こんちはっす。ぱっかんです。
ちょっと古いサスペンス映画「隣人は静かに笑う」を鑑賞しました。
いつも通りネタバレ無し情報を書いた後にネタバレしていきます。
まだ未鑑賞で、「とりあえず面白いかどうかだけ知りたい」という方は、「※ここからネタバレを含みます。」という文章の直前までを目安にご覧ください。
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予告編(トレイラー)
※日本語字幕無し
作品情報
公開年 | 1998年 |
---|---|
原題 | Arlington Road(テキサス州北部タラント郡には”アーリントン”という都市があり、そこのある通りの名前がタイトルになっている) |
上映時間 | 119分 |
製作国 | アメリカ |
監督 | マーク・ペリントン |
脚本 | アーレン・クルーガー |
ジャンル | サスペンス |
主要キャスト |
ジェフ・ブリッジス ティム・ロビンス ジョーン・キューザック ホープ・デイビス ロバート・ゴセット |
配信サイト・媒体 |
市販DVD Netflix…他 ※記事公開時の情報です |
あらすじ・みどころ
テロリズムの歴史を教えている大学教授マイケル・ファラデー(ジェフ・ブリッジズ)は、ある日、路上で大ケガを負った少年ブラディ(メイソン・ギャンブル)を救助する。ブラディは隣に越してきたラング家の息子だった。これが縁で、ファラデー家とラング家の交際が始まる。
魅力
①中だるみしない良展開の連続
②飽きさせない工夫が随所に見られ、非常にテンポが良い
③最後まで観た人への究極のサプライズ有り
【ネタバレ無し】感想
僕は「古い映画特有のテンポの悪さ」が苦手で2000年より手前の映画はあまり見ないのですが、本作は非常にテンポが良く、序盤~中盤でも全く飽きません。
というか冒頭なんかは非常に個性的で、演出ひとつで鑑賞者の心を鷲掴みにします。
そしてグッと掴まれた心をそのまま離さず中盤へもつれこむ。
タイトルからして「隣人が只者では無い」ということは明らかなので特にそこを注意して鑑賞しますが、ともかく本作は、主人公の「ファラデー(ジェフ・ブリッジス)」以外の全ての登場人物が隣人の「オリバー(ティム・ロビンス)」を中々怪しみません。
というわけで、「ファラデー」だけがちょっと疎外感を感じるというか、「逆に異常者扱いされる」という展開があります。
もうね、こういう展開が大好物なんです。
「主人公だけがそれを知ってる」「他の者たちは真面目に聞いてくれない」
それはまるで、精神病棟に入れられた異常者か、もしくは親が自分の言葉を聞いてくれなかったような、そんな子供時代の理不尽な思い出に似てます。
ファラデーはそんな状況を、FBIの知恵と知識を使って上手く切り抜け、徐々に相手の正体に近付きます。
ここの攻防も最高に面白い。
とりあえずネタバレ無しではここまでしか語れませんが、次からは本質的な魅力を語っていきます。
(本作の魅力はネタバレが絡んで初めて伝えられます)
【ネタバレ有り】感想
※ここからネタバレを含みます。
良い点:展開・演出が丁寧で素晴らしい
2時間というどちらかと言えば長尺な映画ですが、最初から最後まで全く飽きずに鑑賞できました。
その理由の一つに「演出の良さ」があります。
さっきも少し話しましたが冒頭から凄く良い。
オープニングシーンは「少年が足を退きずりながら歩く」というだけ。
しかしそこには、
・周りの状況が良く分からない接写映像から始まる
・スローモーション
・露光高めの眩しい映像
・徐々に血を見せる
と、意外にもたくさんのアイディアが込められており、最初から「プロの工夫」がみられます。
中盤では、ファラデーの恋人「ブルック・ウルフ(ホープ・デイビス)」は、立体駐車場でたまたま見かけたオリバーに近づきます。
ブルックはファラデーから「隣人は危険」と聞かされていましたが、そこに関しては全く聞く耳を持たず、ブルックはオリバーを一切疑っていませんでした。
そんなわけでブルックは「へいおりばー!」と挨拶を叫びながら笑顔で近づいていきます。
しかしその声は、ちょうど横切った車の音でかき消され、すると次の瞬間、オリバーは誰かと何やら怪しい取引を始めました。
そこでブルックは「ファラデーの言う通りだわ」と気付くのです。
このシーンが凄く好き。
例えばこのシーンは「ブルックはたまたまオリバーを見かけ、なんとなく目で追ってたら怪しいやり取りを始めた」とかでも問題ないはずです。
それをあえて「最初に笑顔で近付く」という流れにした事で、「ブルックはオリバーに対して一切警戒してない」という心境を表現しました。
鑑賞者としては「なんだかんだ、ファラデーからあれだけ力説されたんだからブルックも多少は疑ってる」と考えます。
でもその疑念を一瞬でかき消したのです。
そして直後、「オリバー!」と叫んだ瞬間に車が横ぎります。
自然な流れで推移したと考えると、「車が声をかき消さなかったら、オリバーがブルックの存在に気付き、そこで怪しいやり取りを中断してた」と考えられます。
そもそも我々としては、「ブルックにはオリバーの正体に気付いてほしい」と願いながら見ているので、いかにも怪しいあの立駐のシーンでは、ブルックはできればスニーキングモードで近付いて欲しいと考えます。
そんな中ブルックは挨拶しながら近づき、それをたまたま車がかき消してくれたので、「声出すなよ!・・っぶねー」と、短い間でも中々の緊迫感を感じられました。
最終的にブルックは「立駐で怪しいやり取りを目撃したせい」で死ぬのですが、「ブルックがやっと味方になった」と思わせることで、鑑賞者はより作品にのめり込むことが出来ました。
他にも、
・ファラデーがトランクの爆弾に気付いた時の劇場のような照明
・オリバーのパーティー会場でのラストシーンで何故かスポットライトを浴びるファラデー
・ファラデーが爆弾を積んだバンを追っていると、そのバンの中からなんと我が子が
など、細かいところで熱い工夫が施されており、非常に好感が持てます。
良い点:全てが繋がる華麗なラスト
道中でこんなに面白くて、それでいてこんな素晴らしいラストを用意してくれてるとは・・・。
僕はたまたま、一切何の前情報も仕入れずに本作を観たのでラッキーでした。
「どうせテロリストの存在を暴いてハッピーエンドだろ」と思っていたら、まさかまさかの不条理エンドです。
「衝撃的なラスト」とか「ドンデン返し」等の類ではあるのですが、それに加え「不条理」であることも加わり、今までに見たことが無い程に素晴らしいラストでした。
しかもそれに関して、ちゃんと伏線があるというのも嬉しい。
たまに「実は〇〇が犯人でしたー(デーン)」みたいに何の脈絡も無くどんでん返しをブッコム作品がありますが、それらは恐らく、本作のように神がかったラストを持つ作品の影響で生まれてしまったんでしょう。
本作は、「ミスト(2007)」「SAW2(2004)」に並んで、僕が最も好きなラストシーンを持つ作品のひとつです。
考察
考察①ファラデーは最初からオリバーの標的だったのか?
オリバーらによってファラデーは死にました。
そしてその後のニュース映像によって「ファラデーは単独テロをする動機があった」と、ターゲットとしてピッタリだったことが判明しました。
よって、オリバーは最初からファラデーを標的にしていたと思われます。
もしかしたら引っ越した先で「ファラデーって男がなんか利用できそう」と気付いたのかもしれませんが、犯行時のあの計算高さを考えると、オリバーは最初からファラデーを狙って引っ越したようにも思えます。
考察②犯行時の流れをおさらい
・わざとファラデーの前で怪しいアタッシュケースを輸送する
・そしてファラデーに車で尾行させる
・より激しくこちらに興味を持たせるため、車の窓から子供の顔を見せる
・途中でわざとファラデーの車にオリバーがアタックする
・ファラデーを引きずりだしどこかの倉庫で取っ組み合いをする
・その隙に別の人間がファラデーのトランクに爆弾を仕込む
・オリバーを殴り倒したファラデーは、そのまま引き続き怪しいバンを追う(しかしそのバンは無関係のもの)
・そのバンを追ってFBI内部に侵入する
・爆破
怒涛の展開でしたね。
見れば見る程にファラデーはまんまと踊らされてます。
考察③オリバーはわざとファラデーに疑わせた
犯行の計画力の高さから、オリバーが只者では無いことは明らかです。
実際にはオリバーが黒幕という描写が無く「ただのテロ組織の一員」として捉えることも出来ますが、とりあえずそこは置いておきます。
であれば、「ショッピングモールの図面」と言いながらFBI本部の図面をチラ見させたのは恐らくわざとです。
ファラデーを上手く利用する為にはまず自分を疑わせないといけません。
その取っ掛かりがあの「嘘の図面」だったのでしょう。
そして個人的には、「ブルック」も最初から殺す予定だったと思います。
最後、ファラデーがトチ狂ったのは「ファラデーが一人だったから」という事実も大きいはずです。
そこにブルックがいたら間違いなく犯行の邪魔になっていたし、何より「息子の誘拐」に関して、唯一気付ける人間となります。
作中では「ブルックは俺たちの正体に気付いたから消した」という感じでしたが、早かれ遅かれ「息子の誘拐イベント」の前には消されていたと思います。
考察④たぶんファラデーは「犯人では無い」と世間に知られる
現実でも「解決済み事件の闇」として時折「この人が容疑者にされてるけど、彼は犯行時の行動が明らかにおかしかったから、この事件の犯人は別にいるかもしれない」という風に語り継がれる場合があります。
ファラデーは犯行時、車で激しい運転をしていたし、途中で息子の名前を叫んだりしていました。
あれは通りがかりの人にも見られていたはずです。
確かに「なんで犯行前に息子の名前を叫んでたか分からない」で終わってしまう話ですが、もしかしたらそれが他の違和感と照合され「息子が誘拐されていた」となり、最終的に「ファラデーは犯人じゃなかった」と気付いてもらえる可能性もあります。
また、犯行に使われた爆弾は、爆破後であっても破片等からどういうタイプの爆弾か判明できるはずです。
となると「リモコン式の爆弾」をわざわざファラデーが命がけで運ぶ必要が無いことにも考えが及ぶはずです。
エピローグでは「ファラデーが犯人でした」というニュースが押し出されていましたが、それは飽くまで犯行数日後までの出来事で、もう少ししたら「実は犯人じゃなかった」という流れに変わっているかもしれません。
ただし、この辺りは僕の希望的観測も含まれます。
評価・まとめ
90点
鑑賞後に立ち上がれなくなるような衝撃的な作品を久しぶりに観ました。
僕が大好きな「ショーシャンクの空に(1994)」でアンディを演じたティム・ロビンスが悪役だったのもなんか斬新だったし、中々お勧めです。
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