1990年版の「トータル・リコール」を鑑賞しました。
アーノルド・シュワルツェネッガーの代表作の一つですね。
いつも通りネタバレ無し情報を書いた後にネタバレしていきます。
まだ未鑑賞で、「とりあえず面白いかどうかだけ知りたい」という方は、「※ここからネタバレを含みます。」という文章の直前までを目安にご覧ください。
目次
予告編(トレイラー)
作品情報
公開年 | 1990年 |
---|---|
原題 | Total Recall |
上映時間 | 113分 |
製作国 | アメリカ |
監督 | ポール・バーホーベン |
脚本 | ロナルド・シュゼット、ダン・オバノン、ゲイリー・ゴールドマン |
原作 | 追憶売ります(著者:フィリップ・K・ディック) |
ジャンル | SF、アクション |
主要キャスト |
アーノルド・シュワルツェネッガー(クエイド) レイチェル・ティコティン(メリーナ) シャロン・ストーン(ローリー) マイケル・アイアンサイド(リクター) マーシャル・ベル(ジョージ) |
配信サイト・媒体 |
市販DVD Netflix…他 ※記事公開時の情報です |
あらすじ・みどころ
西暦2084年、地球の植民地となっていた火星では、エネルギー鉱山の採掘を仕切るコーヘイゲンとそれに対抗する反乱分子の小競り合いが続いていた。一方、地球に暮らす肉体労働者のダニエル・クエイドは、毎晩行ったこともない火星の夢を見てうなされていた。
魅力
①ただの筋肉映画ではなく「何が事実か?」が入り組んだ素晴らしい脚本
②凄く気持ち悪いミュータントの造形
③シュワルツェネッガーがちょっと凡人寄りの設定なのが逆に良い
【ネタバレ無し】感想
めっちゃ小さい頃に観た記憶がありますが、内容は全然覚えておらず、今回鑑賞中に「なんかこのシーン観たことあるな・・・」という感じで「小さい頃に観た」という事実を思い出しました。
その思い出したシーンというのが、「黒人のタクシードライバーが自分の腕を取り外すシーン」です。
何故かこのシーンだけめちゃくちゃインパクトがありました。
他にも「乳房が三つあるミュータント」とかも過去に観た気がします。
でも、内容がここまで深いサスペンスだったなんて思いもしませんでした。
いつもの「シュワルツェネッガーがただ強い系の作品」かと思っていたら、展開が二転三転する良質なサスペンス要素もあり、しかも考察しがいのある深い作品です。
2012年にはリメイク版も公開されたようですが、いつかそっちも観てみます。(たぶん観ない)
【ネタバレ有り】感想
※ここからネタバレを含みます。
良い点:ミュータント(クリーチャー)の造形がおぞましい

「火星」では、放射当能等の影響でミュータントと化した人間と、普通の人間が共存しています。
そしてミュータントは、ホラー映画のようなトーンで登場されたら、ホラーやグロに見慣れた人でさえ恐怖を感じるようなビジュアルです。
しかし、本作はそれらのミュータントがごく当たり前に登場しており、うまい具合に愛着を持たせるような作りになっています。
「ミュータントに善人が多い」という設定のせいかもしれませんが、ミュータントに嫌悪感を感じさせない設定、作りは非常に良かったと思います。
ちょっと残念な点:黒人タクシードライバーは善人であって欲しかった
ネタバレ無し感想でも書いたのですが、「実はミュータントだった黒人ドライバー」には、是非善人であって欲しかった。
これ系のアクション映画では、ひょうきんな黒人脇役が主人公に巻き込まれたりしますが、そのまま主人公に手を貸す流れになるのが個人的に好き。
本作も、途中まではいかにもそんな展開だったし、ドライバーの演技、表情も絶妙に「憎めない脇役感」が出ていました。
しかし最後の方でシュワちゃんを裏切りました。
ただ、これは評価に影響してません。
「残念な点」というと大袈裟ですが、個人的な好みの話です。
考察①:ラストはクエイドの夢オチか?
こういう「夢」を題材にした作品は、ラストで「実は主人公の夢オチでしたよー」という事になりかねません。
本作はどうも夢オチじゃない雰囲気でしたが、「その可能性はある」という濁し方もあったと思います。
ラストでは、メリーナが「夢から覚めないうちにキスをしましょう」と言って、クエイドとメリーナがキスをします。
そしてその後、画面が白くフェードアウトし、そのままエンドロールに突入。
これは、明らかに「夢オチの可能性もある」という事を示唆(しさ)している演出です。
ちなみにこのラストの流れも、リコール社の社員が「結末はあまり言いたくないのですが、理想のヒロインと良い感じになりますよ」みたいな事を言っていたのと一致していますね。
もちろん、イチ鑑賞者としては、「夢オチじゃない」方が納得できます。
なんだかんだあっても、「結局夢オチでした」なんて言われたら、だいぶ萎えます。
例えば「インセプション(2010)」という夢を操作する映画でも、ラストで夢オチの可能性を示唆していました。
それは本作のラストにも通ずるものがあります。
インセプションもトータル・リコールも、「主人公の夢オチかどうか」というのは、どうやら鑑賞者に投げかけているようです。
どちらも決定的な情報が無いので、自分の好きなように解釈しましょう。
考察②「クエイド」は何故「サウザー」に戻らなかったのか?
「クエイド」の元の人格は「サウザー」で、クエイドは中盤まで必至にサウザーに戻ろうとしていました。
しかし「サウザー」はどうも悪者だった為、クエイドは今の自分のままでいるという決断をします。
そして我々鑑賞者は、こういう「過去の自分を取り戻す」系の映画では、当然「記憶を取り戻してほしい」と思いながら鑑賞します。
にも拘わらず、主人公が「元の自分に戻らない」という選択を取る為、ここで少し映画に対して距離を感じました。
クエイドは何故サウザーに戻らなかったのでしょうか。
①「クエイド」としての自分にとって、「サウザー」は敵対する組織の一員だったから戻りたくなかった
②そもそも「サウザー」が自分の元の人格であるという事を信じていない
恐らく、普通に観ていたら①が相当すると思いますが、なんか流れが急展開過ぎて、あまり付いていけませんでした。
本作は、ちょっと哲学的な側面もあるような気がします。
「本物の自分はどれか」という真実を突きつけられるシーンは、どの作品でも、大抵時間をかけてゆっくりとネタバラシします。
例えば「シャッターアイランド(2011)」でも、ネタバレせずに言うと、「自己に気付くシーン」は、かなり丁寧に描かれていました。
しかし本作で「サウザーの正体」を知るシーンは、非常に軽く、素早く終わりました。
「本当は俺はこういう奴だったのか」というのは、仮にそれが自分の立場だったとしたらかなり衝撃を受けるはずだし、主人公のクエイドもそうだったと思います。
しかし、そこがあっという間に過ぎてしまった為、「サウザーに戻るのに抵抗するクエイド」に対して、「何をそこまで嫌がる必要があるのか」と少しの違和感を感じてしまいました。
評価・まとめ
75点
古い作品ですが、今観ても全然楽しめると思います。
「シュワちゃんの全盛期のアクション映画」としてではなく、入り組んだ脚本を楽しむ為の鑑賞におすすめです。
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