世界一高評価のドラマ作品としてギネスブックにも載ってる「Breaking Bad(ブレイキング・バッド)」の記事です。
先日、Breaking Bad(ブレイキング・バッド)に登場する「トッド」について紹介したばかりですが、今回は「エンディング」について紹介します。
当然ネタバレが含まれますので、未見の方はまだ読まないことをおすすめします。
「ブレイキング・バッド エンディング」
「ブレイキング・バッド ラスト」
「ブレイキング・バッド ウォルター 最期」
「ブレイキング・バッド ウォルター エンディング」
「Breaking Bad last」
「Breaking Bad ending」
「Breaking Bad walter white」
などのワードで検索される方におすすめです。
目次
ブレイキング・バッドのラスト
高純度のメスを大量生産し、無事当初の予定通りお金持ちになったウォルター。
しかし、パートナーのジェシーと決裂。
義理の弟にも麻薬王であることがバレ対峙することに。
「家族のために」と始めた麻薬精製が原因で、妻を失い、息子にも嫌われ、どうにもできなくなったウォルターは、偽の身分証を作ってもらい、山の中で生活を始める。
数年後、ウォルターは息子であるウォルタージュニアに電話しお金を受け取って欲しいと伝えるも、「お前のお金なんかいらない!」と言われ、ウォルターはその場で崩れ落ちてしまう。
一時的に自首を決意するも、バーのテレビで、大学時代に共同で立ち上げた会社「グレイマター」の役員夫婦2人がウォルターの悪口を言っているのを目にし復讐を決意。
(役員2人はウォルターを裏切っている(とウォルターは思っている))
役員夫婦(グレッチェン・エリオット)の家に侵入し、ズタボロ姿のまま二人の前に立ちはだかるウォルター。
恐怖におののく二人に大金を預け、この金をジュニアとスカイラーに寄付するよう脅す。
ビビリきったグレッチェンとエリオットは、完全に従う様子を見せる。
ウォルターは、ジェシーが監禁されメスを作り続けているという情報を入手し、トッドたちの住処に足を踏み入れる。
そこでズタボロのジェシーと対面し、ジェシー以外の全員を自作マシンで殺戮。
その際に自分も弾丸を食らってしまう。
銃声を聞きつけて数台のパトカーが接近。
ジェシーは車でその場から逃走。
ウォルターは、今までジェシーが使っていた麻薬精製場へ行き、その場で力尽き絶命。
特に深読みしない場合のラストの捉え方
何も考えず表面だけを見れば、「ウォルターに天罰が下った」というオチになります。
また、何年間もウォルターの行動を追い続けた視聴者からすれば、「ウォルターにはせめて幸せになってほしかった」と願っていたので、かなりのバッドエンドと言えます。
しかし当然、ウォルターはブレイキング・バッドのタイトル通り、道を踏み外しています。
麻薬に手を染め家族を不幸に巻き込んでいるので、「大金手にしてハッピー」という終わり方は「麻薬って良いものだよ」と言っているようなもので、あまりに軽過ぎます。
ハッピーエンドとしての捉え方
ブレイキング・バッドのラストはそんな浅いものではありません。少なくとも僕の認識では。
まず、ウォルターは「家族に資産を残すため」に麻薬精製を始めました。
これは間違いないと思います。
ウォルターは冴えない科学教師ですが、実は権威ある賞を受賞しているくらい優秀な科学者でした。
そんなウォルターが作るメスは相当なクオリティで、本人も次第に麻薬精製を楽しむようになりました。
これが、「手段が目的に変わった瞬間」です。
そもそもウォルターは相当な自信家で、科学者として優秀であることを理解していました。
にもかかわらずそれを活かせていないこと、そして、学生時代に自分を裏切った二人が「グレイマター」として成功していることに不満を抱いていました。
しかしウォルターは、麻薬を作っている間は一流の科学者です。
他の誰もできないことをやってのけています。
それが次第に楽しくなっていたのでしょう。
実際、ウォルターはことあるごとに「家族のためにやっているんだ!」と言い続けていました。
しかし最後の最後、妻のスカイラーに対し、「メス生成は自分の為にやっていた」と静かに自白します。
ウォルターは最後になって初めて自分の本心に気付いたのです。
僕の中ではこのセリフが作中で一番響きました。
そして、ジェシーに会いに行きます。
敵対組織に監禁されたズタボロのジェシー。
ジェシーとウォルターは壊滅的なまでに決裂しています。
「ジェシー」と「敵対組織全員」が揃ったところで、ウォルターは殺戮マシンのスイッチを入れ全員を皆殺しにしますが、ジェシーだけは救います。
この段階で、
①もともとジェシーを救うつもりだったのか?
②それともジェシーも含め殺すつもりだったが、あまりに哀れだったから助けてあげたくなったのか?
のどちらの考えが至ってジェシーを助けたのかが気になりますが、個人的には①だと思ってます。
ウォルターは、ジェシーを息子のように可愛がっていました。
確かに、前回会った時はジェシーに裏切られ腹の底から恨んではいましたが、ジェシーに対しての愛は本物だったと思います。
だから純粋にジェシーを殺さないという気持ちはあってほしいです。
反対に②の「ジェシーも殺すつもりだった」ですが、この場合は以下の動機が考えられます。
・ジェシーに裏切られたことをまだ根に持っていた
・高純度のメスを作れるのは自分だけであるべきだ
「高純度のメス」については、確か数パーセント程ジェシーの方が純度が低かったですし、自信家のウォルターは恐らく気にしていないものと思われます。
そして、「ジェシーを助けるために、ジェシーの上に覆いかぶさった」という事実があります。
ウォルターが作ったマシンは、「腰辺りの高さに弾丸をばら撒く」というもので、伏せていれば回避することができます。
だから、「このやろう!」と言ってジェシーに襲い掛かるフリをして押し倒し、ジェシーを助けます。
当然、ジェシーの厚み分ウォルターは高くなります。
その結果、ウォルターは腹に一発被弾します。
ウォルターは当然、「ジェシーに覆いかぶさったら被弾する」ということは想定していたはずです。
それを覚悟のうえでジェシーを救ったのですから、ジェシーに対する愛情は並々ならぬものだったと思います。
その後ジェシーは車で逃走し、ウォルターはメスの調理場に行きます。
この時のウォルターの表情がすごく穏やか。
良く見ると、口角が少し上がっています。
穏やかな表情で、自分の人生を狂わせたメスの調理器具を手に取ったり、撫でたりするウォルター。
そしてその場で倒れ込み絶命。
彼は最期、自分の愛して病まない”科学の場”で命を落としました。
色々あれど、これはウォルターにとって理想的な最期だったと思えてなりません。
確かに彼は、「家族のため」にやってきたメス生成で、家族を失いました。
失ったものはあれど、彼は「自分のやりたい事」をやり続け、そしてそれに囲まれて死にました。
客観的に観れば失ったものが大きすぎるのでバッドエンドに見えますが、ウォルターにとっての「科学」は、きっと家族より偉大なものだったのかもしれません。
もしくは、メス精製を通し、家族 < 科学の図式になってしまったのかも。
この辺りは、常人である我々にはとうてい想像できません。
その為、家族やジェシーを不幸にしておいてアレですが、ウォルター自身は幸せを噛みしめつつ絶命したと思えます。
シュワルツ夫妻(グレイマター役員)への復讐
また、ウォルターが幸せの渦中で死ねた理由のひとつに「シュワルツ夫妻への復讐の成功」があります。
ウォルターは、「学生時代に3人で立ち上げた会社”グレイマターが、自分が抜けた後に急成長した」ということについてコンプレックスと憤りを覚えています。
この経験も、「もっと科学(化学)で活躍したい」という気持ちに火を付けたのではないでしょうか。
そしていよいよウォルターは復讐に出ます。
ウォルターはシュワルツ夫妻に自分の金を預け「この金を”寄付”という名目で俺の家族に送れ」と言います。
まず、ウォルタージュニアが自分のお金を受け取ってくれなかったので、それでもお金を渡したいウォルターはこの方法を取っています。
それだけでなく、「既に大成している気高いシュワルツ夫妻に、ドラッグマネーを掴ませる」という方法で、二人に精神的大ダメージを与えています。
これこそ最も正当かつ完璧な復讐ではないでしょうか。
そんなわけで、「復讐にも成功し、自分のやりたいこともやってのけたウォルターは、多くの代償を払えど、理想的な人生を送れた」という認識です。
ジェシーはどういう心境だったのか?
ウォルターの殺戮祭りの後、ジェシーとウォルターは対峙します。
もしここで「先生!!!」「ジェシー!!」とか言って二人で歩み寄って抱き合ったりしたらめっちゃ浅いメロドラマに成り下がってました。
しかしそうはならず、というか、ジェシーはウォルターを心底恨んでいます。ウォルターがジェシーに対する思い以上に恨んでいます。
比べ物にならないはずです。
そしてジェシーは銃を拾い上げウォルターに向けます。
「殺せ・・・望んでたろ・・・」とウォルター
そしてゆっくり銃を下し「自分で死ね」とジェシー。
結局ジェシーにもウォルター大先生は殺せなかったのです。
この後のシーンが好きなんですが、二人は外に出て、ジェシーは車のドアを開け、乗り込もうとします。
そして二人は目を合わせ、小さく頷きあいます。
二人は何の意志疎通をしたのでしょうか。
分かるようであまり分かりません。
純粋に「元気でな」
という最後の挨拶をしたのでしょうか。
ここに関して分かる方、ぜひコメントで教えてほしいです。
頂いたコメントに凄く感銘を受けたので追記します。
そういえばウォルターは既に被弾しており、ウォルターの命がもう長くないことをジェシーが知っていることは明らかでした。
そんな中「元気でな」的な挨拶を交わすとは思えません。
頷き合うシーンは、ジェシーはウォルターの死を覚悟し、「本当にこれでお別れだ」という最後の挨拶を交わす絆のシーンだったように思えます。
(コメントをくださったハイコ様。ありがとうございます!)
そして車を爆走させ、ジェシーは泣き笑いながら叫びます。
ジェシーのカットはこれがラストです。
ジェシーはこれからどうするのでしょうか。
何を思っていたのでしょうか。
ジェシーは数ヶ月も監禁されたあげく、愛する人も殺されたので、これからどうするのか、考えるだけで胸が痛くなります。
かなり魅力的なキャラクターなので、幸せになることを願います。
追記:ジェシーの複雑な心境を考察
ジェシーが雄叫びを上げた理由について、僕は「今までのジェシーのキャラクター部分」しか見らずに考えていました。
しかしジェシーは、怒りに任せてトッドを殺したことと、やっと解放されたという開放感。
そしてウォルターの死など、短時間でたくさんの感情的なイベントに襲われました。
もちろん今までの全ての波乱も含めてだと思いますが、そういった「一度に押し寄せてきたたくさんの事象」があの雄叫びに繋がったのでしょう。
コメントをくださったハイコ様。ありがとうございます!
やっぱりBreaking Bad(ブレイキング・バッド)はハッピーエンドだったと思うまとめ – まとめ
僕は「主人公の哲学が変化する瞬間」が大好きです。
特にラストで、新しい事実、考えに気付き、今までの自分の考えを捨て、本人の中でハッピーエンドになるという展開が凄く好きです。
映画の大半は「主人公の成長」を描いているので、たいていの作品に「哲学の変化」があると思いますが、そこを意識すると映像コンテンツはかなり楽しくなります。
ブレイキング・バッドでも、「家族のためのメス精製」から、「自分のためのメス精製」に変わったと気付いた、というより悟った時のウォルターの表情はなんとも言えず、涙を誘いました。
「麻薬精製」は決して褒められた行為ではありませんが、ウォルターは「自分のやりたいことをやる」という選択をしました。
これは、自分のやりたいことをやらず、ただ生活するために生きているような現代人に対して、強力な問題提起になっていると思うのは僕だけでしょうか。
ウォルターが最後にラボで死んだのは、もちろん人生の週末の全てを捧げた事業であるのと同時に、自分がその場で死ぬ事により、警察に「私が作っていたんだ」とする事でジェシーに目が向かないようにする意味もあったのではないでしょうか?
最後までジェシーに対して責任と愛情があった事はハンクも言っていましたが確かだと思います(^^)
アフロ様
コメントありがとうございます!
なるほど!いろんな思い、狙いが込められてそうですね…
面白い!
大変興味深い考察をありがとうございます。細かい部分で大変恐縮なのですが、ウォルターが掃除機屋のエドさんにニューハンプシャーに逃がしてもらってからアルバカーキに戻るまで「数年」は経っていないと思います。1話で50歳の誕生日、シーズン5の1話で52歳の誕生日を迎えています。シーズン5の1話は時系列が飛んで実質は最終回の場面なので、、
ジェシーはウォルターのことが信用できなくて、利用価値があるから守られていただけだと思っていましたよね。警察のハンクはジェシーに「ウォルターはお前だけには嫌われたくないみたいだよ」と言い聞かせていましたが、ジェシーは完全にウォルターに殺されると怯えていました。ウォルターに呼び出された時も、用済みで警察に捕まった自分は邪魔だから殺されるんじゃないかと思い、ウォルターとの待ち合わせの直前で逃げ出しました。
ウォルターを信用できず、自分も殺されると思っていたジェシーは、最後に引退し逃亡したウォルターがわざわざ自分のために命がけで助けにきたことをどう理解したのでしょうか。ウォルターは自分を殺そうなんて考えておらず、ハンクの言った通り、どういうわけか、自分を命がけで愛して守ってくれたんだと理解できたのではないでしょうか。
でも同時に優しいジェシーは自分の元恋人やガスを殺し、子供が殺されてもなんとも思わないウォルターを嫌悪する気持ち、許せない気持ちもあったと思います。
恐怖し憎むべき存在だったウォルター、だけど自分への愛があったのは確かだ。でもやはり大量殺人鬼である事実は変わらない。。優しいジェシーはウォルターの愛に感謝する気持ちと、殺された人を思いウォルターを軽蔑し憎む気持ち、。いったいどっちの気持ちでいればいいのかわからなく、両方の泣き笑いになってしまったのではないでしょうか。。完全に憎み切れたらどんなに楽か、理解したいけど理解しきれなかった切なさのような。そんな気持ちだったのではないでしょうか。
最後の頷き合いは、ウォルターはもう被弾もしていて助からないしジェシーも撃たなかったので、これでお別れだ。をお互い示す絆のシーンだとわたしは思います^_^最後のジェシーの泣き笑いの叫びは自由になった解放と怒りに任せて殺人をした複雑な心境などを描いたとても印象に残るシーンでした。ジェシーはこの先ブレイキングバッドするのか…本当に最後まで良いドラマでした^_^^_^
ハイコさん
コメントありがとうございます!
>最後の頷き合いは、ウォルターはもう被弾もしていて助からないしジェシーも撃たなかったので
あぁそうか!!
確かにその事を忘れてました。
ジェシーは一度ウォルターを撃とうとしたものの、ウォルターは既に被弾しもう長くないと悟ってたんでしたね。。。
しかも自分も怒りに任せてトッドを殺害した後だったので、それも相まってかなり複雑な心境だったのでしょう・・・。
他にもあらゆる事象が絡み、僕たち凡人には想像も付かないような複雑な感情での雄叫び。
本当に素晴らしいドラマでしたね。
ウォルターは最期に、精製場でのジェシーの仕事ぶりを見て、教え子としてしっかりと成長したことを喜んでいたのではないでしょうか。磨かれたタンクを見つめる様子などから、自分はそう感じました。
ROW様
コメントありがとうございます
確かに、「ジェシーの成長」も忘れてはならない点でしたね。
ウォルターが「教師」にどれだけの誇りを持っているかは特に描かれていませんでしたが、長年勤めてきたわけですから、やはりジェシーが成長したのを見て、喜びを感じていたのだと思います。
※ROW様のコメントの一部を編集させて頂きました。