スティーブンキング原作作品「Cell(セル)」を鑑賞しました。
Cellは、ケータイが原因で人々がゾンビ化していくというホラー作品です。
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目次
作品情報
公開年 | 2017年 |
---|---|
原題 | Cell |
上映時間 | 98分 |
製作国 | アメリカ |
監督 | トッド・ウィリアムズ |
脚本 | スティーブンキング(原作・脚本担当) |
ジャンル | ホラー |
主要キャスト |
ジョン・キューザック(クレイ) サミュエル・L・ジャクソン(トム) イザベル・ファーマン(アリス) オーウェン・ティーグ クラーク・サルーロ |
配信サイト・媒体 |
市販DVD Netflix…他 ※記事公開時の情報です |
あらすじ
ボストン空港に降り立ったクレイ。別居中の妻と息子に電話するが充電切れに。すると携帯で話していた周囲の人々が暴徒化し、一瞬にして空港は血の海に…。
引用:Netflix
少しだけ新しいタイプのゾンビ(狂人)作品です。
【ネタバレ無し】感想
微妙でした。
世界が一変する序盤や、目的のために仲間と旅をしているところはロードムービー要素があり中々楽しめました。
というかこういう展開は大好物です。
そして「敵」の能力にもしっかり定義があり、ここはスティーブンキング作品らしいなと思いました。
彼の作品は多少のオカルト要素がありますが、そのオカルト要素にしっかり定義があるので、それを基に弱点を突いたりするカタルシスがあります。
本作も敵の能力にしっかりと定義があったし、「何故こうなったのか?」を登場人物たちが追いかけているように見えました。
しかし何も解決することなく、思いの外残念な結末でした。
※次項からネタバレを含みます。
【ネタバレ有り】感想
ゾンビの能力定義は非常に良かった(良い点)
・ゾンビ同士はテレパシーで繋がっている
・夜になると活動停止し、音楽を聴きながら「アップデート」する
・ケータイでしか仲間を増やせなかったのに、彼らは次第に成長し最終的には自分の口から発する怪音で正常な人間を仲間に取り込める
・基本的に彼らは群れで行動する
などなど。
ゾンビ共の能力がしっかりと定義付けされていた為、多少なりともロジカルに敵との攻防を楽しめました。
何気ない会話で、
「奴らは電波が途切れるから、地下には入ってこない」
など、こういう情報が出てくるだけでリアリティが増して面白く感じます。
もちろんその情報を武器に敵に一発食らわすような展開になれば尚熱いですが、敵がどういう存在で、どういう弱点があるかというのは、会話として登場するだけでも我々は楽しめるんです。
原因が何も判明していない(悪い点)
ゾンビの生みの親「ジョージ・A・ロメロ」も、ゾンビが生まれた理由を曖昧なままにしていました。(少なくとも一作目時点では。他は知りません)
だから登場人物たちが
・ウイルスか?
・惑星直列が原因かもしれない
など、有力そうな情報をセリフとして発するしかありませんでしたが、僕はそういう「曖昧なまま」でも全然良いと思ってます。
だから本作も「何故ケータイで通話すると化け物になるのか?」が分からなくても、僕は受け入れる覚悟がありました。
そして案の定不明のまま終わりました。
なぜ電話越しにモンスター化したのか、完全に不明です。
「曖昧なままでも受け入れる」とは言いましたが、思いの外ノーヒント過ぎて考察しがいが無いため、少しばかり低評価に繋がりました。
ボス格の敵は何だったのか?(悪い点)
「正常な人間たちも共通の悪夢を観る」
というミステリアスな設定があり、ここには凄くワクワクしました。
そして「赤いフードの男」が夢に現れ、こいつがラスボスであることは明白でした。
しかもそいつは、主人公のクレイ(絵師)が作り上げたキャラクターの一人だと言うではありませんか。
少しだけぶっとび設定な気がしないでもないですが、主人公の創作物と、この惨劇に因果があるという展開にはワクワクします。
そしてラスト。クレイは赤いフードの男と対峙します。
そしてフード男を撃ち殺し、明らかに留めを刺したはずなのに、最後は何故か蘇っていました。
彼はなんだったのでしょうか?
結局因果も何も分からないままでした。
せめてここはハッキリさせてほしかった。
クレイ役のジョン・キューザックはやっぱりコメディーが似合う(良い点)
本作はホラーでありながら、キャラクターたちの掛け合いが少しコミカルで面白いのが特徴です。
特にクレイ役のジョン・キューザックが良かった。
というかジョンはマジで「周りを少し小馬鹿にしたような演技」が凄くハマってます。
最初の惨劇の後、クレイは命からがら地下鉄に逃げ込みます。
そこには電車が止まっており、中には数人の生存者がいました。
そして車掌のトムもおり、彼に「電車は動かせるか」と問うと、「無理だ。歩いて出よう」と返されます。
これに対し、
「良い考えだ。親友になろう。」
と、少し見下した表情をしながら心にも無いことを言うクレイ。
クレイは、他にもこの手のジョークをちょいちょい挟んできます。
危機的な状況よりも休憩シーンが多い本作は、コミカルな演技が似合うジョンが意外とハマり役だったと思います。
ラストが最悪(悪い点)
「良く理解できないラスト」には2つあります。
①考察しがいのある深いラスト
②ただただ後味が悪いだけの軽いラスト
本作は残念ながら軽いラストでした。
クレイは良い感じにダメ親父な点も含め、非常に魅力的なキャラクターでした。
だから、そこそこのラストでも多少の救いがあれば鑑賞者は納得できたはずです。
でも、製作陣はクレイを狂人にしてしまいました。
「ラストが残念」と聞いていたので期待はしていなかったですが、あまりにもガッカリな内容でした。
一応「ラストでクレイは何をしたかったのか?」を考察してみます。
ラストのクレイの目的(考察)
まず「”カシワク”は電波が入らない為安全」というのは、「敵がテレパシーで正常な人間に発信した罠」であることをクレイは知っていました。
確か途中で出会った「レイ」達との会話で「カシワクには電波塔が建てられた」と知り、そこで罠と気付きました。
しかし、家に残された「カシワクに行ってくる」という息子のメモを読み、クレイは絶望しつつもメイン州カシワクを目指します。
そこで息子と再会するのですが、残念なことに息子さんは奴らの一員となっていました。
溜まらず車に詰め込んだ爆弾を爆発させるクレイ。
その直後、クレイは平和そうな森の中を息子と散歩していました。
これはクレイと息子の「共通意識」の中だと思います。(推測)
つまり、クレイも奴らの一員となってしまったのです。
奴らはテレパシーで意思疎通が図れるため、現実では呆けた状態となっていても、頭の中はお花畑状態。
だから、ある意味ではクレイと息子は幸せに暮らし続けられます。
もちろんいくつかの疑問が残ります。
クレイがせっかく電波塔ごと爆発したのに、なぜ何も起きなかったのか?
クレイはいつの間に奴らの味方になったのか?(作中では、ケータイで話すか、奴らに耳元で叫ばれるかしか取り込まれる手段が無かった)
クレイの悲惨なハゲ方(悪い点)
僕は「アイデンティティー(2003)」という作品からジョン・キューザックのファンです。(ファンでは無いが結構好き)
そしてジョンは、本作でも最高のダメ親父っぷりを演じています。
ですが禿げ散らかしてます。
いや、この禿げ方も味があってそこそこ好きです。
しかしラスト。
そもそも「クレイが化け物の一員になる」という時点で頂けないラストなんですが、よりにもよってそれを真上のアングルから見下ろします。
最後の最後で、ジョンの頭をこれでもかと言うくらい見せつけられるのです。
何故それをラストカットにした??
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評価・まとめ
60点
ラストにかけてまでは非常に面白い作品でした。
敵との攻防シーンは必要最低限に抑えられていましたが、それでも「パニック物」としての非日常の描き方は秀逸だったし、序盤のてんやわんやをかいくぐったクレイの「たまたま感」は中々良いもので、「クレイが生き残ったのはたまたまで、この映画の主人公は本当にただの一般人なんだな」と感情移入させられました。
だけどラストが本当に残念です。
いろんな疑問を投げかけ、風呂敷を広げまくって、そのまま散らかして終わった作品。
実はエンドロール後に「奴らの声」が大音量で流れるというサプライズもありましたが、とって付けたようなものであまり面白くありませんでした。
例えば「Sunshine2057(2007)」だったら「イカロス2号の救難信号の音」だったり、「シャッターアイランド(2010)」だったら「作中で流れてたキーとなる音楽」がうっすらと流れたりなどの演出があります。
そしてこれらは「作品にとって意味がある深い演出」です。
しかし本作のエンドロール後に流れる「奴らの叫び声」には、そもそもラストが酷かったこともあり距離感を感じさせられました。
というか「急に大音量を流してビックリさせたかったっだけ」という思惑があったように思います。
こういうサプライズは不要です。
そこそこ面白かったですが、ラストの練り方が足らずにこけた作品でした。
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