は健康上の理由から地球へ帰ることができず、その存在は世間に隠されたまま長い年月が経つ。16年後、ティーンに成長したガードナーは地球との接触を制限される一方でまだ見ぬ地球への憧れを募らせ、ネット上で知り合った地球の少女タルサとのボイスチャットに夢中になっていた。そんなある日、ガードナーは手術の末についに地球へ行けることになるが……。
魅力
①「地球」の美しいシーンが多く癒される
②前半で登場したセリフを後になって引用するシーンが多く小気味良い
③適度な伏線回収
④憎めるキャラが一人もいない
⑤耳に残る素晴らしい音楽
気になる点
・ガードナーとタルサの逃避行が非現実的でメロドラマが過ぎる
・終盤の展開に納得できない人も多いと思う
【ネタバレ無し】感想
実は今回で3度目の鑑賞です。
それくらい大好きな映画。
内容はあらすじの通りで、火星で生まれてしまった少年「ガードナー」が、少女の「タルサ」と「ガードナーの父親探しの旅」に出るお話。
ガードナーを演じる「エイサ・バターフィールド」の中性的な顔立ちと華奢な体つきが「火星の施設で育った」という状況にハマっています。
そんなヤワな彼が地球で冒険する展開は、それだけで胸が熱くなりますね。
良い点:「地球」の美しいシーンが多く癒される
本作はとにかく美しい奇跡のようなシーンが多い。
これは「初めて地球を訪れるガードナー」の感情表現も兼ねていると思いますが、本当にどのカットを取っても美しいので、観ていてとても癒されます。
僕は「福岡散歩ブログ」というメディアも運営しており、その中で「日常のヒトコマが楽しい」という事を伝えています。
そんな性格だからこそ感情移入しやすかったのかもしれませんが、解放的なカットが多い本作は、その美しいビジュアルと、「この景色を堪能しているのが“火星の人口的な設備しか知らない少年”」という事実が相まって更に美しく感じました。
良い点:憎めるキャラが一人もいない
本作は「ヒール役」が登場しません。
火星が悪者というわけでも、地球の誰かがひねくれてるわけでもありません。
ガードナー達を追い回す宇宙関係者も善人です。
強いて言えば、シェパードから逃げる際に小さい悪行を繰り返すガードナー達が少し悪い奴です。
サントラが素晴らしい
メインテーマも中々グッと来ますが、作中に登場する挿入歌がどれも心に残ります。
やっぱりロードムービー要素のある作品は音楽の重要度が高いですね。
当たり前のことですが、良い音楽が使用されると芸術点が跳ね上がります。
【ネタバレ有り】感想
※ここからネタバレを含みます。
父親を探し求めて旅に出たガードナーでしたが、重力が地球の3分の1の星で育った自分の体は、地球の重力に耐えられず、心臓肥大を起こしてしまいます。
そんな中最後の力を振り絞り父親の元へ訪れ、「エリオットは僕の母さんだ。そしてあなたが父親」と告げます。
ガードナーは「エリオットと“男性”が仲良さそうにしている写真」をヒントに名前を知らない父親を捜していましたが、その“男性”は父親では無く、なんとエリオットの兄でした。
そこでガードナーは体力の限界が近づき、「どこで生まれるかは決められなかった。でも死ぬ場所は選べる。」と言い、海に身を投げ出そうとします。
間一髪でシェパードに助けられたガードナーはなんとか一命を取り留め、その際にシェパードが自分の父だと知ります。
そしてシェパードと火星へ戻りエンドロール。
「やっぱり故郷(火星)は良いものだ。」
良い点:前半で登場したセリフを後になって引用するシーンが多く小気味良い
わざわざ「ネタバレ」にカテゴライズする程の情報では無いですが、やはり知らない方が鑑賞時の心地良さが増す為ネタバレ情報として書きます。
本作は「研究施設で育った少年(ガードナー)」が主人公であり、セリフ回しから「彼の知性」が伝わるようになっています。
前半のセリフを引用したからと言って特別感動するわけでは無いですが、それでもやはり鑑賞中の心地良さが増します。
また、中盤でガードナーがマーケットの鏡に何やら落書きをしますが、それが終盤の走馬灯シーンで「I waz here(僕はここにいた)」だったと分かるのも素晴らしい演出です。
※「was」ではなく「waz」と書かれていた
セリフによる回収もそうですが、本作は登場人物総理系ということもあり、セリフ回しが屁理屈っぽくてそれが心地良い。
悪い点:ガードナーとタルサの逃避行が非現実的でメロドラマが過ぎる
本作は日本ではNetflix独占状態ですが、アメリカでは一般公開された作品で、本国批評家からは酷評のようです。
星回りの悪いカップルを実につまらない戯言の中で立ち往生させている。同作を鑑賞すれば、最も寛容な観客でさえも、その殆どが出口を探し始めるだろう。
確かに本作は「カップルを無駄に右往左往させている」と見えます。
でも鑑賞中はとにかく美しさに飲まれていたので、「これくらいロマンチックでいいんだよ」と思える作品でした。
基本的に僕もロマンチック過ぎるのは苦手ですが、映像とガードナーの生い立ちにドップリハマリこんでいたので、二人の恋模様にもそこそこ好感が持てました。
考察
考察①タルサは都会に、ガードナーは自然に憧れていた
ガードナーとタルサは、ラストステージであるカリフォルニアのビーチに向かう途中でラスベガスに寄ります。
そこには「パリ」「ニューヨーク」「カイロ」等のあらゆる首都の“偽物”があり、タルサはそこが楽しい様子でした。
しかしガードナーは、「こんなの全部偽物だ」と言い、そこで鼻血を流し倒れます。
この書き方だとまるで「ガートナーは偽物に拒否反応を起こし倒れた」という風に見えますが、ちょうど体も異常を来していました。
思い返せば、ガードナーは「雨」や「海」に強い好奇心を感じていたように思います。
対して田舎で育ったタルサは、都会に憧れていたのではないでしょうか。
ただ、ラスベガスにあったのは確かに「本物のランドマーク」では無かったので、ガードナーは「都会そのもの」ではなく、偽物に拒否反応を起こしてしまったのかもしれません。
考察②ケンドラを本当の母親のように思っていたガードナー
ガードナーを地球へ連れて行く際、ガードナーの母親に近い存在だった「ケンドラ」は、自分が子供を産めない身体であることをガードナーに伝えます。
するとガードナーは、「それが分かった時どんな気持ちだった?」と聞きます。
ケンドラは「子供を産むかどうかで迷わなくて良くなった」と前向きに捉えていると伝えます。
そして地球に到着するのですが、地球でも検査の連続で監禁状態にあったガードナーは、嫌気が差しそこから脱走します。
逃亡中、ケンドラに捕まりかけた際に以下のやり取りをします。
「違うわ、私がいる。」
「君は家族じゃない。だってハッキリ言ったじゃないか。子供は欲しくないって。」
「そういう意味じゃないわ!分かってるでしょ?」
「子供はいらなかったのに、僕なんかを押し付けられて嫌だったろ!」
引用:「キミとボクの距離」劇中のセリフ
あの何気ない会話で、ガードナーがダメージを受けていたことが分かりました。
ガードナーにとって、それだけケンドラは母親に近い存在だったということでしょう。
こんな仲違いがあったからこそ、ラストでガードナーがケンドラに「あなたは最高の母親代理だ」と言ったのがより重厚に感じられました。
考察③シェパードは「エリオットの妊娠」を計画的に行ったのか?
個人的に一番腑に落ちない点です。
エリオットの妊娠はあらゆる関係者に隠されていました。
というか本人も知りませんでした。
しかし実際に行為をした「エリオット」と「シェパード」は妊娠の可能性を知っていたはずです。
だからエリオットの妊娠が発覚した時、シェパードは「やっぱり」と思ったはず。
ここで気になるのが「シェパードはむしろガードナーを計画的に妊娠したのではないか?」ということ。
火星移住計画を促進させる為に、実験的に密かに妊娠させた状態でエリオットを送り出した・・・
しかしこれも相当考えにくい。
どう考えても浅はかだし、シェパードはガードナーの存在に苦しんでもいました。
それは後悔だったかもしれませんが、優秀な科学者として、我が子にそんな大きなリスクを冒すはずがありません。
だからやはり、「エリオットと勢いでヤっちゃった」というのが正解なんでしょうか。
この辺りの「浅はかさ」が一般評価の低さに繋がってる気もします。
考察④原題「The Space Between Us」について
邦題は「キミとボクの距離」という非常に甘いものとなっていますが、原題は「The Space Between Us」で、Google自動翻訳にぶち込むと「私たちの間の空間」となりました。
最初は「なんだこの甘ったるい邦題は」と思いましたが、割とドストレートに翻訳している気もします。
内容も非常にロマンス色が濃いものだったので、「キミとボクの距離」はイメージに合った分かりやすい邦題だと思います。
評価・まとめ
85点
お勧め度:高
ネトフリ独占の中ではトップクラスの出来。
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