“余命半年の親友が安楽死を望んでいる”
Netflixオリジナル作品「パドルトン」を鑑賞しました。
いつも通りネタバレ無し情報を書いた後にネタバレしていきます。
まだ未鑑賞で、「とりあえず面白いかどうかだけ知りたい」という方は、「※ここからネタバレを含みます。」という文章の直前までを目安にご覧ください。
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※関連記事は最後にまとめて紹介します「パドルトン ネットフリックス」
「パドルトン 映画」
「パドルトン 感想」
などのワードで検索される方におすすめです。
目次
予告編(トレイラー)
作品情報
公開年 | 2019年 |
---|---|
原題 | Paddleton |
上映時間 | 89分 |
製作国 | アメリカ |
監督 | アレックス・レーマン |
脚本 | マーク・デュプラス、アレックス・レーマン |
ジャンル | ドラマ,ヒューマンドラマ |
主要キャスト |
マーク・デュプラス レイ・ロマノ |
配信サイト・媒体 |
Netflix独占 ※記事公開時の情報です |
※いくつかの映画サイト、およびNetflixでは、「パドルトン」には「コメディ」のタグが付けられています。しかし個人的に「コメディ」と聞くととにかくふざけ倒したコミカルな作品が頭に浮かぶため、それとは系統が全く違う本作は「コメディカテゴリー」から除外して紹介します。
あらすじ・みどころ
末期がん宣告を受け、症状が悪化する前に自分で人生を終わらせようと決めた中年男マイケルは、親しくしている隣人アンディーにその手助けを依頼する。
引用:Netflix
魅力
①会話劇が長いが、ユニークな言い回しが多く全く飽きない
②「マイケルとアンディー」の二人の掛け合いが面白く、そしてシリアスでグッと来る
③重厚なクライマックス。悲しみ、恐怖の伝わり方が凄まじい
【ネタバレ無し】感想
余命宣告を受けた「マイケル(マーク・デュプラス)」と、その隣人「アンディー(レイ・ロマノ)」の物語。
マイケルとアンディーはとても仲が良く、毎週「パドルトン」というオリジナルのスポーツゲームをして遊んでいました。
おそらく2人は数年~数十年をまたぐ付き合い。
しかしマイケルが癌に侵されたことで二人の付き合い方が変わります。
2人のキャラクターですが、余命宣告を受けたマイケルの方がドッシリとしており、アンディーの方がオロオロとした設定です。
この手の作品は、「余命宣告を受けて取り乱していた主人公だったが、いくつかの出会いや哲学の変化を経て、最終的に死を受け入れ、幸福な状態で死ぬ」という流れがテッパンだと思ってましたが、マイケルは最初から割と悟った表情のシーンが多い。
逆に「アンディー」の心境も、「残される者の気持ち」がしっかり表現されており、どちらにも感情移入できるつくりでした。
確かに「余命が短い者」として、残りの人生を謳歌する為にある程度はワガママになるべきだと思いますが、それは「残される者」も同じです。
残される者からしても「その人がいなくなるまでの間」は特別。
そんな二人の衝突もしっかり描かれていました。
【ネタバレ有り】感想
※ここからネタバレを含みます。
安楽死を実行した後の変化
おおらかでドッシリとした性格のマイケル。
割と屁理屈で細かい性格のアンディー。
「マイケルが安楽死を選んだ」ということで終始うろたえ続けたアンディーでしたが、その直前までマイケルに涙は見せませんでした。
2人とも相当仲が良い関係でしたが、「涙は見せたくない」という意地があったのかもしれません。
最後、アンディーがマイケルの為に安楽死薬をキッチンで準備している時、アンディーはキッチンペーパーでスッと涙を拭き取り、その後にマイケルの部屋に入りました。
最後まで涙を見せたくなかったようです。
そして薬をマイケルに渡し、マイケルが意を決してそれを飲む。
マイケルはここに来て大きく泣きだします。
それをなだめるアンディー。
今までの2人の構図が逆転し、アンディーはマイケルを安心させようとします。
もちろんアンディーも気が気じゃないはずですが、当事者のマイケルを優しくなだめます。
またマイケル達は、事前に薬剤師から「もし薬を飲んだ後に気が変わったら」の手順を聞いていました。
そして服用後、マイケルは「急に怖くなった。あんな薬飲まなきゃ良かった」とパニックになりながらアンディーに訴えます。
しかしこの時、元々安楽死に否定的だったアンディーでさえ「大丈夫」となだめ続けました。
実際に苦しんでいるマイケルを見続け、彼にとって安楽死が正解であると悟ったのでしょう。
このシーンはドキュメンタリー的な雰囲気があり、音楽も一切流れず、無音の瞬間もありました。
その演出のおかげで、ただシリアスで悲しいだけではなく、死ぬことの恐怖や不安も感じられました。
「コメディ」では無い。だからこそ笑える
「マイケルの余命宣告」から始まる本作は、終始その「絶望」に近いシリアスな雰囲気が流れています。
しかしそんな中でもマイケルとアンディーの掛け合いが面白い。
いや、「そんな状況だからこそ」掛け合いが面白いのかもしれません。
ひねくれ屋のアンディーは、何かにつけてマイケルを薬から遠ざけようとします。
マイケルが「おもちゃの金庫」を指し「それはなんだ?」と聞いても、アンディーは「テレビかい?この番組意外と面白いんだ」的な事を言って無理に話を逸らします。
深刻なマイケルからすればイラっとする応答ですが、そういうやり取りがイチイチ面白い。
ちなみに仕事面はマイケルよりアンディーの方が稼いでるらしく、なんかその辺のギャップもチラついて余計に面白く感じます。
確かマイケルはマーケットの店員で、アンディーはスーツを着てオフィスで働いてました。
「死」と向き合う作品
今まで僕が鑑賞してきた作品の中でトップクラスに突き刺さったのは「イントゥ・ザ・ワイルド」です。
本作のラストは「イントゥ・ザ・ワイルド」のラストに何か近いものを感じ、鑑賞後にとてつもなく重苦しい気持ちになりました。
僕たちは健康な状態でもたまに「死」というものを考えてみては、しばらくして辞めます。
あまりに深く考え過ぎると頭がイカれそうになり、言いようのない不安と恐怖に襲われます。
たぶんこれは生存本能から来るパニックだと思ってますが、「安楽死」を実行したマイケルの心境は、それの本物の感覚だったのではと思っています。
僕たちがたまにイメージする「死」はしょせん偽物。
でも体はそれに拒否反応を起こすので精神が乱れる。
安楽死の実行者が襲われるのは「イメージ」ではなく現実なので、「取返しの付かない事をしたのでは」という不安、恐怖ももちろん生まれはずです。
「パドルトン」は、その生々しさを体験させてくれ名作です。
評価・まとめ
80点
とても良い映画でした。
ネトフリに加入してでも見て欲しい作品です。
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