「殺し屋」と「元軍人のダメ親父」が繰り広げる究極の屋内戦。
「スタンドオフ(Stand Off)」を鑑賞しました。
ネットフリックスのレビューで「隠れた名作」と書いてあり中々高評価だったので見てみました。
僕自身80点という高評価ですが、本当に面白い映画でした。
※当記事はある程度のネタバレを含みます。
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目次
作品情報
公開年 | 2016年 |
---|---|
原題 | Standoff |
上映時間 | 86分 |
製作国 | カナダ |
監督 | アダム・アレカ |
脚本 | アダム・アレカ |
ジャンル | サスペンス |
主要キャスト |
トーマス・ジェーン ローレンス・フィッシュバーン エラ・バレンティン |
配信サイト・媒体 |
市販DVD Netflix…他 ※記事公開時の情報です |
スタンドオフ:あらすじ
息子は死に、妻は去り、失うものは何もなかった。荒地の一軒家に住む男のもとへ、少女とヒットマンが現れるまでは…。
引用:Netflix
常にカメラを持ち歩く少女が、腕利きの殺し屋が仕事をする瞬間をたまたま撮影してしまいます。
そして殺し屋にバレて逃げ込んだ先が「元軍人のカーター」の家です。
そこは農場かどこかにポツンとある家で、周囲には誰も居ません。
だから登場人物は基本的に「殺し屋」「カーター」「イザベル(少女)」の3人のみ。
登場人物が少ない分、彼らの心理的描写がしっかり描かれています。
「スタンドオフ」の感想:演技
気迫せまる演技は中々良かったですね。
特にカーター(トーマス・ジェーン)のダメ親父っぷりは最高でした。
子役の演技も中々良くて、終始感情移入して鑑賞できました。
「スタンドオフ」の感想:構成・脚本
完璧では無いですが、ミーハーな言い方をすれば、良い感じにドキドキハラハラさせてくれました。
状況を説明すると、殺し屋が攻めてきた直後、カーターとイザベルは2階へ避難します。
そして殺し屋は一階に陣取ります。
お互いに銃を持っています。
殺し屋はサイレンサー付きのハンドガン + リボルバー。(リボルバーは後半で登場)
カーターは散弾銃のみ。しかも弾薬は2発と少なめ。
本作の脚本は「アイディア」が中々良かったですね。
序盤のバタバタが終わった後の準備フェーズで、お互い被弾した箇所を手当てします。
その後カーターは電球を集め、それらを割って階段にバラまきます。
その行為を見て殺し屋は「ただもんじゃねぇな・・・」と呟きます。
この電球の破片のおかげで、殺し屋が階段を上ってくる時に足音がするようになります。
こういう「機転」が素晴らしいですね。
映画はやっぱり、登場人物たちの機転の数だけ評価が上がります。
序盤からこの手のアイディアを見せつけられると期待せずにはいられません。
そして殺し屋も馬鹿ではありません。
様々なギミックを使ってカーターを揺さぶります。
お互いに利用するのはギミックだけではありません。
「心理戦」も見どころの一つです。
実はカーターは弾切れ状態でした。
しかし敵が油断した隙に銃を向け脅しにかかります。
しかし殺し屋はカーターに逆にゆさぶりをかけ、「カーターの弾数は残り1発」と見抜きます。
ここがちょっとややこしいですが、「カーターが実は弾切れだった」というのは鑑賞者には伏せられています。
最後の最後に「お前実は弾切れだったのか」という展開になるのですが、「どこで残りの一発を失ったのか」がかなり分かりづらい状況でした。
これについては後程考察します。
各々の心理描写、ギミックの使い方やアイディア、そして緩急を付けて飽きさせない工夫など、本作の構成に関する部分は本当に良かったと思います。
「スタンドオフ」の感想:演出
目を見張る演出があったわけではありませんが、カメラワークや回想シーンの挿入の仕方、タイミングなど、全く持って完璧でした。
「とても良い!」というわけでは無いですが、減点法で言えば100点満点の出来です。
また、序盤の手当シーンも個人的には好きでした。
カーターも殺し屋も、お互いに被弾してます。
そして互いに「一旦休憩する」という選択をしてから手当に入るのですが、それぞれの方法で手当てします。
この手当シーンをピーターと殺し屋交互に映すのですが、それだけで二人が互角であるということが見て取れます。
スタンドオフは、「主人公が不利で弱い立場だけど逆転する」という映画ではありません。
「元軍人とエリートヒットマンのせめぎ合い」がコンセプトの映画です。
だから、「二人が互角である」ということを序盤で明示しておくことで、より一層これからのワクワク感が増します。
「スタンドオフ」の評価
80点。
ネトフリのレビュー通り「隠れた名作」です。
生きるか死ぬかの駆け引きだけでなく、会話の中で探りを入れたり、また、時々本音を話したりなどで心を通わせる瞬間もあり、カーターだけでなく殺し屋の方にも感情移入させる作りなのが良かったと思います。
特に、ラストで殺し屋がイザベルを殺さなかったことで「彼がモンスターでは無い」ということが明示されました。
もしも殺し屋が「ただの悪役」だったならばここまで高評価にはならなかったでしょう。
スタンドオフの感想と評価は以上です。
事項から考察に入ります。
「スタンドオフ」を考察する
カーターは2発持っていたはずでは?

カーターの所持弾数は、最初は2発でした。
そして最初に一発目を発射し、殺し屋に命中させます。
そしてすぐさまリロードし2発目を散弾銃に込めます。
今さっき確認しましたが、やっぱり明らかにリロードしてました。
(発砲後「階段から薬きょうが落ちるシーン」が、やたらスローモーションでやたらドラマティックな演出だったので、「薬莢じゃなくて実弾そのものを落としたのか?」とも思いましたが違うようです)
そしてその後、「発砲したのかな?」というシーンが一か所だけありました。
それが、殺し屋が階段を踏み外すシーンです。
靴を脱いでステルスモードになった殺し屋が密かに別ルートから2階に上がっており、急に現れたカーターに驚いて階段から転げ落ちます。
この時、初見ではカーターが発砲していたかのように見えました。
しかし再確認してみると、ここでも確実に発砲していませんでした。
というかここは完全にミスリードを誘う演出でした。
他のブログ様でも、「ここでカーターが発砲し弾切れになる」とありました。
でもそれは間違いっぽいです。
このシーンではドタバタに紛れて発砲音がし、「発砲する銃口」も一瞬アップで映し出されますが、明らかにそれは殺し屋側のものでした。
カーターは発砲してません。
ということで、殺し屋は一人で驚いて一人で発砲し、一人でガラスの破片散らばる階段を転げ落ちたことになりますw
だからカーターはあんなに笑ってたんですねw
ではやはり、この時点ではもう1発残っているはずです。
そして迎えるラストシーン。
ナイフで重症を負い瀕死の殺し屋に近づき、散弾銃を持ったイザベラは意を決して彼に向かい引き金を引きます。
でも弾切れ。
そして殺し屋は驚きながらも息を引き取ります。
あれ?いつ弾切れになったの?
個人的な見解は2つあります。
①序盤で1発発砲した後、やはり残ってたもう一発を落としてしまい、リロードせずに古い薬莢をそのまま入れっぱなしにしてただけ(鑑賞者だけに向けたミスリード)
②イザベルに銃を渡す時に弾を抜いた
①についてですが、何度も確認したにも関わらずまだ「リロードした」という事実を信じてませんw
それで改めてショットガン(散弾銃)の仕組みについて調べました。
ショットガンの発砲風景ですが、この動画を見る限りでは発砲後に空の薬きょうが側面から放たれています。
その薬莢の筐体(きょうたい)だけを見ると、発砲前の薬きょうと同じです。
だからやっぱり実弾を落としたのかなー、と未だに少し思ってます・・・。
②についてですが、映画らしいきれいごと的な展開なのであまり好きではありません。
殺し屋も「殺しの重さ」を語りますし、カーターも「自分の子を死なせてしまった」という事実があり、またイザベルも両親の死から立ち直れていません。
だから、「命の重さ」をダイレクトに受け止めているカーターが、「どんな最悪な状況になっても、この子に人殺しだけはさせない」と考えるのはあり得る話です。
それでイザベルに銃を渡す前に弾を抜いていた可能性があります・・・。
でもそれっぽい描写が一つも無いんですよね。
ピーターと殺し屋の友情
この二人の掛け合いは本当に素晴らしく、時々敵ながらも心を通わせるシーンが見受けられます。
いや、なんというか、確かに二人はラストできっちり殺し合うんで、最後まで敵同士ではあるんですが、観賞中は戦友的な繋がりを感じてしまいました。
その辺りの微妙な深みも、スタンドオフの魅力だと思います。
ちなみに「Stand off」は翻訳すると「離れている」とか「孤立している」という意味です。
登場人物の状況をシンプルに表現していますね。
また「孤立している」というのは、階段越しににらみ合ってる二人の現在の状況だけでなく、子を失ったピーターや、素性が良く分からない殺し屋の人生にも当てはまります。





