ソシオパスが主人公という異色の映画「アイム・ノット・シリアルキラー」を鑑賞しました。
いつも通りネタバレ無し情報を書いた後にネタバレしていきます。
まだ未鑑賞で、「とりあえず面白いかどうかだけ知りたい」という方は、「※ここからネタバレを含みます。」という文章の直前までを目安にご覧ください。
目次
予告編(トレイラー)
作品情報
公開年 | 2016年 |
---|---|
原題 | I Am Not a Serial Killer |
上映時間 | 86分 |
製作国 | アイルランド・イギリス合作 |
監督 | ビリー・オブライエン |
脚本 | ビリー・オブライエン、クリス・ハイド |
ジャンル | サイコホラー、サスペンス |
主要キャスト |
マックス・レコーズ クリストファー・ロイド ローラ・フレイザー カール・ギアリー |
配信サイト・媒体 |
市販DVD Netflix…他 ※記事公開時の情報です |
あらすじ・みどころ
死体や殺人に異常な関心を示す少年と連続猟奇殺人犯の老人、2人の狂気を描いたサイコホラー。アメリカ中西部の町にある葬儀屋。16歳になる息子のジョンは、遺体の防腐処理を手伝う影響からか、死体や殺人に異常な関心を示し、ソシオパス(社会病質者)と診断される。ある日、町で連続殺人事件が発生した。無惨にも切り裂かれ、内臓の一部が持ち去られた死体を目にしたジョンは、殺人鬼が近くに潜んでいることを実感し、その存在に強く惹かれていく。
魅力
①ソシオパス系主人公「ジョン」を演じる「マックス・レコーズ」がハマってる
②全体的に漂う90年代以前の雰囲気が良い
③殺人鬼 vs ソシオパスという構図が新しい
気になる点
・殺人鬼 vs ソシオパスの戦い方が回りくどい気がする
・ソシオパス特有のサイドストーリーが少ない
・クライマックスが盛り上がりに欠ける
【ネタバレ無し】感想
ソシオパスは「反社会性パーソナリティ障害」と呼ばれ、いわゆる「サイコパス」と同じような意味合いで使われます。
しかし実際には「サイコパス」の資質というのは実業家等にも見られる為、必ずしも悪い意味合いで使われるわけではありません。
その辺についてはこちらの記事で詳しく書いてます。
サイコパス程「実業家」に向いている?「成功型サイコパス」の特徴 | ぱっかんブログ
※関連記事は最後にまとめて紹介します
さて、主人公の「ジョン(マックス・レコーズ)」がそのソシオパスで、一般的な人間が司る感情部分がほぼ欠落しています。
そんなジョンが暮らす田舎町で連続殺人が発生し、高校のレポートでシリアルキラーについての考察を提出するほどアングラなジョンは、当然ながらその事件にも興味を持ちます。
そして怪しいと目星を付けた人物を尾行していると、案の定殺害の瞬間を目にすることに。
人が死ぬその瞬間、ジョンは一瞬で快楽の絶頂に達するという描写があり、もはやただのソシオパスではなく、もしかしたらネクロフィリア(死体性愛者)的な素質も持ち合わせているかもしれないと判明します。
・・・という非常に見慣れないお話。
2016年の映画ですが、ザラつきを出す為にわざとフィルムカメラで撮影しているようで、そういう90年代っぽさがあります。(音楽も古い感じ)
終盤で失速した印象がありますが、比較的興味をそそる運び方で、割と退屈せず最後まで楽しめました。
90分と短めなのも好印象。
【ネタバレ有り】感想
※ここからネタバレを含みます。
良い点:適度に鑑賞者を裏切ってくるのは良かった
序盤でジョンは連続殺人鬼っぽい人物を尾行するのですが、そいつは逆に殺されました。
これはそんなに驚く展開ではありませんが、やっぱりこういう「意外性」を適度に組み込むことで、その作品をずっと見続けていたくなります。
本作はその辺を心得ているようで、適度に「小さいどんでん返し」や「意外性」を含んでいます。
だから最後まで結構食い気味で鑑賞することが出来ました。
良い点:ジョンのキャラが良い
これは完全に僕の偏見ですが、ジョンのようにアンニュイな表情をしている白人が、僕は何故か全員ソシオパスに見えます。
ジョンの落ち着き払った瞳。
やけに魅力的な顔立ち。
そして中性的な表情。
ジョンは、僕が昔から思い描く「異常者」に完全にフィットしています。
だからこそジョンが好き。
しかもジョンは家業である「葬儀屋」を手伝っており、「遺体の中身」等を日頃から触っています。
ジョンはソシオパスなのに、よりによって葬儀屋に生まれ、母親と一緒に遺体を触っているのです。
正直、遺体を扱う職場がどんなものか分からないのでこれが普通なのかどうか分かりませんが、「ジョンを異常者にする環境」が完全に整っているように思います。
更に猟奇的連続殺人が発生するわけなので、もはやこの町、家はジョンにとって完璧です。
そんなわけで、ジョンの見た目や雰囲気だけでなく、キャラ設定やその活かし方等も割と好きでした。
悪い点:殺人鬼 vs ソシオパスの戦い方が回りくどい気がする
たぶん本作に「つまらない」という感想を抱く人のほとんどが「彼らが何をやってるか良く分からない」からだったと思います。
僕も良く分かりませんでした。
まず、殺人鬼の正体が「モンスター」です。
ぶっちゃけ僕は最後の最後でこれに気付きました。
確かに序盤からモンスター的描写が小出しにされていましたが、あれは「ジョンのイメージ」とか「映画上の演出」として描かれてると思ってました。
しかしそういう例えではなく、普通にモンスターでした。
そんな超自然な相手に対し、ジョンは「殺人を喰い止める」とヒーローのようなポジションを取ります。
ただ、どの攻防を観ても「もっとベストな手段があるんじゃないか」というのがチラついてしまい、どうしても彼らが回りくどい戦い方をしているようにしか見えませんでした。
あと、ジョンは自分の正体を隠しながらモンスターに近付いたり、その親近者を襲ったりするのですが、その時に覆面を被ってはいるものの、声はしっかり出しています。
その声でバレないのも不思議です。
というわけで、攻防に重きを置いてる作品では無いと分かっていますが、戦い方がイマイチ盛り上がらない作品でした。
悪い点:ソシオパス特有のサイドストーリーが少し少ない
やっぱり主人公が特徴的な映画であれば、そんな性格だからこそ周りをイラつかせたり、逆に凡人には思いつかないような捉え方で物事を語り、それで他人を感動させるなどの展開があっても良かったと思います。
本作には一度だけそのシーンがありました。
それはハロウィンパーティーで、ジョンがいじめっ子を退治するシーンです。
あれはいかにも「ソシオパス」であることを活かした撃退方法で、故に僕が大好きなシーンでもあります。
しかしそれ以外では特に「ソシオパスだから発生したイベント」というのが特に無かったように思います。(小話程度ならあったが)
まぁ本作はヒューマンドラマでは無いので、ジョンと深く絡む人物をあえて母親とセラピストだけに限定したのでしょう。
悪い点:クライマックスが盛り上がりに欠ける
「敵がモンスターだった」とかはどうでもいいです。
深い部分を考察すると何か別の意味を持つ描写かもしれませんが、一回目の鑑賞はまず「面白いか」を軸にするため、考察等は特に考えません。
そう考えると、敵は別に老人でも良かったような気もします。
ちょっと凶悪な老人がボスで、そんな奴に対しジョンはどう立ち回るのか。
また、映画に登場するソシオパスは割と頭の回転が早いキャラが多いので、やっぱり「知的な立ち回り」や「機転」等を期待します。
しかしそういうジョンの知能を活かすような描写は特に無く、むしろ緊急時に取り乱すシーンの方が多かったように思います。
これも「そこに重きを置いてる作品じゃないんだわ」という話なんですが、やっぱり異常者はクールで頭脳的立ち回りに長けた人物の方が、映像コンテンツとしての魅力は高まります。
評価・まとめ
60点
僕が求めていた作品では無かったものの、普通に楽しい作品でした。
「異常者特有の立ち回りや言い回し」が好きな人にはお勧めできませんが、そういうとこ無しでもサイコホラーを楽しめる人にはうってつけの作品ですね。
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