ネットフリックスで独占配信されている「ブラックミラー」。
シーズン4エピソード1「宇宙船カリスター号」のネタバレ感想記事です。
目次
作品情報
原題 | USS Callister |
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上映時間 | 76分 |
監督 | Toby Haynes(トビー・ヘインズ) |
原作・脚本 | Charlie Brooker(チャーリー・ブルッカー) William Bridges(ウィリアム・ブリッジズ) |
キャスト |
Jesse Lon Plemons Cristin Milioti |
おバカさ | ★★☆☆☆ |
シリアス度 | ★★☆☆☆ |
胸糞度 | ★★★☆☆ |
理不尽度 | ★★★★★ |
オチの爽快感 | ★★★☆☆ |
総評 | ★★★★☆(星4) |
設定 | 意識を落とし込むVRゲームが世に浸透している。 |
あらすじ
大人気VRゲーム「インフィニティ」の開発者でありCTOのロバートは、会社でこっそり採取した社員のDNAを基に、そのデジタルクローンを作り上げる。
そのクローン達で構成された「宇宙船カリスター号」では、ロバートは圧倒的な力を持つ船長であり、独裁者となっていた。
現実世界ではどの社員からも馬鹿にされていたが、この「宇宙船カリスター号」の世界で彼らのクローンを屈服させることで、ロバートは憂さ晴らしをしているのだった。
※次項からネタバレを含みます。
ネタバレ感想
良い点:クローンたちの理不尽な状況
クローンと言っても、ゲーム内でしか存在できない「デジタルクローン」です。
しかもそのクローンは、元は本物の人間のDNAを採取して作られているため、当人の記憶を保持しています。
そんな状況でデジタルの世界に閉じ込められます。
しかも、彼らは死ねません。
死んでも、ロバートによって何度も復活させられるのです。
更に性器も奪われています。
ロバートがプログラムを書き換えたせいで、排泄等が出来なくなっているのです。
そんなデジタルクローンたちですが、元は人間です。
だからカリスター号内で初登場する瞬間は、自分をクローンであることや、ここが仮想現実であることを信じられずにいます。
また、他の乗組員はその世界に何年も閉じ込められているため、現実世界の情報を知り得ません。
その為、今回のように新人が入る度に「現実でどうなっているのか?」を知ることができます。
というように、「クローンとして生まれてしまった」だけでかなり理不尽です。
彼らの目指すものは、「死」であり、自分自身を消滅させるためにロバートに抗います。
良い点:因果応報を受けたロバート
最後、ロバートはゲームの世界に閉じ込められます。
恐らく、バーチャル世界で「ワームホール」と呼ばれていた「アップデートパッチ」からクローンたちが逃げ出したことでバグが生じ、ロバートが作り上げた世界が破綻したのでしょう。
ロバートは仮想現実から現実に戻ることが出来ず、崩れゆくゲームの世界に永遠に意識を投入することになりました。
悪人にふさわしい自業自得なラストです。
良い点:「無限の恐怖」を感じる・・・
「5億年ボタン」に近い恐怖を感じる話です。
クローンとして生まれてしまった以上、永遠に死ねず、そして何の快楽も得られず、誰かが作り上げただけの狭い世界でしか生きていけない・・・。
「無限」に恐怖を感じる人には中々きついものがあるエピソードでした。
ラストも、終わりゆく世界でロバートが一人取り残されるので、悪人にとって因果応報とは言え、少し胸が苦しくなります。
考察:コミカルに描かれているが、かなりダークな作品
「無限の恐怖」の延長線上ですが、ジョークを言い合ったり、モンスター化したキャラが入り口で頭をぶつけたりなど、登場人物たちはかなりすっとぼけています。
おかげで結構ライトな印象を受けますが、設定をリアルに考えるとかなりヘビーです。
彼らは生殖器を取り上げられているため、性の快楽はもちろん、排せつの快楽すら味わえません。
説明が無かったので分かりませんが、睡眠欲はあったのでしょうか。
お酒を飲むシーンはあったので、恐らく酔うことは出来たのでしょう。
クローンの一人が、机に頭を何度もぶつけ「癖になりそう」と言うシーンがあります。
クローンたちは一切の快楽が無いため、あのようにしないと刺激を得られないのです。
しかもたぶん、年も取れません、
もしあの世界観が実現したら、クローンたちは全員廃人となり、完全にうなだれてしまい、どんな罰を与えようともゲームとして成立しなくなるはずです。
本当はそれくらいヘビーな状況です。
更に地獄なのが、「自分の子供のクローン」を作られること・・・。
そのクローンはクローンとは言え、本物の息子の記憶を保持しているので、そもそも「その息子のクローンがこの世界に登場した」という事実だけで悪夢です。
それを父親クローンの目の前で殺すロバート・・・。
マジで鬼畜です。
考察:クローンたちは本当にハッピーエンドだったのか?
ラスト、ロバートが作り上げた宇宙から脱出し、「全世界と繋がるネット世界」へ飛び出しました。
一般ユーザーのいる世界で、自由に世界中のゲームを堪能することができます。
今までに無い自由を手に入れたクローンたちは歓喜し、エンドロールに入ります。
いかにもハッピーエンドみたいな終わり方でしたが、クローンの理不尽から逃れられたわけではありません。
そこが少し気分的に引っかかります。
ですが、ロバートの奴隷から解放され、自由にゲーム世界を堪能できるのですから、ある程度は楽しめると思います。
そしてある程度楽しんだら、いずれは自分の存在を消すという選択を取るでしょう。
元々は人間なので、やはりバーチャル世界に嫌気が差すと思うので。
イースターエッグ・メタ発言
・ロバートが「スペースフリート」という映画作品を紹介する際に「ネットフリックスでもやってる」と言っていた。
評価・まとめ
総評:★★★★☆(星4)
ロバートのオフィスや、自宅の近未来感も見ていて心地よく、ネットフリックスのハイテク描写のこだわりが感じられます。
最後にロバートに対して謝るジェームズにもグッと来た。
理不尽度は高くも、きっちりハッピーに終わりました。
ハッピーに終わったんですが、「無限」という恐怖と「クローン」という物悲しい存在がちらつくおかげで、胸の奥にどこか引っかかるタイプのお話でした。